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総務省がeSIMを2021年夏までに義務化――eSIMは乗り換えを促進するための特効薬ではない石川温のスマホ業界新聞

総務省でMNPを促進する施策を検討する会議が、2021年夏をめどに「eSIM」の導入を行う方向の報告書案をまとめた。しかし、eSIMを導入するだけでMNPは活性化するのだろうか。

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「石川温のスマホ業界新聞」

 3月30日に総務省で行われた「スイッチング円滑化タスクフォース(第6回)」において公開された報告書(案)において、2021年夏を目処にeSIMの導入を進めていくと明らかにされた。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年4月3日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。


 確かにeSIMはこれから普及していくことだろう。しかし、eSIMを「キャリアの乗り換えを促す特効薬」と持ち上げるのは、いかがなものか。

 確かにeSIM対応のスマホとeSIMを提供してくれるキャリアがあるととても便利だ。店頭にいくことなく、オンラインで契約でき、すぐにSIM情報をデバイスに書き込める。これまでに何度も利便性を実感している。

 ただ、手続き自体は煩雑で、お世辞にも万人向けとは言えない。乗り換えやeSIMの仕組みなど、全体像を知った上で手続きをすれば問題ないが、一般ユーザーにそこまで求めるのは酷かも知れない。

 そもそも、有識者の先生方はeSIMで契約した経験はあるのか。

 筆者もeSIMの扱いに慣れている方だと思うが、先日、povoでeSIM発行し、iPhone 12 Pro Maxに設定してみたまでは良かったが、「つながらない」と焦ってしまい、eSIMを消去。「再度、ダウンロードすればいいや」と気軽に構えていたら、povoはオンラインでの再発行ができず、お客様センターに電話。それでうまく再発行してもらえず、結局、プラスティックのSIMカードを送ってもらうことになった。実はこのトラブルは、そもそもiPhone 12 Pro Maxに残っていたLINEMOのAPN構成プロファイルが残っていたためにうまく通信ができなかったというのが後からわかった。

 eSIMやプラスティックのSIMカードの再発行に数日間、費やしており、その間、回線は不通であった。サブ回線だったため、全く問題なかったが、これがメイン回線だったら、話にならない。

 一般のユーザーが、はじめてeSIMでキャリアを乗り換えるというのは正直、大変だろうし、そのサポートをしなくてはならない、キャリアにとってみても、オンラインで徹底したサポートをするのは、あまり気乗りがするものではないだろう。

 総務省がeSIMを本気で普及させたいのであれば、スイッチング、いわゆる乗り換えを狙ったものではなく「2枚目」需要を喚起すればいいのではないか。

最近のスマホはSIMカードとeSIMが両方入るのだから、SIMカードスロットには今まで契約しているキャリアの、できるだけ安いプランのSIMカードを挿しつつ、eSIMにはIIJmioのようにデータ通信料金の安いプランで契約する。このような2枚SIMを活用するというやり方であれば、eSIMのMNPで失敗するリスクもないし、ユーザーは簡単に通信料金を安くできる。

 キャリアの回線は維持され、決済やコンテンツサービスで稼ぐことができるし、MVNOも新規契約を獲得でき、通信料金も稼げる。

 総務省もいきなり「eSIMで乗り換え促進」ではなく、2枚目需要という、もうちょっとユーザー視点で消費者を保護する、現実的な提案はできないものなのか。

© DWANGO Co., Ltd.

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