News | 2001年7月19日 10:49 PM 更新 |
ZDNN:PINOビジネスの第1歩が,宇多田ヒカルのプロモーションビデオ出演とは,かなり好調な滑り出しですよね。ツクダオリジナルとの提携発表も大きな注目を集めていました。
谷口:非常にラッキーでしたね。あれで一気に認知度が上がりました。でも,ツクダオリジナルから玩具化のオファーがあったのは,もっと前です。確か,2000年秋の東京おもちゃショーの頃でした。
ZDNN:ちょうど,ロボット玩具がブレイクしはじめた頃ですね。オファーがあったのはツクダだけ?
谷口:商品化については何社からか申し入れがありました。でも,その中で「社運を賭ける」とまで言ってくれたのはツクダだけでした。それと,PINOを一過性のもので終わらせないために,すぐ商品を打ち切ったりしないという条件も飲んでくれましたし。
ZDNN:記者会見でも,ツクダの佃義啓専務はPINO型ロボット玩具の紹介に力が入っていました。ベストパートナーというわけですね。
谷口:そうでもないんですよ(苦笑) もちろん,仲が悪いわけではありませんが,基本的に研究所の意思を受け継いで事業を行っているZMPと,売れるものを考える玩具メーカーの間では考え方に違いがあって当たり前ですよね。
ZDNN:具体的にいうとどのような点で食い違いがあるのですか?
谷口:まず,PINOに人間の言葉を喋らせようとしたことですね。ROMに音声データを記録して。ただ,こちらサイドとしては,PINOのイメージを固定化させないために,そういったことはしてほしくなかった。それで折衝の結果,「PINO語」を新たに作ることにしました。それと,どこかのロボット玩具のように顔にハートマークを出そうとしていたので,「それだけはやめてくれ」とお願いしました。
――PINO語。谷口社長によれば,人工知能を駆使し,なかなか技術的には複雑なことをやっているらしいのだが,どう聞いても人間が話している声にエフェクトをかけただけにしか聞こえなかった……。それと,やはりAIBOの流れを汲んで,目玉を光らせるのは玩具メーカーの常套手段らしい。確かに,分かりやすくはあるのだが。ZDNN:でも,ツクダオリジナルによれば1万2000円で“完全2足歩行”するPINO型玩具が登場するらいいじゃないですか。それは技術的に素晴らしいことですよね。
――1万2000円の完全2足歩行ロボット。ロボット業界関係者とこの話になったとき,必ず「絶対できるわけがない」と盛り上がる(記者発表会では開発中のためデモンストレーションが行われなかったため,皆,想像力を働かせているのだ)。ザクのRCですら10万円もするといのに。もちろん,ザクはBB弾を発射するというオプションが付いているが。谷口:……。あれは,ちょっと誤解を生む表現でしたね。ZMPがツクダと共同開発したわけではないのであまり話せませんが,やはり1万2000円ですので,玩具レベルだと思っていたほうがいいです。ソニーやホンダのロボットのように滑らかに歩くわけではありません。PINOもそうですが,あのレベルの2足歩行を実現しようと思ったら,1万2000円じゃすみませんよ。
ZDNN:でも,自律型なんですよね。
谷口:……。プロポがなければ,自律型という人もいますから。
やはりそうだったか。ザクのRCと戦わせようと思っていたのに……。ちなみに,ロボット業界(ロボット玩具業界は除く)では,「戦闘」という言葉はご法度だ。何しろ,PINOは“人間との共生”を目指しているのだから(そのためPINOのデザインでは,人間が恐れないように“か弱さ”も表現している)。それなのに,つい戦わせたくなってしまうのは,ロボットをガンダムと関連付けてしまう個人的なバックグラウンドと関係があるのは間違いない。
ZDNN:PINOビジネスのもう1つの柱である,研究機関向けの事業も好調なようですね。
谷口:おかげさまで,いくつものオファーを頂いています。
ZDNN:職業柄,PCの相場なら分かるのですが,ロボットの相場はどのようになっているのですか。ソニーの「SDR-3X」は将来的に「小型自動車1台分」を目指すと言っていますよね。あくまで目標だとは思いますが。一方,PINOは800万円。現時点で,かなりナイーブなロボットだと聞いていますが。その価格は適正なものなのでしょうか。
谷口:ネットの掲示板では,いろいろと言われているようですが(苦笑)。型を作るとこから,組み立てるところまでの時間,費用や人件費を考えれば,むしろ割安だと思うくらいです。
ZDNN:でも,PINOは秋葉原で売っているRC用のサーボモーターを使っていると聞きましたが。それは,低価格で作れるということではないのですか?
谷口:サーボモーターも,そのまま使うのではなく,こちらでチューニングを行っています。1つの型から作れるPINOの数にも限りがありますし。
――どうやら,“秋葉原生まれ”と言われるPINOでも,制作費用はかなりかかるらしい。ZDNN:それで,研究機関からのフィードバックとしては,どのようなものが期待されているのですか?
谷口:やはりモーター部分ですね。まだ,速度が遅いためにPINOのレスポンスが悪いなどの課題があります。そのため,無理をさせなければいけない動きもあります。いろいろ改良しているのですが,急速に進化を遂げいているというわけではありません。フィードバックを受けて,年内には何らかの成果を出したいと考えています。
──ロボット業界に詳しいある情報筋によれば,北野共生システムプロジェクトでは現在,「詳細は不明だが,もの凄い動きをする2足歩行ロボットの開発に取り組んでいる」という。オープンソースで進化を遂げるPINOと,謎の新型ロボット。2002年3月に開催される「ROBODEX 2002」が今から楽しみである。(文中敬称略)
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