総務省がNTTドコモと販売代理店70社に行政指導――そもそも「わかりにくい改正法」に問題があるのではないか:石川温のスマホ業界新聞
「不適切な端末代金の値引き」が行われたとして、総務省がNTTドコモの販売代理店70社に対して行政指導を行った。その根拠となった改正電気通信事業法や各種ガイドラインの制定過程では、「曖昧で抵触するかどうか判断しづらい」という指摘もあった。誰でも分かるような明確なルールブックを作るべきではないだろうか。
5月29日、総務省はNTTドコモと販売代理店に対して電気通信事業法に基づく行政指導を行なった。販売代理店の数は何と70社にも及ぶという。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2020年5月30日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額税別500円)の申し込みはこちらから。
2019年10月に改正された電気通信事業法では、端末割引などユーザーに対する「利益」の提供に対して制限を行っている。今回の行政指導はその利益提供に対してのものだ。
改正電気通信事業法では、利益提供はキャリアと販売代理店、それぞれのものを合算した金額を対象としている。しかし、キャリアが提供する利益(端末購入サポートやおかえしプログラムなど)とは別に販売代理店が割引きを行ない、上限を超えてしまったことが行政指導の対象となったようだ。
また、改正法では旧通信方式から新通信方式への移行については端末代金を上限とする利益提供が可能だ。これは停波に向かっている3G端末から4Gや5G端末へのマイグレーションを狙ったものであるが、販売代理店によっては、旧通信方式ではなく、すでに新通信方式に対応した端末を持つユーザーに対して、制限を超える利益を提供していたというのだ。
他にも、端末代金を超える利益を提供していたケースもあったようだ。
そもそも、「割引をし過ぎて行政指導が入る」という点が理解に苦しむ。本来であればユーザーが安価に端末を入手できるにも関わらず、それを禁じられること自体、おかしなことではないか。
また、販売代理店の数社に行政指導が入るというわけではなく、NTTドコモをはじめとして販売代理店70社に行政指導が入るということは、改正電気通信事業法そのものが「誰もが正しく理解できない難解なルール」なのではないか。
総務省は、業界の人ですら正しく読み解けないルールを無理やし押し付けていることに気がつかないのか。
実際、総務省が公表した「電気通信事業法第27条の3等の運用に関するガイドライン改正案に関する意見募集の結果及び改正したガイドラインの公表」において、UQコミュニケーションズから「本ガイドライン改正案については、曖昧な箇所が多々存在するため、実際に行いたい施策が事業法違反にあたるか否かを即時に解釈することが非常に困難です。具体例等も記載いただいておりますが、その背景となる考え方や、それぞれの関係性が記載されていないことが、解釈を困難にする要因の一つであると考えます」との意見が出て出ている。
端末販売に対して、ルールを設けるのであれば、わかりやすく誰も納得するルールブックを作るべきだ。
ルールブックとして抜け穴だらけで稚拙だからこそ、これだけ多くの販売代理店が行政指導の対象になるのではないか。もはや総務省による端末割引の規制は、つぎはぎだらけで誰のためにもならない無意味なルールになってしまっている。
総務省が端末割引に対して口を出してからというもの、3キャリアの解約率は大幅に低減し、もはや市場の流動性はなくなり、硬直化している。これでは第4のキャリアとして参入した楽天モバイルにとっても不利に働くことだろう。
本来であればユーザーの流動性が起き、競争が加速することで料金値下げにつながるはずだが、今の改正法は、むしろ市場を逆行させているに過ぎない。
「端末割引規制は本当に効果があったのか」を早急に検証する必要があるだろう。
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