ピーク時は月間400万人が利用 マスクの単価を比較できる「在庫速報.com」誕生の背景(2/2 ページ)
コロナ禍で一気に品薄となり高騰したマスク。その最安値を表示してくれるのが「在庫速報.com」だ。当初はマスクだけだったが、今ではアルコール消毒液や体温計、ゲームにまでジャンルを広げている。Webサイトを作った背景について、開発元のアスツール代表取締役加藤雄一氏に話を聞いた。
需給のギャップを埋められるサイトに
非常に大きな反響を呼んだ在庫速報.comだが、リリースしたときは、ここまで大きな反響があるとは思っていなかったという。「最近は落ち着きましたが、毎日たくさんの人に使ってもらっている」ので「作ってよかった」と加藤氏も満足そうだ。なお、スマホでの利用は7割以上に及ぶ。
在庫速報.comのマスク価格推移調査によると、ゴールデンウイーク明けくらいからマスクの供給が安定してきて価格もかなり落ち、6月に入ってからは1枚あたり9円で安定している。
コロナ禍以前のマスクの価格は、50枚で400円から500円、1枚あたり8円から9円だ。価格だけを見れば、コロナ禍以前に戻っているが、今の価格はボリュームディスカウントで安くなっていたり、海外製マスクが多かったりする。日本製や品質が高く人気のものは、まだ高額が続いている。
そこで、品質を見極める手段として「日本製」や「人気(おすすめ)」というタブを新設した。人気(おすすめ)ではECサイトでの評価が高いものが掲載されている。タブの項目はユーザーの希望に対応して増やしている。
ユーザーの要望に応じる形で、マスク以外にアルコール消毒液や体温計、ゲームの価格も掲載するようになった。
「マスク在庫速報から在庫速報.comへと名前を変えたときに、コロナ禍対策のためではなく、需給のギャップを埋められるサイトにできるのではないかと考えました。需給ギャップはマスクだけじゃなく、今後もいろんなものが生まれるだろうと思いますが、それをこのサイトを使って解決したい」(加藤氏)
「今はやり尽くした感がある」とのことだが、今後、扱う商品カテゴリーも考えている。「リモートワークで品薄になったWebカメラ、家で過ごす時間が増えたことから観葉植物などが今、人気です。以前、売れなかったようなものが売れるようになってきていますが、そこにどれくらい需給のギャップがあるかです。そうした状況を見て検討しながら、拡大するカテゴリーを検討している段階です」(加藤氏)
カテゴリーの拡大は短時間の作業でできるようにしており、今後も素早く対応していくという。
iOSアプリが削除された理由
在庫速報.comは、スマホ向けアプリも提供されている。当初はiOS向け、Android向けを用意したが、現在、ダウンロードできるのはAndroid版のみだ。
Webサイトリリース当初は、これほどニーズが高まると思っていなかったので、アプリ化は「全く検討していなかった」という。ただ、多くの人に使われる中で、「ニュースや天気予報を見るような感じで、マスクの価格をチェックするために使われていることが分かった」(加藤氏)そうだ。そうなると、ブラウザからWebサイトにアクセスするより、アプリでワンタッチでチェックできる方が便利だ。また、「価格変動があったらプッシュ通知を送るという機能もアプリにフィットする」と考え、アプリを開発した。
特にiOS版アプリのダウンロード数は好調に伸びていたが、残念ながらアプリは削除されてしまった。Appleは新型コロナウイルス関連アプリに関して、「COCOA - 新型コロナウイルス接触確認アプリ」のような公的機関が公開するアプリ以外を認めないというガイドラインを示しており、それに伴った削除のようだ。
一般開発者のアプリを認めてしまうと、この機に乗じてコロナ関連アプリが玉石混交で大量に配信され、いいものと悪いものを見分けるのが困難になるとAppleは判断したのだろう。理解はできるが、在庫速報.comについては、多くの人に役立つアプリであっただけに、非常に残念だ。
なお、Android版アプリは引き続き配信されている。Webサイトでも、アプリでいち早く対応していた絞り込み検索や並び替えができるようにするなど、機能は日々アップデートされている。
需給ギャップを埋めるサービスとして提供したい
マスクの品薄は落ち着きつつあるが、在庫速報.comは継続していくという。
「需要がある限りはやっていく。商品の需給バランスは今後、マスク以外でも崩れていくものがあると思いますので、そこを解決する活動をやっていきたい」(加藤氏)。
先日は、ユニクロやアイリスオーヤマといった、人気ブランドで購入が難しいマスクの入荷情報通知を受け取れる機能を追加した。
「ブランドものマスクの需要が高く、そこはまだ需給バランスが崩れているところ。この通知機能はウチには何の売り上げにもならないんですが(笑)、ユーザーが求めていることだと思うので」(加藤氏)。
需給バランスを解消するサービスであれば、マスク以外のどんな製品でも同様のサービスが提供できる。加藤氏も「リクエストに応じてどんどん拡大する」と語っている。新たな買いもの支援サイトとしての成長が楽しみだ。
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