5Gのキラーコンテンツは中国で生まれる? 「5.5G」「6G」も見据え世界をリードする存在に:山根康宏の中国携帯最新事情(2/3 ページ)
モバイル・通信関連のイベント「MWC上海2023」が2023年6月28日から30日まで中国・上海で開催された。通信キャリアは6Gに関するデモを披露。3DコンテンツやAIなど、新たな技術を取り入れた展示も活発だった。
新規参入した中国広電が出展、キャリアは6Gなどをデモ
MWC上海2023には中国の3大通信事業者である中国移動(China Mobile)、中国電信(China Telecom)、中国聯通(China Unicom)が出展を行った。2023年のイベントではこの3社に加え、2022年6月に4番目の事業者として参入を開始した中国広電(China Broadnet)も出展を行った。
中国広電のサービス展開状況は中国国内でもあまりニュースにはなっておらず、海外から状況をつかむのは難しい状況だった。ブースでは英語が片言できるスタッフもおり展示内容の説明などを行ってくれたが、新規参入したことで携帯電話番号の「良番」を多く提供でき、また若い世代をターゲットにした低料金プランも投入することで加入者を一気に増やそうとプロモーションを積極的に行っている。
同社の親会社は中国全土でIPTV事業を展開していることもあり、固定回線を使ったブロードバンドサービスと5G回線を組み合わせた総合的な高速データ通信サービスも展開。IPTV向けの映画やテレビ放送を5G回線でも視聴できるなど、シームレスなコンテンツ配信も始めている。固定回線、携帯電話回線事業からスタートした先行3社とは異なり、コンテンツ展開を事業の柱にしている点は興味深い。
中国は既に5Gサービスの加入者数だけでも10億回線を超えている。中国工業情報化部によると、このうちスマートフォンなどで5Gを使っているユーザー数は6億4300万人とのこと(2023年4月末時点)。5GはIoT機器への応用も進んでおり、無人搬送車(AVG)の走るスマートファクトリーや、遠隔医療などの展開が5Gネットワークの拡充とともに広がっている。最近では5Gに対応したドローンも産業用途に展開されている。プライベート5Gネットワーク(日本ではローカル5G)も広がっており、産業界の5G化はこれから急速に広がりを見せそうだ。
次世代技術として各事業者は6Gの研究も開始している。6Gはまだ規格が制定されていないことからミリ波やセンチメートル波を使った電波特性のテストなど、6Gに応用できる基礎研究が進められている。中国は3Gで独自規格にこだわり大きく出遅れ、4GではTDD方式を採用しながらようやく海外に追い付いた。そして5Gでは今や世界市場をけん引する状況になっている。6Gの研究はキャリアやネットワークベンダー、大学などが協業しつつ進めており、規格制定後は一気に普及を広めるだろう。
一方では既存インフラのアップデートの取り組みも見られた。もともと固定回線事業者であった中国電信は上海市内にある公衆電話BOXをスマート化した「Hello 老友」への置き換えを進めている。名称から分かるように年配者向けのサービスで、年配者のデジタルデバイド解消を目的としている。
ブースには従来の公衆電話に加え、光回線で接続されたタッチパネル式の大型ディスプレイが設置されている。24時間対応の緊急医療サービスや、ワンタッチでタクシーを呼び出したり、周囲の病院や公衆トイレ情報の検索などが利用できたりする。スマートフォンを持たずに街中を散歩がてら、最新の福祉や医療サービスを受けられるのだ。
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