News 2001年1月16日 05:45 PM 更新

FTTHの先陣をきる有線ブロードネットワークス

10Mbpsの光アクセス環境が月額5000円前後で手に入る? 注目のFTTHサービスを4月に開始する有線ブロードネットワークスに現状と見通しを聞いた。

 “ゆうせん”と言えば,誰もが店舗で流れているBGMを思い浮かべることだろう。200を超える専門チャンネルを持ち,J-POPや洋楽はもちろん,環境音楽のチャンネルまで用意されている日本最大の音楽配信サービスだ。その営業母体である有線ブロードネットワークスが,今春からブロードバンドインターネット接続サービスを開始する。それも,光ファイバーを宅内に引き込み,10〜100Mbpsの帯域幅を実現するFTTH(Fiber To The Home)。一般家庭をターゲットにしたメニューでは,料金を月額5000円前後に設定するという。NTT東西地域会社に先駆けてFTTHを普及させようとする同社に,その勝算を聞いた。

実証実験は100Mbpsで

 有線ブロードネットワークスは,昨年10月1日に世田谷区赤堤3〜5丁目でFTTHの実証実験「GATE01」を開始した。子会社のユーズコミュニケーションズがインフラ整備を担当し,有線がコンテンツを提供。回線はすべて100Mbpsとし,専用のポータルサイトからビデオや音楽,ゲーム,カラオケといったコンテンツをダウンロードすることが可能になっている(実証実験のコンテンツについては,別記事を参照)。

 現在は250世帯のモニターを擁し,技術的な問題点の洗い出しを行っている最中だ。同社事業インフラ開発室担当の藤本篤志取締役は,「まだわずかながら,(接続中に)止まってしまうという現象が出ている。現在,原因の特定作業を進めている」と話している。


ユーザー宅に設置されるメディアコンバーター。上り/下りのケーブル2本が接続されている。その横は100BASE-Tポート。「1年前は10万円程度したが,今は2万5000円程度で入手できる。これが実用化へのキーポイントになった」(同社)という。本サービス開始時には,TVへの出力を前提としたSTB(セットトップボックス)型も用意される予定

10Mbpsで5000円前後

 本サービスは,世田谷・目黒・杉並・渋谷の4区を皮切りに4月から開始される予定だ。10月には東京23区全域と政令指定都市にサービスエリアを広げ,初年度14万ユーザーの獲得を目指す。さらに2002年4月を目処に人口30万人以上の都市へと拡大。2003年中には全国の主な都市をカバーし,「2005年中に全国くまなくサービスを提供できるようにする」(藤本氏)という。目標は,3年後に100万ユーザーだ。

 サービスメニューは100Mbpsと10Mbpsの2つを予定しており,特に10Mbpsは,コンシューマーをターゲットとした戦略的な価格設定を行う構え。「最も安いメニューは10Mbpsで5000円前後になる。100Mbpsでも10万円を下回る設定にしたい」(藤本氏)。また,初期コストは「個人宅では3万円が上限と考えている。法人(100bps)も,やはり10万円以下に収めたい」(藤本氏)。

インフラを持つ強み

 有線ブロードネットワークスの強みは,既に音楽配信サービスのケーブルネットワークと顧客ベースを持っているという点だ。有線放送のケーブルを光化するわけではないが,管路(ケーブルを通す路)を確保している点が最大のメリット。同社には,全国16万キロに及ぶ敷設済みのケーブルがある。これと平行する形で光ファイバーを這わせ,束ねる(一束化)ことで,一からケーブルを引くよりも遙かに短い時間と少ないコストでサービスを開始できる。同社の試算によると,当初サービスを行う4区での設備投資額は約25億円,全国でも約4000億円で収まるという。

 また,インフラの共用は,顧客への営業活動においても大きな武器となる。有線放送の顧客は全国に158万軒以上あり,市場シェアは80%を超える。既に有線放送を導入しているマンションや法人などは,サービス開始当初の有望な顧客になるだろう。

 ユーズコミュニケーションズは,12月23日に第三者割当増資を実施し,70億円の資金を調達した(1月10日の記事を参照)。金額はもとより,伊藤忠商事,三井物産,丸紅,ソニー,コンパックといった出資者の顔ぶれを見れば,同社のサービスに対する期待の高さが伺えるだろう。

競合はNTT

 同じく光ファイバーによるインターネット接続サービスを予定している企業には,ソフトバンク系のアイ・ピー・レボリューション(1月12日の記事を参照)があるが,こちらは企業や集合住宅がメイン。個人宅にまでファイバーを引き込むメニューを含め,有線ブロードネットワークスと真っ向から競合するといえるのは,昨年末に「光・IP通信網サービス」(仮称)を発表(2000年12月18日の記事を参照)したNTT東西地域会社だろう。こちらも,現在はビジネスユーザーをメインターゲットにしたを提供しているが,「市場性の調査という意味合いが大きい」(NTT)ことから,コンシューマー市場への展開も早いと見られる。

 現在の光・IP通信網サービスは,最も低価格な「基本メニュー」(10Mbpsを最大256ユーザーで共有)で月額利用料金が1万3000円(別途ISPの利用料金が必要),初期費用が2万7100円。料金の差は一目瞭然だが,NTTはADSLの本サービス移行時に大幅な値下げを行った経緯がある。有線の藤本氏も,「NTTは既に22万キロ以上の光ファイバーを敷設しており,また人材の豊富さなど,体力的な面で脅威を感じる」と話す。今夏にも本格サービスへ移行するNTTが,より低廉な価格設定で,かつ広範囲なサービスエリアを打ち出してくる可能性は高い。

 藤本氏は,「われわれのような事業者は,NTTにない経営スピードという武器を活かし,新しい試みとブランド力で訴求する。NTTの実力を後ろに見ながら,常に1歩リードして顧客を獲得するつもりだ」と,先行する事業者としての意気込みを語った。

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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