「楽天キャッシュ」のメリットとは? 「楽天Edy」「楽天ポイント」との違いを読み解く(1/2 ページ)
楽天の決済サービスには、楽天ペイ、楽天Edy、楽天キャッシュ、楽天ポイントと複数のサービスが存在している。中でも歴史の長い楽天キャッシュは、オンライン型の電子マネーとして、楽天ペイなどでチャージをして支払える。楽天Edyと楽天キャッシュどちらもチャージして決済に使えるが、明確にターゲットが違うという。
楽天の決済サービスには、楽天ペイ、楽天Edy、楽天キャッシュ、楽天ポイントと複数のサービスが存在している。これ以外にも楽天カードや楽天ウォレットなどもあるが、多くの決済サービスを受け持つのが楽天ペイメントだ。歴史的な経緯もあっていろいろなサービスが存在しているが、楽天としてどのような使い分けを想定しているのか。担当者に話を聞いた。
今回、話を聞いたのは、楽天ペイメントの戦略室企画グループマネージャーと楽天Edyの楽天キャッシュ事業推進室副室長を兼ねる鍋山隆人氏。
楽天キャッシュはオンライン型の電子マネー
楽天Edyは、もともとFeliCa採用の電子マネーサービスとしてビットワレットがスタート。2011年に楽天が吸収して楽天Edyとしてサービスを展開。実は、それより前から存在していたのが楽天キャッシュだ。
楽天キャッシュは2008年にスタートし、アフィリエイトの報酬支払いなどで利用するために作られたサービスだ。ポイントでは現金化できないため、楽天キャッシュというサービスが作られた。この時点で、「オフラインでの店頭決済などで活用する楽天Edy」と「アフィリエイト報酬の楽天キャッシュ」という全く別の目的で成立したため、すみ分けされていた。
その後、アフィリエイト報酬用途だった楽天キャッシュの役割も変化。楽天Edyとは異なり、残高をサーバに置くオンライン型のため、オンラインサービスが中心の楽天グループとの相性がよいことから、サービスが拡充されていった。
報酬の受け取りだけでなく、2018年7月にはフリマアプリ「Rakuten Rakuma」売上金からのチャージにも対応。同様の機能は、メルカリの売上金を使えるメルペイも行っているが、それよりも先行していたと鍋山氏はアピールする。楽天カードや楽天銀行などからのチャージにも対応し、2021年2月からは暗号資産「Rakuten Wallet」からもチャージできるようになり、これも業界初だという。
楽天ペイは、オフラインでの支払いに対応したスマホ決済サービスで、楽天カードを組み合わせて使う形で提供。ここに楽天ポイントや楽天キャッシュ、楽天Edy、楽天のSuicaなどがアプリ内に統合され、総合的な決済アプリとして現在の仕組みが構築された。
楽天Edyと楽天キャッシュは、会社として楽天Edyが運営している。もともとは楽天グループが運営していた楽天キャッシュだが、20年以上のノウハウがあり、前払式支払手段と資金移動業としてのキャリアが長い楽天Edyの方が適切に運営できると判断して、2020年に楽天キャッシュ事業を楽天Edyが吸収した。
同じ電子マネーで同じ会社のサービスではあるが、楽天Edyとは異なり、楽天キャッシュは完全に楽天内で発行される電子マネーのため、楽天グループにとってはより自由度の高い電子マネーではあるだろう。
こうした違いと共通点のある楽天Edyと楽天キャッシュだが、2016年にスタートした楽天ペイでは、これらを1つのアプリ内でまとめることができ、楽天ポイントや楽天のSuicaと合わせて共通したUI(ユーザーインタフェース)で利用できるようにした。
楽天キャッシュを楽天ペイの支払いにも利用できる
楽天ペイでは、オンラインの楽天キャッシュを使ってオフラインでの支払いが可能になったことで、楽天キャッシュは「楽天ペイの残高」としての位置付けも持つことになった。
それまでオフラインの決済に利用されていた楽天Edyは、楽天会員かどうかは問わずに使える電子マネーであり、カードまたはおサイフケータイ上に残高を保持する。楽天キャッシュは楽天会員向けにオンラインで残高を保持している。どちらかというと楽天ポイントに近く、実際鍋山氏は、「チャージのできる楽天ポイント」と表現する。
楽天ポイントはチャージできず、決済に伴って還元されるものなので、人によっては利用を控える動きもあるという。そうした点でも、楽天キャッシュによる楽天経済圏の利用拡大を狙う。
楽天キャッシュのチャージに関しては、従来のクレジットカードや銀行経由に加えて、コンビニエンスストアなど7万5000店で現金購入できる「楽天ギフトカード」も利用可能。7月25日には全国10万カ所以上、2万6000台のセブン銀行ATMでの現金チャージも可能になった。
チャージソースが増え、楽天ペイアプリに組み込まれることで、楽天キャッシュにチャージされる額も増加。2020年の年間チャージ額に対して2021年は2.5倍の増加になったという。成長は継続しているとのことで、楽天グループ内における存在感が増している。「グループ内でも勢いのあるサービス」と鍋山氏。
この結果、オフラインの残高である楽天Edyとオンラインの残高である楽天キャッシュという2つの残高が存在することになった。残高が分断されている形だが、今夏には楽天Edyと楽天キャッシュの相互交換に対応。オンラインとオフラインの残高が共有できるようになり、「普段は楽天Edyでタッチ決済をしているけれど、楽天市場でセールがあるから楽天Edyから残高を移す」といった使い方ができるようになった。
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