News 2001年1月18日 02:41 AM 更新

NTT東日本の“ISDN&DSL”サービスに黄信号

昨年8月に報道されて注目を浴びたNTT東日本の「ISDNとDSLの使い勝手を組み合わせたサービス」。技術的にはほぼ確立されたものの,同社は実行に移すかどうかを迷っている。

 2000年8月に新聞各紙が報道して注目を浴びた,NTT東日本のISDNとDSLを組み合わせたサービスに黄信号が点灯し始めた。このサービスは,既存の電話線にISDNの2チャンネルとDSLの高速データ通信を同居させ(ISDN over DSL),電話,FAX,高速インターネットアクセスを1本のメタリック回線で利用できるようにするというもの。NTT東日本では「今年度中にサービスを開始する」としていたが,1月17日に行われたNTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)主催のセミナーで,同社の成宮憲一技術部長は,サービスの可否を含めて検討中であることを明らかにした。

正体はG.dmt Annex H

 8月の時点ではISDN over DSLの技術的な詳細は明らかにされていなかったが,ITU(International Telecommunication Union)では,既に「G.dmt(G.992.1)Annex H」として標準化が進められている。Annex Hは,一般にSSDSL(Synchronized Symmetric Digital Subscriber Line)と呼ばれ,日本のISDNが独自に採用しているピンポン伝送方式に対応できる点が特徴。逆に言えば,日本向けの仕様だ。


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 NTTでは,ISDNとIPアクセスの信号に宅内の機器(STU-R)でタイムスロット多重をかけ,SSDSL方式の変調を加えて回線に流す「時分割多重」を有力な方法として挙げている。電話線に流す際には,ISDN信号に固定的なフレームを確保しておき,IPアクセスのデータが残りの部分を使用することで,通話のディレイ(遅延)を防ぐ。電話局内の機器(DSLAM)で復調・分離されたISDN信号とIPデータは,それぞれ交換機と地域IP網などのIPネットワークへと流れていく。同社の検証結果によると,IPデータは,「上り/下り対称で700Kbps程度のスピードが出る」(成宮氏)という。

サービス開始は1年以上先?

 新たに回線を引くことなく,電話やFAXと高速インターネット接続が利用できるSSDSLは,多くのユーザーに支持されるはずだ。しかし,技術的な問題はほぼ解決しているにも関わらず,NTT東日本はサービスの開始を躊躇している。

 理由はいくつかある。まず,非常に競争力の高いサービスだけに,競合他社から反発を受けるのは当然だが,SSDSLによって「DSLの買い控えが起こっていると言われたら,公正な競争原理に反する」(成宮氏)ということ。

 2つめは,情報開示の問題だ。NTTは,ほかの電気通信事業者と電気設備を相互接続するため,予定している機能のインタフェース適用条件などを事前に公開する義務を負っている。その際,サービスを開始するまでに一定の開示期間をおかなければならず,「技術の進歩が激しいIT業界では,サービスを提供するときには時代遅れになっている可能性がある」(成宮氏)という。今からISPやほかの通信事業者とのインタフェースを規定し,公開したとしても,サービス開始までには「おそらく1年以上はかかる」(成宮氏)。

 実際,17日にはガーネットコネクションズ企画が最大6MbpsのADSL実証実験を開始したことを発表している(1月17日の記事を参照)。64Kbpsや650Kbpsが主流の時代ならともかく,6MbpsのDSLや10M〜100MbpsのFTTHが当たり前になったとき,700KbpsのSSDSLは見劣りしてしまうだろう。

 また,サービスのタイミングを見誤ると,それはコストにも跳ね返る。DSLAMなどの設備の償却期間は6年間。これからAnnex H対応の機器をそろえていくと,今後6年間はその設備を維持しなければならないことになる。光サービスを進めたいNTTにとっては,時間とコストが重い足枷となるはずだ。

 成宮氏は,SSDSLサービスの可否について「いずれにしても,結論は今月中に出さなければならない」として,その場で明言することは避けた。

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関連リンク
▼ ITUのG.992.1 Annex Hドキュメントダウンロードページ
▼ NTT東日本

[芹澤隆徳, ITmedia]

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