NTTと総務省幹部による会食報道の波紋――携帯料金値下げ政策に影響を及ぼしていないのか:石川温のスマホ業界新聞
文芸春秋が、NTT(日本電信電話)と総務省との会食報道を相次いで行っている。会食を行っていたとされる時期を振り返ると、NTTドコモの完全子会社化、そして同社の新料金プラン「ahamo(アハモ)」の実現に何らかの影響を与えている可能性を否定しきれない。
週刊文春が山田真貴子前内閣広報官と谷脇康彦総務審議官がNTTと会食をしていたと報じた。すでにNTT、谷脇氏ともに事実を認めている。
会食はNTTがNTTドコモを完全子会社化しようしていた時期と重なる。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年3月6日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額税別500円)の申し込みはこちらから。
もうひとつ、疑念の目を向けざるを得ないのが、値下げ競争政策から誕生したNTTドコモの新料金プラン「ahamo」だ。
ahamoは、NTTドコモ社内では昨年1月頃より、今年3月の開始に向けて企画がスタートしたと言われている。
一方、昨年9月に菅政権が発足するのだが、菅氏は総裁選に立候補する段階で「携帯電話料金の値下げ」を政策にすると掲げていた。
ひょっとすると、総裁選の前から、NTTドコモが安価な料金設定をすることを7月の接待に参加した谷脇審議官経由で、菅総理は知っていたのではないか。
NTTドコモが値下げすることをわかった上で、携帯電話料金の値下げを菅総理が重要政策として掲げていたならば、NTTと総務省による壮大な出来レースだった可能性も出てきた。
通信業界関係者の間では、昨年から「NTTドコモの完全子会社化とahamoの投入は、NTTと官邸との交換条件だったのではないか」とささやかれていた。
グループ再編を実行し、国際競争力をつけて、世界に進出したいNTTが、菅総理の携帯料金値下げの政策を実現する代わりに、総務省にNTTグループの独占回帰を認めさせたのではないかというわけだ。
まさに昨年7月から9月にかけての密談は、官邸とNTTにとって渡りに船だったことになる。
そもそも、菅総理が携帯料金について「4割値下げできる余地がある」と発言したのは官房長官であった2018年8月のことである。
谷脇氏が総合通信基盤局長に就任したのは2018年7月であり、週刊文春によれば、2018年9月にもNTT最高幹部と谷脇氏が会食しているとしている。
すでにNTTと総務省で、料金値下げ向けた密約が、この段階で交わされていた可能性もある。
NTTと総務省は会食の場でどんな話をしていたのか。武田良太総務大臣が、やたらとKDDIに対して高圧的な発言をしていたのは、背後でNTTが入れ知恵をしていたのではないか。NTTと総務省の関係が明るみになったことで、いろんな疑念が浮かぶようになってしまった。
総務省とNTTの会食によってNTTドコモが値下げをリードし、ソフトバンクとKDDIを値下げ競争に巻き込みつつ、MVNO市場を潰すようなことにつながれば、それこそ大スキャンダルに発展する。
谷脇氏にとって長年の悲願であった携帯電話料金の値下げが実現される直前で、谷脇氏は自ら泥を塗ってしまったようだ。
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