News 2001年1月30日 11:59 PM 更新

Xboxをめぐる期待と疑問

マイクロソフトがXboxのグラフィックをテーマにした報道関係者向けの説明会を開催。これまでにない“深み”を表現するグラフィック機能を中心に説明した。

 マイクロソフトは1月30日,Xboxのグラフィックをテーマにした報道関係者向けの説明会を開催した。会場では,開発者向けに配布されているPCベースの開発キットによるデモンストレーションが行われ,最新のPCに勝るとも劣らぬ「“深み”を表現するグラフィック」(同社Xbox事業部アドバンストテクノロジーグループの吉岡直人氏)が披露された。しかし,そのアーキテクチャには,まだまだ不透明な部分があるのも確かだ。

 吉岡氏によると,Xboxのハードウェアは下図のようになるという。インテルのPentium III/733MHzとNVIDIAの通称「XGPU」を中心に構成される。XGPUには,メモリコントローラを内蔵し,UMA技術によってメインメモリをグラフィック・CPUがシェアする。「CPU,サウンド,GPUが同じメモリ空間にアクセスする。このため,サウンドやグラフィックのバッファも物理的な制限が少ない」(吉岡氏)。


Xboxのハードウェア概要(拡大画像はこちら

 しかしながら,Xboxの仕様をみると,メインメモリは64Mバイト。ミッドレンジ以上のグラフィックボードなら32M〜64Mバイトのビデオメモリを搭載しているのが当然の現状で,サウンドやOSも同じメモリを使うXboxでは,メモリアクセスがピークに達したとき,容量やバンド幅が足りなくなる恐れはないのだろうか? もちろん,CPUとGPUが,お互いにメモリ帯域を食い合えば,性能は伸びない。PCゲームに詳しいあるアナリストは「すべての機能がメモリをシェアするのなら,メモリの容量は少ないだろう。また,バンド幅にも不安はある」と指摘する。XGPUこと「NV2A」(NVIDIAのコードネーム)は,250MHzで動作する予定だ。

 吉岡氏は,こうした指摘を踏まえた上で,UMAがボトルネックになるのを防ぐ技術がある,という。実際,スペック表をみるとメモリはDDR SDRAMでメモリバスは6.4Gバイト/秒とかなり高速。メモリインタフェースを128ビット幅にでもするのだろうか? 「詳細はまだ発表できない。ただ,Xboxは,今風の技術を用いた理想的なアーキテクチャといえる」(吉岡氏)。なんとも思わせぶりだ。

DirectXに合わせたハードウェア設計

 Xboxが通常のPCと異なるのは,ゲームという最も重いアプリケーションにフォーカスして専用の設計がなされた点だ。WindowsのDirectX技術を用いつつ,ソフトウェアの要求に合わせてハードウェアが設計された。「われわれは,ソフトウェア会社としての経験と欲求をもとにXboxを設計した。よくデベロッパーに“ハードウェアを直接叩くことはできないのか?”と訊ねられるが,XboxではDirectXそのものがハードウェアと言える」(吉岡氏)。また,Xboxでは,ピクセルシェーダーやバーテックスシェーダーといった機能がハードウェア(HAL:Hardware Abstraction Layer)として実装され,CPUの負荷にはならない。

 Xboxが表現するグラフィックは,ポリゴンの数を競うこれまでのものとは違う。空気感や奥行きを感じさせる“深み”を表現するグラフィック……というのがマイクロソフトの主張。スペック上,XGPUは毎秒1億2500万ポリゴンを表現できるというが,「あまり意味はない」(吉岡氏)のだという。「例えば,見せたい部分にだけピントが合い,周囲はぼけるといった表現のように,本当に速いGPUでなければできない“見せない表現”ができる」(吉岡氏)。ピクセルシェーディングを例にとれば,従来はポリゴンの頂点単位で光源計算をしていたが,Xboxではピクセル単位で計算できるという。デモンストレーションでは,天上から光を受けた地球や,中央にのみフォーカスを当てた“やかん”のグラフィックが披露された。こうした機能を利用すれば,クリエーターはゲームのなかでリアルタイムに(デモムービー以外でも,という意味)映画的な表現を使うことができるだろう。HDTV(XboxはHDTV出力をサポートする。GAMESPOTの仕様表を参照)に映し出された画面は,従来のゲーム機とはひと味違ったものになるかもしれない。

 なお,吉岡氏はセミナーの中で,Xboxの開発状況にも触れた。既にNV2Aは設計を完了し,間もなくファーストシリコンが出荷されるという。


展示されていたXboxの開発環境。i815ベースのインテルマザーボードに独自のグラフィック,サウンドボードなどが搭載されている。グラフィックボードに載っているチップは「製品版の1つ前のもの」らしい

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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