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なぜ中国のiPhone 17は物理SIMを搭載しているのか? 日本向けモデルがeSIMオンリーとなった“特殊事情”山根康宏の海外モバイル探訪記(2/3 ページ)

なぜ日本向けモデルは北米向けモデルと同じ仕様になったのか。そしてなぜ中国向けモデルはeSIMを搭載しないのか。携帯研究家の山根氏が独自の知見から解説します。

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特殊な事情にある日本のスマートフォン販売

 日本も北米もiPhoneの普及率が高く、Appleが率先して新技術をユーザーに利用させやすいという下地はある。とはいえ日本以外でも、例えばオーストラリアや台湾、欧州の一部の国ではiPhoneの普及率が高い。しかしこれらの国で販売されるiPhone 17は「eSIM+物理SIMカード」という構成になっている。

 ではなぜ日本向けモデルがeSIMだけになったのだろうか。それは日本のスマートフォン販売が諸外国と比べて特殊な事情にあるからだ。

 日本では通信キャリアを通したスマートフォン販売が今でも主力であり、キャリアがある程度の端末サポートも行っている。iPhoneに不具合が起きてもキャリアでの対応が期待できる。

 eSIMしか使えないiPhoneを購入する日本の消費者の多くは、キャリアの店舗を訪れるため、キャリアとしてもeSIMの説明やサポートを直接行いやすい。

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2022年に北米で登場したeSIMのみのiPhone 14。日本も同じ状況になった

 一方、日本と北米、そして韓国以外の多くの国では1990年代からGSM方式の携帯電話サービスが開始され、通信回線はキャリアが提供するSIMカード、端末はメーカーが販売と、回線と端末が分離して販売されてきた。

 その後、W-CDMAからLTEと通信方式がアップグレードされていったが、基本的なビジネススタイルは変わらない。今では日本でもSIMカードは当たり前の存在だが、アナログや旧世代のPDC方式の頃からの「キャリアが端末を開発・販売する」日本のビジネススタイルは根底に生き残っている。

 つまり北米と日本以外の地域では、キャリアを通さず端末を買うユーザーが多い。そのため端末の個別のサポートはキャリアよりもメーカーが行うことが基本だ。もちろんヨーロッパやアジアのキャリアの店舗に行けば、iPhoneや最新スマートフォンが回線契約とセットで割り引きされて販売されている。だがそれはあくまでもメーカー製端末をキャリアが販売店として売っているだけであり、端末のサポートはメーカー側が行うのが一般的だ。

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海外キャリアの店舗。日本のような手厚い端末サポートは期待できない

 このようなビジネス環境下で物理SIMカードの利用できないスマートフォンを販売した場合、不具合が起きたときにキャリアとしてもサポートを行うには限界があるだろう。北米と日本以外の国でiPhone全てのモデルがeSIMだけの対応になるには、まだしばらく時間がかかると思われる。

 物理SIMカードからeSIMへの移行は、キャリアもメーカーもコスト削減や製品開発の効率化を目指して前向きに進めているのが現状だ。日本市場はキャリアによるサポート体制が充実しているため、国際的にもいち早くeSIM時代へと踏み出せる環境が整っている。

 今後しばらくは移行期ならではの混乱も予想されるが、Appleの“ごり押し”とも思えるeSIMオンリー戦略は、結果として日本がeSIMを自在に使いこなせる“eSIM先進国”に押し上げるきっかけになるだろう。

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