News 2001年5月15日 09:23 PM 更新

HDD内蔵TVは主流になるか?──日本ビクターが6月に出荷

日本ビクターはHDDを内蔵したBSフラットワイドTV「NETWORK HDD」シリーズを6月に発売する。こうしたHDD搭載のAV機器は,専用HDDの進歩とともに広がりそうだ。

 日本ビクターは5月15日,ハードディスクドライブ(HDD)を内蔵したBSフラットワイドTV「NETWORK HDD」シリーズとして,32型の「AV-32DD2」と28型の「AV-28DD2」の2モデルを発表した。HDD内蔵型TVは,松下電器産業が先鞭をつけ,ビクターは2社目となる。ただし松下は,今年1月に発表した36型のHDD内蔵TV「TH-36DH100」を未だ出荷に至っておらず,ビクターでは,6月初旬にもNETWORK HDDの出荷を開始して「市場投入は業界初」にする構えだ。

 NETWORK HDDシリーズは,2機種とも20GバイトのHDDを内蔵し,最大20時間の番組を録画することができる。BSチューナーはアナログのみのミッドレンジ機だが,2系統のD4端子と独自のプログレッシブ回路を備えた「BSデジタルハイビジョンレディ機」(ビクター)だという。価格はオープンプライス。店頭では32型が28万円程度,28型が23万円程度で販売される見込み。

TVにHDDを載せる理由

 HDDをTVに搭載する理由は,主に2つある。1つめは,PCユーザーには既にお馴染みの「追っかけ再生」をはじめとする,ディスクドライブのランダムアクセスを利用した操作性の向上だ。NETWORK HDDでは,予め「毎日,毎週録画」を設定しておくと,リモコンのクイックビューボタンで任意の番組・時間をすぐに見ることができる。例えば,「毎朝の天気予報や占いなど,時間の決まっているものであれば,出社前のちょっとした時間にすぐ再生できる。OLなどには需要が高い」(ビクター)という。また,追っかけ画面とライブ画面を同時に楽しむ2画面表示も可能で,とくに1.5倍速のおっかけ再生なら,音声を出力することもできる。スポーツ中継などには有効だ。

 「内蔵型のメリットは,なんといっても操作の簡便さ。突然の来客や電話にもワンボタンで対応できるが,外部HDDレコーダーの場合は,電源の投入やHDDの立ち上げ時間,入力の選択など,煩雑な作業が必要になってしまう」。また,HDDを内蔵したことで,これまでの単体HDDレコーダーに比べ,「余分なケーブルや回路によるロスをなくし,クリアな画質を実現した」のもメリットだという。

 録画時のビットレートは,据え置きデッキタイプの「HD-S1」と同じ。SPモードで平均6.4Mbps,LPモードで平均4.5Mbps,EPモードで3.2Mbps,超長時間のSEPモードでは2.2Mbps。高画質のSPモード(DVD並み)で約7時間,SEPモード(VHSの3倍モード並み)なら最大約20時間分の番組を録画できる。なお,日本ビクターでは,晩夏を目途にHDDの増設サービスも開始する予定だという。容量は40Gバイトで,出張サービスで対応する。価格は4万未満になる見込み。

新しい付加価値として

 HDDを搭載するもう1つの理由は,TVという成熟した市場における新しい需要の創造だ。年間1000万台規模のTV市場だが,その中でワイドTVの比重は下落傾向にある。事実,数年前には年間300万台に上ろうとしていたワイドTVは,現在その3分の1程度にまで下がり,中でも16型,21型などのエントリー〜ミッドレンジモデルはメーカーのラインアップからも外れつつある。ビクターによると「ワイドTVでは,BSデジタルの開始を契機に32型以上の需要が膨らみ,逆に28型未満の製品が落ちている状況。より大型化が進みつつある」という。特に28型以上のTVではプログレッシブタイプが大部分を占め,「今年は,各社が高級プログレッシブ機のラインアップを拡充する。その中で,HDDの搭載は新しい付加価値になる」(同社)という。

 ビクターによると,年末商戦にはBSデジタルハイビジョンチューナー内蔵タイプを投入するほか,BSデジタルのストリームをそのまま記録するタイプも検討中だという。ただし,画質が向上すれば相応のHDD容量が求められるため,こうしたHDDレコーダーの製品化は,ビデオ録画用HDDの大容量化に同期した形で行われる。PC向けのHDDと異なり,民生機にはバッドセクタを読み飛ばして連続的にデータを送出する専用のHDDが必要であり,米Quantumや松下電器産業は,こうしたAV HDDのラインアップ拡充を進めている。

 ビクターでは,「現在の主流は20Gバイトだが,年内にはこれが40Gバイトに移行する。その後も倍々ペースで容量は増えていく」と予測する。画質と録画時間を考慮すると,未だ十分とはいえない家電のディスク容量だが,2002年には80Gバイト以上のものが主流となり,それに合わせて高機能な製品が続々と登場してくるはずだ。

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[芹澤隆徳, ITmedia]

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