サブブランド優遇、2年縛りなど各種問題点の結論は? 総務省が“報告書”を公開(1/3 ページ)
総務省は4月20日、「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」の第6回を開催。過去5回に渡る討議の論点がまとめられた「報告書(案)」が公開された。今回の会合では報告書(案)の内容が説明され、構成員が意見交換を行った。
総務省は4月20日、「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」の最終回となる第6回を開催した。過去5回に渡って、大手キャリアやMVNO、販売代理店、中古端末事業者、消費者団体などに対するヒアリングや構成員の討議を行ってきたが、それを踏まえて総務省の事務局が結論を整理。この検討会の「報告書(案)」を作成した。今回の会合では報告書(案)の内容が説明され、構成員が意見交換を行った。
報告書(案)では、(1)ネットワーク提供条件の同等性確保、(2)中古端末の国内流通促進、(3)利用者の自由なサービス・端末選択の促進という、3つの大きな柱に関し、モバイル市場の公正な競争を促進するための措置、またはさらに検討が必要な事項がまとめられている。
サブブランドのMVNOは優遇されている?
ネットワーク提供条件の同等性確保について、報告書(案)では、ネットワークを持たないMVNOにも、MNOと同様にネットワークへのアクセスを可能とし、互いに利用者に対するサービスの提供条件を競い合えるようにすることが重要としている。また、MNOグループ企業のMVNOが登場したことで、MNOとMVNOの競争に加え、MVNO同士の競争条件の同等性についても問題視されていることが記載された。
検討会では、公正性確保に重要なMNOのネットワークの提供条件について議論を行い、報告書(案)では18の項目について、現状、各所からの意見、考え方(提言)がまとめられている。その中から主な項目について紹介しよう。
「料金・品質(速度)に関する同等性」では、MVNOのデータ通信速度はMNOのネットワークだけでなく、MVNOの設備や端末、エリアやその時々のトラフィックの混雑状況など、さまざまな要因に左右されると踏まえた上で、MNOのネットワーク提供条件に起因する部分については、必要な検証を行い、対応していく必要があるとしている。
通信速度で重要な点は、帯域幅の確保の条件と、MNOによるネットワークの管理方法であると指摘。帯域幅の確保に関して、KDDIとソフトバンクが、MVNOには卸電気通信役務を提供しており、届け出のあった卸先事業者間で同一金額、接続約款と同じ条件で提供していると説明した点や、契約帯域幅と利用者数について、MVNO10社から情報提供を受け、検証を行ったことが明記された。利用者当たりの契約帯域幅は、UQ mobileがMVNOの中で最大だったが、ヒアリングの中で指摘があったほど大きな格差はなかったとしている。
これらの結果を踏まえ、料金と費用の関係、また、MNOがグループ内のMVNOを優遇しているとする、いわゆる「ミルク補給」について検証の必要があると指摘。MNO3社に対して、「会計の専門家を含む検討体制を設けることが必要」とし、「可能なところから早急に対応すべき」と提言している。
MVNOのトラフィックを遅くして、自社のトラフィックを速くするような差別的な取扱いはMNO各社が明確に否定しているが、MNOが不当な差別的取扱いを行わないことを接続約款に規定し、そのために電気通信事業法施行規則の改正を行うことが必要だとしている。
また、MNOとMVNO間、MVNO同士の公平性を確保するために、接続協議で交渉上の優位性の考え方を明確にすること。また、「総務省で、報告を受けている特定移動端末設備のシェアを勘案することにより、第二種指定電気通信設備制度の適用を検討することが必要」としている。これはUQコミュニケーションズやWireless City PlanningのようなBWA(Broadband Wireless Access)事業者の第二種電気通信設備指定も検討すべきではないかという意見に応じたものだ。
「接続料算定の適性性」の項目では、BWAに関する原価や需要について、適性に反映される方法にする必要があると指摘しているが、既に総務省からKDDIとソフトバンクに要請されている。また、接続料算定の根拠について、透明性を確保するために、2017年9月、MNOに対して情報開示を求める省令・告示の改正を行っている。これら制度の運用状況について検証し、必要に応じて見直しが必要としている。
接続料の当年度精算を行うかどうかについては(※MNOの接続料は1年前にさかのぼって適用される)、実施基準の明確化が重要で、これについての検討を総務省が行うようにと提言している。
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