News 2001年4月6日 10:08 PM 更新

春の日差しはことのほか強く,むき出しの光ファイバーは眩しかった(1)

NTT地域会社の「光・IP通信網サービス」(仮称)導入記。敷設までの道のりはやっぱり長かった。

 やっと光が差してきた,と実感する。地域は限定されるにせよ,FTTH(Fiber To The Home)が筆者宅にやってきた。NTT地域会社の「光・IP通信網サービス」(仮称)という試験サービスだ。この名称はまだ正式名ではないので,以下はこのサービスをFTTHと略記することにする。2000年末に発表されたこのサービスの工事・開通はこの3月にズレ込んだが,とりあえずFTTHは実現したことになる。紆余曲折はあったものの,2000年度中に間に合って開通したことは無条件にうれしい。

開通までの長い道のり

 思えば今回も開通までの道のりは長かった。ADSLの時もそうだったが,新しいサービスを開始したばかりの大組織は,その硬直化を露呈してしまう。

 2000年12月26日,早速FTTHの申し込みをした筆者は,「集合住宅メニューしか選べません」と言われたものだ。なるほど筆者宅は集合住宅だが,4階と5階に住んでいて,大家みたいなものだ。しかしNTTの女性担当者は,「電話も全部光ファイバーの中に入れる,建物単位ですべての電話は光に集約,現在あるADSLは撤去,集合住宅メニューしか適用されない」と確信に満ちた口調で言い張る。そんな方針には無理があると言っても理解してくれない。舌打ちしつつ,独禁法違反でNTTを訴えてやろうかとさえ思ったほどだ。

 明けて1月,知り合いの編集者が2人,突然筆者宅を訪れた。NTT東日本にインタビューした帰りだという。歩いて数分の距離にNTTが引っ越してきてしばらく経つ。NTT広報は妙に弱気らしい。「一民間企業に過ぎない私どもに風当たりが強くて参ってしまう。それにフレッツ・ADSLの申し込みが押し寄せて戸惑っている。当初は一月に100件と予想していたんです」と,世間知らず丸出しとか。

 「そうそう,例の光の件ですが,NTTは方針を変えましたよ。電話は光IPに同居させないし,集合住宅でも大家のOKがあれば高速メニューもいいみたいです」と編集者が当たり前のように言う。彼らは朗報をもたらしにやってきたようだ。本当か,と念を押す筆者に対して「2回も確認しました」との答え。

 つくづくNTTとは相性の悪い筆者だが,素知らぬ顔で再度116に電話。うって変わってすんなり申し込みが受理され,安堵でチカラが抜けた。

大盤振る舞いの工事費

 さて工事日当日,実際の引き込み工事はあっけなく開始された。NTT東日本から背広の2人,工事会社から4人,ガードマン1人,ゴンドラ車(高所作業車)を動員して行った。実働部隊は4人,二手に分かれて作業する。200メートルほど離れた幹線道路には,地下から東電の電柱に沿って光ケーブルが立ち上げてあった。そこから筆者宅方向に延ばす作業に2人。

電柱から光ファイバーを引く

高所恐怖症ではこの仕事はできない

 あとの2人は筆者宅への引き込み作業と光ファイバーの端面処理等にかかる。あらかじめ筆者のほうで頑丈な金属フックを建造物に2カ所打ち込む工事を行っておいたので,作業は順調に進む。これは2月のNTT側との事前打ち合わせの結果,筆者負担の別途工事で施工した。もちろん建物への穴開け+パイプ埋め込みも筆者側の負担だ。つまり,光引き込みに伴う各種工事──フック取り付けや穴開け──は,今回のNTT工事料金に入っていない。

 これらは,自分で業者を頼んで事前に行う必要がある。言い換えれば,個人宅への光ファイバー引き込みは,持ち家もしくはそれに準じる建物でないと難かしい。アパートやマンションではADSLが主流になるのもうなずける。有線ブロードネットワークスも同じことで悩むのかと思うと,光引き込みは前途の多難さが予想される。

 「この工事,3万円ですよね。ウチの会社がいくらで受けているか知らないけど,NTTは元が取れないはず」と,その辺で見かけたら髪の毛がオッ立った妙なニーチャンにしか見えないけど,ヘルメットをかぶればキビキビした動きとあいまって,不思議に凛々しい作業員が笑いかける。

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