総務省は通信業界を変えたのか? 14年間の政策を見直し、愚策は撤廃すべき:ITmedia Mobile 20周年特別企画(3/3 ページ)
NTTと総務省による接待報道のおかげで、NTTグループを取り巻く動きが停滞している。接待報道で最も衝撃的だったのが、谷脇康彦総務審議官の辞職だ。谷脇氏が旗振り役として進めていた2007年の「モバイルビジネス研究会」から、通信業界の問題点は変わっていない。
総務省の在り方自体を議論していくべき
通信行政のトップであった谷脇氏が辞任に追い込まれたことで「この先、日本の通信業界はどうなるのか」という心配の声が、業界内外から聞かれる。しかし、通信業界関係者は「谷脇さんの下で働いていた人たちが異動するのはあと1年半ほどありそう。彼らが担当している間は特に混乱はないのではないか」と冷静だ。
ただ「谷脇さんはどちらかといえば、調整役のような存在だったのではないか。総務省の方針は、文書を読むと、いかようにも読めるような行間となっている。そんな中、対立する業界関係者をうまいこと持っていくのが谷脇さんの立場だった。この先、総務省の文書通りに事は運ぶだろうが、空気が読みづらくなるかもしれない」と不安視する。
ただ、恐らく総務省の中でも谷脇氏に代わる若い優秀な人材がいるはずだ。これまで、総務省の若手官僚は谷脇氏に遠慮して、間違った政策を軌道修正することができなかったのではないか。
業界関係者は「お役所は前任者が異動したからといって、前任者に対して気を遣い、間違っていたと分かっていても方針や政策を変えるようなことはできない」と語る。しかし、総務省に谷脇氏はもういない。
これまで総務省がやってきたことは、本当に日本の通信業界にとって正しいことだったのか。5Gにおいて、米国、韓国、中国に大きく後れを取ったのは総務省にもその責任はないのか。
これから通信行政を担当する人にはぜひとも、この13年、14年間の政策をイチから見直し、愚策は撤廃する方向でかじを切ってもらいたい。
通信行政が正常化するためには、米国のFCCのように通信や放送行政を担う、独立した組織が必要なのではないか。
今回の接待報道で総務省の信用は地に落ちた。日本の通信業界が再び世界をリードできるように、総務省の在り方自体をきちんと議論していくべきだろう。
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