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総務省が楽天モバイルに6度目の行政指導――上限2万円のがんじがらめルールは業界を滅ぼす石川温のスマホ業界新聞

楽天モバイルが、総務省から通算6回目の行政指導を受けた。今回は楽天モバイルの瑕疵(かし)というよりも、法令の分かりづらさがもたらしたものと思われる。キャリアが“がんじがらめ”であるせいで、ユーザーへの還元が進んでいない現状が垣間見える。

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「石川温のスマホ業界新聞」

 9月11日、総務省は楽天モバイルに対して行政指導を出した。

 あまりに多すぎて何回目かも分からなくなっているが、調べたところ、6度目であった。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2020年9月12日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額税別500円)の申し込みはこちらから。


 今回は不適切な端末割引を行ったとされる。7月から8月にかけて行ったキャンペーンで電気通信事業法が定める上限額を超えるポイントとなる2万2000ポイントを1186件、還元したのが原因だ。

 ただ、端末割引の金額に対しては、確かに2万円という上限でありながら、店頭では2万2000円ポイントを付与するところも見かける。実際、消費税分としてのカウントなのだが、楽天モバイル広報によれば「消費税10%が適用されるものを買えるポイントであれば10%の付与をしても問題ないのだが、楽天ポイントの場合は消費税のないものや8%の商品も買えるため、上限額を超える扱いになった」とのことだ。

 「楽天モバイル、また行政指導か」という気はさらさらなく、これはむしろ総務省が作ったルールが、わかりにくく、業界内でも理解にできずに苦しんでいることの裏返しでしかない。

 実際、ポイントや還元に関しては、NTTドコモやKDDIも行政指導を食らっている。しかも、かなり大量の代理店が標的にされた。つまり、ルールを守りたくても、そのルールが抜け穴だらけで、誰もまともに把握できていない、というのが大きな問題なのではないか。

 最近、「AQUOS zero2」が大幅割引されて2万円台で売られているというのが話題になった。ネットでは「端末割引に対するガイドラインが改定されると、定価から値段を改定しても割引とみなされるため、今のうちに処分に走ったのではないか」という声があった。

 総務省としては、キャリアがあえて不良在庫を出すことで、そこに高額な割引を載せ、顧客を獲得していこうという、規律を脱法していくことに目を光らせていくようだ。

 キャリアとしては、今後、ますます不良在庫を抱えることが大きなリスクになろうとしている。あるメーカー関係者は「そもそも在庫が、キャリアの倉庫にあるのか、メーカーの倉庫にあるのか。それとも製品として完成しておらず、部材として在庫の山として積み上がっているのか。その整理ができていない。今後、キャリアは在庫をできるだけ囲うことはしなくなるのではないか。ますますメーカーが苦しい立場に追いやられる」と本音を漏らす。

 「上限2万円」という、根拠すらよくわからないルールを頑なに守ろうと、次々に新しいルールを作り、結果として、キャリア間の競争がなくなり、メーカーが疲弊していく日本のスマホ業界。

 値下げにうるさい新しい総理大臣は、この通信業界のがんじがらめで何も消費者のために還元できない悲惨な状況をご存知なのだろうか。

© DWANGO Co., Ltd.

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