「5Gユーザー2億人の獲得競争」 中国メーカーが5Gスマホを積極的に投入する理由:山根康宏の中国携帯最新事情(1/2 ページ)
中国メーカーの5Gスマートフォンが九族している。中国で販売されている5Gスマートフォンはハイエンドモデルだけにとどまらず、日本円で5万円を切る低価格モデルも出てきている。中国の5G市場が爆発的な伸びを示しており、メーカー間の競争がし烈になってきている。
中国メーカーのスマートフォン新製品が毎月のように登場している。中でも5G対応製品が急増している。2020年になってから中国メーカーが発表した5Gスマートフォンの数は20を超えており、毎週1機種以上が登場している計算になる。各社のWebサイトでもトップを飾るのは5G端末だ。
中国で販売されている5Gスマートフォンはハイエンドモデルだけにとどまらず、日本円で5万円を切る低価格モデルも出てきている。OPPOはReno 3シリーズの下位モデルに「Reno 3 Youth」を2999元(約4万6000円)でリリースした。また一方で、大手メーカーのサブブランドやコスパ重視のメーカーからも5Gスマートフォンが出てきている。Xiaomiの「RedMi」、OPPOから独立した「Realme」は、今ではインドや東南アジアで人気のブランド、メーカーだが、それぞれが5Gスマートフォンを出している。
中国以外のメーカーで現在、5Gスマートフォンを投入しているのはSamsungやLGなど数社のみ。ソニーとシャープのように1モデルしか出していないメーカーもある。それに対して中国各メーカーは既に1社で数機種以上の5Gスマートフォンを出している。ではなぜ中国メーカーは5Gスマートフォンシフトを急激に進めているのだろうか? それは中国の5G市場が爆発的な伸びを示しているからだ。
中国の5Gサービス加入者数は世界最大に
2019年11月1日に開始された中国の5Gサービスは、大都市のみならず中堅都市もエリア化し、繁華街のみならず広い範囲を当初からカバーしていた。地下鉄や建物内などまだ利用できない場所は多いものの、屋外で人が集まるような場所なら、ほとんどの場所で5Gが利用できるほど整備されていた。2020年3月末に始まった日本の5Gがかなり限られた場所でしか使えないことと比べると、中国の5Gの利用エリアは当初からかなり広い。
当初は最低基本料金が100元台(China Mobileが月額128元《約1970円》、China TelecomとChina Unicomが月額129元《約1990円》)と4Gの最低料金よりも割高な価格でサービスが始まったが、開始早々にChina Mobileは月額89元(約1370円)の低利用プランを提供。2020年に入るとChina Unicomは月額29元からの超低料金プランも開始しており、4Gから5Gへの乗り換えも一気に進んでいる。
その結果、中国の5Gサービス加入者数はあっという間に韓国を抜き世界最大となった。China Mobileは2020年2月末で5G加入者数は1540万人、China Telecomは1073万人に達している。ちなみにChina Mobileは2月単月だけで866万増と、それまで3カ月の合計数を超えるほど新規数を獲得している。一方、China Unicomは5Gサービス開始後からいまだ5G加入者数を発表していないが、これは2社に大きく後れを取っているからと考えられる。3社合計の5G加入者数はChina Unicomが数百万と仮定すると、現時点で3000万前後になると思われる。
中国メディアの報道によると、2020年末には各社の5G加入者数は、China Mobileが7000万、China Telecomが6000万から8000万、China Unicomが5000万に到達すると予想している。これまで総加入者数で圧倒的な強さを見せていたChina Mobileに対し、5Gだけで見ればChina Telecomがその数を抜き去る可能性もある点は興味深い。そしてこの3社の予測値を合計するとその数は2億に達する。少なく見積もったとしても、2020年末で中国の5G利用者は日本の人口を超える数になるのだ。
低価格スマホで「5G」に目を向けさせる
中国メーカーが相次いで5Gスマートフォンを投入するのも、この5G加入者の急増に対応するためだ。既に中国のスマートフォン市場は成長期から成熟期を迎えており、スマートフォンの出荷台数は中国工業情報化部の調査を見ると、2017年第2四半期以降、前年同期比でマイナスとなっている。前述したデータをもとに計算すると、2020年3月から12月までに5G加入者数が1億7000万増えると予想される。キャリアは店舗で5Gを大々的にアピールしており、消費者の目も5Gに完全に向いている。2億台弱のパイの中で主権を取ることは、出荷台数を伸ばすだけではなく「最先端技術に対応したメーカー」というイメージを消費者に植え付けることができる。
Xiaomiが「RedMi K30 5G」を1999元(約3万円)、Vivoが「Z6」を2299元(約3万5000円)と「格安5Gスマホ」を投入しているのも、消費者の目をとにかく5Gに向かせるためだ。これら低価格な5Gスマートフォンは、より高価格な4Gスマートフォンより機能は落ちる。それでも手ごろな価格の5Gスマートフォンを用意すれば、消費者は5Gに親しみを持ち、より上位の高価格な5G端末にも目を向けてくれるだろう。
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