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「ながら充電」に注意 携帯市場と電通大がスマホのバッテリー劣化を防ぐ研究

携帯市場は3月30日、電気通信大学と進めている「スマホバッテリー劣化研究プロジェクト」に関する研究結果を発表した。スマートフォンのバッテリー劣化は買い取り価格が下落する要因になる。特に注意したいのが「ながら充電」だ。

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 携帯市場は3月30日、「スマホバッテリー劣化研究プロジェクト」に関する研究結果を発表した。同研究は、国立大学法人電気通信大学 iパワードエネルギー・システム研究センター横川研修室との産学連携プロジェクトであり、報道発表会には同研究室の横川慎二教授らも登壇した。

【訂正:2021年4月6日10時20分 初出時に、研究センター名に誤りがありました。おわびして訂正致します。】

バッテリー劣化で買い取り価格が下落する

 携帯市場の粟津浜一社長は、昨今のコロナ禍において、カフェでテレワークをしたり、自宅で動画を視聴したりする時間が長くなるなど、バッテリーに負荷がかかる機会が増えていると指摘。端末のバッテリーが膨張しているなどの状態は、下取りに出す際の買い取り額を大幅に下げる要因になると指摘した。

粟津浜一
携帯市場代表取締役社長の粟津浜一氏

 粟津氏は、こうした事象による端末の価値損失額は、市場全体で推定4220億円にも上るという計算であり、無視できない経済損失になっていると警鐘を鳴らした。加えて、劣化したバッテリーは発火や爆発といった事故を招く可能性もあるため、防災の面からも重要だとした。

バッテリー劣化
電気通信大学石垣陽特任准教授監修で導き出したという、バッテリー劣化による推定価値損失額について

 実際に調査を行う上での課題として、スマートフォンは属人性が高いものであり、容量や形状、使用環境が多様なことが挙げられたという。また、昨今の機種はLiB(リチウムイオン電池)内蔵型が多く、劣化状態を間接的に把握する手法が必要だったとのこと。こうした理由で、第1弾の調査では46項目のアンケートを実施し、統計学的手法によって分析するというアプローチが採用された。

「ながら充電」はバッテリー劣化の要因に

 研究の詳細については横川研究室の浅野実氏が説明した。1800人のアンケートデータに基づき、バッテリー劣化を招く使用方法やユーザー属性について分析した。分析には、一般化回帰分析や、Kmeans法、階層化クラスタリング、構造方程式モデリングなど、複数の統計学的手法が用いられた。

浅野実
電気通信大学 横川研究室の浅野実氏

 この結果、スマートフォンの使用日数が長くなれば、劣化量が大きくなる傾向がある一方で、同じ日数でも使い方によって劣化度合いが大きくこと傾向があった。また、それを左右する原因として、ソフトの設定、使用用途、時間、充電に関する項目が影響していることが分かった。なお、劣化を緩和する使い方としては、アプリを最新の状態にしているか、省エネ対策アプリを使用しているか、不要なアカウントを削除しているかどうか、などを挙げた。

Kmeans法
Kmeans法による分析結果
バッテリー劣化
構造方程式モデリングによる分析から分かった「バッテリー劣化を抑える使い方」と、「劣化を促進させる使い方」の例

 特に、ゲームをしながら充電をするなどの「ながら充電」を行う場合、端末の内部温度が上がってしまう。具体的には、充電のみでは1.2度の上昇だったのに対し、充電しながらのゲームプレイでは8.9度も上昇したという。このように温度が上昇した状態でバッテリーを酷使することが劣化を加速させる要因になり得る。なお、ユーザー属性に関するところでは、若年層ほど充電しながら動画視聴やゲームプレイを行うユーザーが多かった。

【訂正:2021年4月5日22時20分 初出時に、「充電なしのプレイでは1.2度の上昇だった」としていましたが、正しくは「充電のみでは1.2度の上昇だった」です。おわびして訂正致します。】

バッテリー劣化
ながら充電はバッテリーの温度を上昇させやすく、劣化を招きやすいという
横川慎二
電気通信大学の横川慎二教授

 電気通信大学の横川慎二教授によれば、バッテリー駆動製品を活用する分野が拡大しており、モバイルやウェアラブルの分野はもちろん、AGVという工場の輸送ロボットなどにもバッテリーが使われ、EVや飛行機などもバッテリーで駆動させようという試みが増えているなど、生活の中には思った以上にバッテリーが多く存在するとのこと。将来的に、社会として独立分散型の構造で電力を供給するシステムを実現させるためにも、バッテリーマネジメントの重要性は増していると語った。

バッテリー劣化
横川教授によれば、バッテリーの内部温度が10度高くなると、劣化量は約2倍になるという

バッテリーの劣化度を診断するシステムを開発

 携帯市場は、同社が販売、レンタルする端末にプリインストールするアプリから、バッテリーの劣化度を診断するシステムを開発している。6分間バッテリーに負荷をかけることで、劣化度を数値的に分析できるという。第2弾の調査として、2021年7月から、iPhone・Androidそれぞれ100人のモニターを集め、同アプリを活用した分析を行う予定だ。さらに、USBのPD測定器を用い、回路全体を通して充電を開始時の電流と電圧の変化から分析を行うアプローチも進めていく。

バッテリー劣化
アプリを活用した今後の調査について

 「アンケート結果とアプリ、PD測定器の結果を総合して、劣化予測につなげていきたい。バッテリー状態が分かるようにして、ユーザーが端末の売り時を判断できるようにし、それによって中古市場の活性化も促したい。また、正しい使い方によって、バッテリー劣化を抑え、長寿命化にも貢献していきたい」(粟津氏)

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