News 2001年4月6日 10:08 PM 更新

春の日差しはことのほか強く,むき出しの光ファイバーは眩しかった(3)

損失検査

 開通を前に(ONUの取り付け前に)ケーブルの特性を検査する。光ファイバー内部ではレーザー光が全反射しながら進む。急角度で折り曲げると反射角に乱れが出て損失が増える。だからゆったり曲げなくてはいけない。光コネクタや接続点でも損失は生じ,信号が減衰する。受け持ち電話局から筆者宅まで信号の減衰具合を測り,それらが許容範囲かを見るわけだ。

コネクタ接着剤。火気厳禁

 検査機械は小さい。中継の光コネクタを繋ぎ,あっという間に計測は終わったが,損失が大きいという。紙粉の出ない不織布をアルコールに浸し,光コネクタを外して拭き,再度計測。今度はOKらしい。ゴミの影響だった?

光ファイバー損失検査機

再度計測,「許容範囲」の数字が得られた

ONUの取り付け

 Optical Network Unit(光加入者線ネットワ−ク装置・宅内装置)をONUと呼ぶ。ONUの役割を簡単にいうと,光ファイバーとイーサネットを変換する装置だ。詳しくいうと,今回筆者宅に入ったのはS-ONUで,戸建住宅用の単独タイプ。SはSingleの略だろうか。ほかにX-ONUというものがあり,こちらは集合住宅用。

導入された沖電気製のONU

 ONUはNTTからの借り物だ。取り付けにはNTTの別部隊がやってきた。新しい機械を見ると分解せずにはいられない筆者は,彼らが帰ったあと,迷うことなく分解に着手する。沖電気製。中を見ると電話線用コネクタがある。今回,電話はサポートされていないから,やはりNTTは当初,電話サービスも光の中に入れたかったことがみて取れる。停電時の電話用バックアップ電池を入れるスペースも盲腸のように残っている。しかし状況の変化の中でネットワークだけを優先したNTTの苦渋の選択を理解し,「競争」という言葉が浮かぶ。

借り物でも迷うことなく分解する。左側上部のスペースが電話用バックアップ電池が入るはずだった場所

グレーの部分が電話線用コネクタ。ケースには電話線を外に出す穴も用意されている

 あとはもう簡単だ。ONUのイーサネット・ポートからそのままパソコンにつなぐか,ルータを経由するかを決めるだけ。注意すべきはPPPoEがらみで,ネットワーク・カードの一部に相性の悪い製品があること,そしてルータは速度のボトルネックになりやすいこと,くらい。ローカル・ルータは何台も持っているが,中にはPPPoEのネゴシエーションでうまく接続できない製品もあった。

工事は困難

 光ファイバーは,ノイズや落雷の影響も受けないし,高速・大容量通信の本命といわれて久しい。xDSLは信号が電話線そのものを通るから,ISDNとの干渉やさまざまなノイズを考慮しなくてはいけない。CATVも,ユーザー宅への引き込み部分は銅線で構成される同軸ケーブルなので,雑音との戦いが残る。それらに対し,光は電磁的なノイズを考えなくていい上に,これらのうち最大速度が見込めることが大きなメリットだ。

 反面,引き込み工事は困難を極める。電話線は直角に曲げられるが,光ファイバーは大きな半径を描いて曲げなくてはならない。だから電話線とは別の引き込み工事が必要となり,新たに建物に穴を開ける場合が大半だ。しかし電話ほど生活必需品ではないので,建物の持ち主はいい顔をしない。世間の認知度がまだ低いので,工事の許可がもらえないこともある。建物にキズを付けたくないからだ。オフィスビルなら別だろうが,借家やアパートではCATVを引く以上の困難さがある。

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