内閣府が語る「接触確認アプリ」開発の経緯 「インストール義務化は信義則に反する」(2/2 ページ)
新型コロナウイルスのクラスタ対策を目的として政府が提供するスマートフォン向けの接触確認アプリ「COCOA」。6月19日のリリース以来、7月31日までに996万件ダウンロードされている。COCOA投入までは紆余(うよ)曲折もあり、政府の説明不足から誤解を招いている点も否めない。
何割のユーザーがインストールすればいい?
インストールが増えれば、陽性登録する人も増えるため実効性が高まる。英オックスフォード大学の研究で何も対策をしない場合、6割の人が接触確認アプリをインストールすればロックダウンを避けられるというレポートがあり、「(安倍晋三)総理が発言してビックリした」と平副大臣も話すが、これには「何も対策しなくても6割がインストールすれば」という条件があり、現時点で日本政府もCOCOAのインストール率6割は目標にしていないという。
7月28日には日本大学生産工学部が、「人口の4割がCOCOAをインストールして、濃厚接触者の60%が外出を控えれば累計感染者数は半減する」「4割がCOCOAをインストールして、濃厚接触者の4割が外出を控えれば累計感染者数は3分の2になる」というレポートを発表。4割でも実効性があることを示している。7月1日時点の人口で考えれば約5000万人が利用することが求められるが、現時点でも、COCOA経由で濃厚接触者としてPCR検査で陽性が判明した例が出ている。今後、インストール数が増えることで、さらにこうした例が増えていき、アプリの実効性が高まりそうだ。
アプリのインストールを増やすために、政府では8月中に「国民的に影響力の大きい方を起用」したテレビCMを制作して放映する他、Yahoo! JAPANやGoogleでの広告を展開。自治体、携帯電話事業者や楽天、Amazon、Google、メルカリ、Twitter、LINEなどのプラットフォーマーやテック企業、実店舗でのチラシ配布などによる協力要請も実施。経団連などの業界団体へも依頼を行う。「自分が経営者なら、社員全員が入れてくれた方が安心できる」と平副大臣は話し、企業の対応にも期待する。
吉田参事官にも反省点はあるという。例えばバグの指摘があった際には、厚労省が運営していて「クイックレスポンスが弱かった」。内閣府のテックチームも、「仕様書を作ったところで一段落していた」と吉田参事官は語り、今後は厚労省とIT総合戦略室、新型コロナウイルス感染症対策本部などが連携して情報発信などをしていくという。
平副大臣は、「プライバシーに最も配慮した」点を強調しつつ、「COCOAを入れてもらうことが社会を守る、同僚を守る、家族を守るので、ぜひ登録をして欲しい」とアピールしている。
関連記事
- 新型コロナウイルス接触確認アプリ、陽性者との接触が通知可能に
「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」にて、7月3日から陽性者がアプリに登録するのに必要な処理番号の発行が可能になった。これにより、陽性者と14日以内に接触した可能性のある人への通知が可能に。通知はアプリの「陽性者との接触を確認する」から見られる。 - 新型コロナウイルス接触確認アプリ、利用開始日の不具合修正 まずはiOSから
厚生労働省は6月30日、「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」のiOS向けアプリを「1.1.1」にアップデートした。利用開始日が当日の日付で表示されてしまう不具合が修正される。Android版の修正も近日中を予定している。 - 新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)、270万ダウンロードを突破
「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」が、6月21日24時時点で約270万ダウンロードに到達した。配信開始から2日強での到達。利用開始日が当日の日付になる不具合は修正する予定。 - より多くの人が使ってこそ意味がある 「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」をインストールしよう
AppleとGoogleが開発したAPIを活用して開発された「新型コロナウイルス接触確認アプリ」(略称「COCOA」)の配信が始まりました。この記事では、その利用方法を簡単に紹介します。 - 「接触確認アプリ」の課題 プライバシーは守られるが、利用促進にハードルあり
厚生労働省が、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に役立たせるため、新型コロナウイルス接触確認アプリをリリースした。このアプリはどんなメリットをもたらし、普及させる上でどんな課題があるのか? リリースの約1週間前となる6月13日に有識者が行ったディスカッションから読み解いていく。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.