毎週10億円還元キャンペーンの効果は? KDDIに聞く「au PAY」の強みと課題:モバイル決済の裏側を聞く(1/2 ページ)
2月10日から3月29日にわたって毎週10億円という規模でポイント還元を実施したau PAY。運営するKDDIはキャンペーンで知名度を上げたが、コード決済では後発と言ってもいい。先行するPayPayやd払いに対する強みはどこにあるのか。
2月10日から3月29日にわたって毎週10億円という規模でポイント還元を実施したau PAY。運営するKDDIはキャンペーンで知名度を上げたが、コード決済では後発と言ってもいい。今後の事業戦略について、同社パーソナル事業本部 ビジネス開発本部金融決済ビジネス推進部長の長野敦史氏に話を聞いた。
キャンペーンで10億円に達した後でも決済が増えている
au PAYは、同社の決済・コマースサービスのブランドとして2020年2月から順次各サービスの名称が変更されてきた。これまで「au WALLET」「au Wowma!」のブランドが使われていたが、順次au PAYへと変更されている。そうした流れの中で実施されたのがau PAYの「誰でも!毎週10億円!もらえるキャンペーン」であり、au PAYアプリから利用するバーコードによる決済で、20%分のWALLETポイントを還元するという内容だった。
au PAYのコード決済は2019年4月に開始しており、2018年10月開始の「PayPay」、2018年4月開始の「d払い」から遅れての登場となった。100億円キャンペーンや急激な加盟店拡大で利用者を拡大したPayPayや、頻繁なキャンペーンで知名度を高めたd払いに対して、au PAYが出遅れた感は否めない。
そうした状況で2020年1月28日に、決済ブランドをau PAYに統合することを発表し、au WALLETポイントをPontaと統合する新戦略を発表したKDDI。同時に大規模なキャンペーンを実施することで、「広く知ってもらおうという狙いがあった」と長野氏は話す。この毎週10億円還元キャンペーンによって、広く知られるという成果は出せたという。「以前に比べてauユーザー以外の利用者、決済数は大幅に伸びている」という状況で、キャンペーン効果で裾野が広がってきているそうだ。
しかも、今回は1週間のキャンペーン期間中に還元総額に達したら翌週までは還元がないという状況だったが、総額に達した後もau PAY決済件数は以前より伸びており、キャンペーン後にそのまま利用する人が増えているようだ。
キャンペーンでは当初、利用が殺到したため、郵便局での利用を除外したり、還元対象金額の上限を設けたりと、キャンペーン後の変更も発生した。長野氏は想定以上の利用が発生したために対処したと話すが、こうした想定以上の利用が、au PAYの認知度向上につながったようだ。
キャンペーンを実施するだけでなく、UX(ユーザー体験)を高めたり、日常的に利用してもらえるうな加盟店を増やしたりと、継続的な利用につながるようサービスを強化していく。5月にPontaと統合することで、ポイント関連の課題も解決して、ユーザーに定着することを目指すという。
障害は残高管理のシステムが影響
au PAYは、キャンペーン期間中の3月18日に障害を発生させている。発生した障害は、決済やチャージができないという致命的なものだが、これに対して長野氏は「残高を管理しているシステムに障害が発生し、決済やチャージの処理ができなくなった」と話す。何らかの攻撃やキャンペーン期間によるトラフィック増加は原因ではなかったが、特定と対処は完了しており、原因の再点検や運用の見直しを図り、障害を起こさない体制作りに全力を挙げているという。
全国津々浦々で使えるようにしたい
加盟店開拓では、au PAYだけでなく楽天ペイ加盟店も同時に利用できるようになっているが、それでも加盟店数はPayPayに劣り、まだ物足りない面がある。そうした点について長野氏は、「開始当初と今を比べると加盟店開拓の体制は大幅に強化した」という。
狙うのは「日常で利用できるような店」だという。大手チェーンだけでなく、中小の加盟店も商店街単位で加盟店とするなど、認知を広げて利用者の拡大を進めることが有効との判断だ。もちろん、楽天ペイ加盟店だけでなく、KDDI自身も加盟店開拓を続け、「全国津々浦々で使えるようにしていきたい」と長野氏は強調する。
中小・個店が気にする手数料や入金サイクルは、現時点でバーコードをユーザーが読み取ったり、スマートフォンアプリで店が読み取ったりする場合は2021年7月まで無料化。月2回までだった入金サイクルも、要望を受けて一定金額以上であれば翌営業日に振り込むサービスも提供しているという。
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