News 2001年3月2日 11:58 PM 更新

徐々に見えてきたNTTのFTTH本格サービス

FTTHの試験サービス終了が数カ月後に迫り,本格展開で導入される100Mbpsサービスの概要が見えてきた。

 NTTのFTTH本格サービスの姿が,徐々にではあるが見えてきた。パシフィコ横浜で開催中の「IP.net JAPAN 2001」で講演を行ったNTTの森下俊三常務は,「光・IP通信網サービス」(仮称)の試験サービス終了後,「なるべく早い時期に本格サービスを開始する」意向を示した。また,それに伴い,ベストエフォート型の100Mbpsメニューを検討していることも明らかにしている。

 森下氏の話を総合すると,NTTは当初,2001年秋頃にFTTHの本サービスを開始し,100Mbpsメニューは帯域保証付きの高付加価値商品として提供するつもりだったようだ。


この資料は,昨年11月の「光サービスアーキテクチャコンソーシアム」設立時に披露されたものと同じ。「マーケットクリエーション第II期」とされる最大100Mbpsの環境は,2001年の10月頃に始まっているのが分かる

 新しいサービスを高付加価値メニューと位置付ければ,利益率が高くなるのが当然だ。ただし,ビジネス用途と位置付けるなら,一部ではあっても帯域保証が求められる。つまり,本来なら,NTTのマルチメディア通信サービス(下図を参照)の中で,空白となっている「メガデータネッツ」の右側が,100Mbpsの光ファイバーとなるはずだった。それをNTTは,「フレッツ・光」こと「光・IP通信網サービス」(仮称)の右側へシフトしようとしている。


NTTのマルチメディア通信サービスラインアップ

 この方針転換には,有線ブロードネットワークスのFTTHサービス開始(2月14日の記事を参照)が大きく影響したと思われる。2月の正式発表前には「10Mbpsで5000円程度」といわれていた有線のFTTHだが,蓋を開けてみれば,ベストエフォート型ながら10倍のスピードで5000円を切る価格。NTTの宮津純一郎社長は,「100Mbpsメニューは有線ブロードネットワークスに対抗できる価格」を打ち出しており,この対抗意識がベストエフォート型の検討を後押ししたことは想像に難くない。

 一方,コンテンツ提供で“より現実的な選択”という面もある。森下氏によると「ビデオを中心とするブロードバンドコンテンツは,十数Mbpsのスピードを必要とする。しかし,100Mbpsは必ずしも必要ではない」という。また,NTTの常任理事で情報流通基盤総合研究所長を務める伊土誠一氏は,ビデオコンテンツの品質について「TVと同等のものを伝送しようとすれば,6Mbps程度。さらに,画面多重の場合は100Mbpsくらいの帯域が必要になる」と指摘している。インタラクティブ性が大きな特徴であるネット動画配信で,画面を多重するコンテンツは増えるはずだ。実際,10Mbpsでは,NTTが推し進める「光ソフトサービス」を円滑に広げることはできないだろう。

 これらの条件を総合すると,NTTのFTTH本格サービスは,以下のようになると予測できる。

○広範なユーザー層がターゲット
○回線料金は5000円前後もしくはそれ以下
○100Mbpsのベストエフォート型
○5〜6月に開始

 NTTは,ベストエフォート型にすることで,関連する設備投資を抑えつつ,サービスの早期拡大を狙う。しかしながら,FTTH試験サービスで採用した独自のシェアードアクセス技術は,現在のところ最大10Mbpsのサービス(ワイドLAN)しか提供していない。ファーストワンマイルは100Mbpsでも,中継回線が10Mbpsなどというオチにならないことを期待したい。

IT基本戦略は困難?

 一方,森下氏は,IT基本戦略会議(2000年11月27日の記事を参照)が提示した「2005年までに30〜100Mbpsの超高速アクセスが可能な光ファイバー網の整備を進め,必要とするすべての国民が低廉な料金で利用できるようにする」という目標について,「難しい」との見解を示した。現在使用されている電話回線の耐用年数はおよそ13年といわれており,徐々に光ファイバーへの交換は進むものの,今後数年間で一気に入れ替えるのは現実的ではないという判断だ。

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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