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LINEの個人情報が中国のシステム開発委託企業で閲覧状態に――中国に拠点を持つ日本企業関連会社は撤退を余儀なくされるのか石川温のスマホ業界新聞

LINEが子会社を通して一部公開コンテンツと通報されたトークテキストのモニタリング業務を中国企業に委託していたことと、LINEの中国法人が機微なデータにアクセスできる状態となっていたことが波紋を呼んでいる。今後、あらゆるデータを国内に置き、現地法人を含む中国企業には一切業務委託しないという流れになってしまうのだろうか。

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「石川温のスマホ業界新聞」

 LINEの個人情報が中国にあるシステム開発委託企業で閲覧可能だったことが問題となっている。総務省内ではLINEの利用を停止する方針を発表。LINEを住民サービスに使っている自治体に対して利用状況を報告するように求めている。また、ソフトバンクとLINEは3月22日に開催予定のビジネス向けイベントの延期を発表。確かにこのタイミングで「LINEをビジネスに活用しよう」とは口が裂けても言えないだろう。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年3月20日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。


 ただ、IT業界において、中国にシステム開発を委託、あるいは移管するという動きは、むしろ数年前までは活発だったのではないか。コストや技術面を考えれば中国でシステム開発を行うというのは当然の流れだったように思う。

 ただ、中国政府が国内企業が扱うデータにアクセスしてもいいという法律になったことで、風向きが一気に変わってしまった。LINEも、この法律が出来たことで、システム開発体制を見直す必要があった。ここが落ち度であったと言われれば仕方ない。

 LINEは今回の騒動が起きた直後に個人データの取り扱いについて説明を行っている。このなかで、画像や動画のデータは韓国で保管されていると明らかにした。一部には「日本ではなく、海外にデータがあるなんて怖い」という指摘をする人もいるが、グーグルやフェイスブック、インスタグラムなどのデータはどう考えても、アメリカもしくは別の国で処理されていることだろう。

 そもそも、インターネットは国境がないことが素晴らしいのではないか。ここ最近は個人情報の取り扱いにうるさい国も出てきているが、どこにデータが保管されていようと、どこからでもアクセスでき、活用できるのがインターネットのメリットではないか。安価なコストで保管でき、運ぶのにもコストのかからない場所であれば、中国以外の世界のどこにおいても、さほど目くじらを立てる必要はないのではないか。

 一方で、アップルは「ユーザーのデータは極力、クラウドにはあげずに、iPhoneの中にとどめておく」というスタンスを貫いている。個人情報の取り扱いについて、厳格さを求める人にiPhoneはさらに売れるのではないか。

 今回の騒動で頭をよぎったのは「ソフトバンクは大丈夫なのか」ということだ。ソフトバンクはかつて「携帯電話の新規契約ユーザーの申し込み情報は、中国でシステムへの入力が行われている」という話を聞いたことがあった。さきほど、調べてみたところ「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)」として、中国大連市にアウトソーシングサービスを展開する現地法人が存在する。コンタクトセンターサービス(電話やメールでの顧客対応や社内ヘルプデスク)とオペレーションセンターサービスを提供し、コスト削減や生産性向上につながるという。

 データに関しては日本国内にあるソフトバンクのデータセンターに設置されているシンクライアントサーバーに保存され、中国側へは業務データを一切送信していないという。

 ただ、LINEの騒動も「中国から国内サーバーにある個人情報にアクセスできた」だけで大問題に発展した。

 このあたりの違いがよくわからないのだが、今後、中国に業務を委託すること自体が、NGになっていくのだろうか。

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