News 2000年10月25日 11:57 PM 更新

メモリースティック“オープン化”計画

1998年に後発のIC記憶メディアとして誕生したメモリースティック。ソニーが描くライセンシー獲得への道とは?

 ソニーは,メモリースティックをオープンなプラットフォームにしようとしている。同社は10月25日,メモリースティックの対応機器を製造するのに必要なライセンス情報を公表するとともに,開発者向けWebサイトの拡充,大容量化と高速化に向けた技術開発ロードマップなどを公開した。11月中旬の「COMDEX/Fall」を前に,これまで「クローズドだ」と言われ続けてきたメモリースティックのイメージを払拭し,広くライセンシーを獲得するのが目的だ。

 1998年にストレージメディアとして登場したメモリースティックは,ソニーの映像機器やVAIOシリーズに搭載され,その好調さを背景に出荷量を増やしてきた。同社によると,2000年は全世界で1000万枚が出荷され,累計出荷数は1300万枚に上るという。国内のICメモリーカード市場でのシェアは20%を超え,年内にもコンパクトフラッシュを抜こうという勢いだ(JFK Japanの調査による)。対応製品は,20カテゴリ/60モデルに達し,「今年度中には全世界で約1000万台の対応機器が普及することが予想されている」(ソニー)という。

 しかし,これまでメモリースティックはソニー主導の市場拡大を続けており,シャープのヘッドホン型プレーヤー「e-musee」など一部の製品を除いて,なかなかサードパーティから対応機器が出て来ていない。また,著作権保護機能を持つ「MGメモリースティック」が「ATRAC3」という圧縮フォーマットを規定しているため,汎用性に欠けるという指摘もある。それにライセンス方針の不明瞭さが重なり,サードパーティや競合メモリベンダーから「閉鎖的だ」と囁かれ続けてきたのも事実だ。

 だが,ソニーはそれを真っ向から否定する。「(ほかのメディアは)ネットワーク対応や次世代メディアなど謳っているわりには,コーデックもフォーマットもバラバラだ。メモリースティックのビジョンは,わざわざフォーマットしたりせずに“つながる”ネットワークプラットフォームにすること」。つまり,圧縮方式を規定したことによって,対応スロットがあれば必ず再生できる環境にあるのがメリットだという。通常のメモリースティックに加え,MGメモリースティックなどのバリエーションが存在する現状とは矛盾するが,これもコスト的な問題が解決されればMGメモリースティックに統一される見通しだ。

 また,米RealNetworksや米Liquid Audioなど,メジャーな楽曲配信/再生システムのベンダーがOpenMGとATRAC3をサポートすることにより,少なくともPCを介した上では,ほかの圧縮フォーマットとの互換性を確保できるようになった(1月7日の記事10月24日の記事を参照)。「(音楽配信サービスで)さまざまなフォーマットで配信されても,PC上でOpenMGが変換することにより,携帯プレーヤーでの互換性を確保できる」(ソニー)。

オープンプラットフォームプログラムとは?

 音楽配信ビジネスで外堀を埋めることに成功しつつあるソニーは,サポート企業と対応機器の拡充という本丸に挑もうとしている。この日,公表された「オープンプラットフォームプログラム」は,ライセンスを受ける企業が容易に情報にアクセスし,かつ利用できる環境を整えることに主眼をおいたものだ。公開された対応機器向けのライセンス料金は,通常のメモリースティックで年会費50万円のみ。MGメモリースティック対応機器では年会費80万円にプラスして機器1台あたり80円となる。もちろん,これにはATRAC3やOpenMGの使用権も含まれている。

 また,今後の応用分野拡大にむけ,「アプリケーションコミッティ」を設立し,サードパーティの参画を募った上で技術を検討する方針だという。こちらは11月には内容が決定する予定であり,新しいアプリケーションとサービスにおけるデータ互換や利便性の向上を図る。さらに,ソニーは同日,開発者向けに新しいWebサイト「memorystick.org」を立ち上げ,「他社よりもかなりつっこんだ」(同社)情報提供を始めた。

2003年までに1Gバイトへ

 技術開発ロードマップでは,大容量化と高速化,そして拡張性に関するスケジュールが披露された。まず,2001年4月までに128Mバイトタイプを出荷。2002年から2003年にかけて,256M/512M/1Gバイトの製品を順次投入する。また,大容量アプリケーションへの対応に伴い,2002年のうちに現在の約8倍にあたる最大20Mバイト/秒の転送速度を実現する予定だ。

 より小型の機器開発を可能にする「メモリースティックDuo」(4月13日の記事を参照)は,2001年中旬の発売を予定している。まず8M/16Mバイトの無印メモリースティックDuoと32M/64MバイトのMGメモリースティックDUOを製品化する。さらに,メモリースティック拡張モジュールとなる「インフォスティック」では,指紋照合モジュールやGPSモジュールの開発が進められており,2001年中には商品化する計画だという。

 「既にメモリースティックの賛同企業リストには104社が名前を連ねている。11月のCOMDEX/Fallでは,Memory Stick Pavilionを設け,53社が出展する予定だ」(ソニー)。メモリースティックのプラットフォームがどの程度オープンなのか,まずはCOMDEXに注目しよう。

関連リンク
▼ メモリースティックの開発者向けWebサイト
▼ SonyDrive

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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