News 2001年9月6日 11:59 PM 更新

過去最悪の犯人はSirCam――10月のXデーにも注意

8月のウィルス届出件数が過去最悪となった。犯人はやはりSirCamだ。このSirCam,さらに10月16日に発病のXデーが控えている。9月に入っても依然衰えを知らないこのウィルスには,なお注意が必要だろう。

 情報処理振興事業協会(IPA)セキュリティセンターは,8月のコンピュータウイルス届出状況を発表した。それによると,2001年8月にIPAに届けられたウィルス件数は2809件で過去最悪。実際に感染したという実害件数は592件に上り,こちらも過去最悪だった昨年11月の数字(546件)を抜き,ワースト1に“輝いて”しまった。ただ,これらの記録も,これから年末にかけて更新される可能性がある。

 ワースト1の“原動力”に“なってしまった”のは,やはり「W32/SirCam」(サーカム)だ。8月に届けられたSirCam被害は1257件にまで拡大し,1種類の月間届出件数としては過去最多を記録した。

 SirCamは,アドレス帳やキャッシュホルダのHTMLファイルなどファイル内に含まれるメールアドレス全てに送信する「大量メール送信」で,感染を広範囲に拡大していく。さらに,ワーム本体に送信者のPCから,ドキュメントファイルなどをランダムに選択して添付するため,個人情報が漏洩してしまう危険性があるやっかいなウィルスだ。

 9月に入った今でも,SirCamウィルスは沈静化していないようだ。シマンテックによると「9月1〜5日というわずか5日間で,すでに世界中から1611件のSirCam被害が報告されており,まだまだ予断を許さない」。実際,毎日山のようなメールが送られてくる編集部にも,いまだにたくさんのSirCamウィルスが送られて続けている。

 昨年は,年間ウィルス届出件数が1万1109件となって前年(1999年)の3645件から大幅に増加したことが話題となった。しかし,今年は昨年よりさらに状況は悪化しており,7月末の時点で1万1307件と,すでに昨年を上回っている。

 過去最高の届出件数となった8月を含めると,累計の届出件数は1万4116件。昨年の月別推移をみると,ウィルスの届出件数は年末に向かうにつれて飛躍的に伸びており,その勢いが今年初頭まで続いた。今年もこのペースでいくと,2万件の大台を超えるのは時間の問題だ。


2000〜2001年のウィルス届出件数の月別推移

 しかも,来月はSirCamのXデー「10月16日」が訪れる。SirCamは,大量メール送信のほかに「ファイル削除」という悪質な処理を行うが,この発病する日が10月16日なのだ。発病すると,Cドライブの全てのファイルとディレクトリを削除されてしまう。

 ただ,例え感染したマシンに10月16日が来ても,発病する確率は20分の1で,しかも日付のフォーマットが「Day/Month/Year」の形式であるという条件が加わる。これは欧米では一般的な形式だが,日本では馴染みがないため,日本での発病の確率は低いとみられている(例外として,ワームに“FS2”という文字列を含むファイルが添付されていた場合,無条件にその場ですぐ発病する)。

 なお,ウィルスが猛威を振るっている状況を踏まえて,IPAでは全国の経済産業局との共催で,コンピュータウイルス対策/不正アクセス対策についてのセミナーを開催していくという。開催日は10月24日から11月29日までで,大都市の県庁所在地を中心に全国13カ所を会場に行われる。

 職場や家庭でネットワーク接続のコンピューターを利用しているエンドユーザーを対象とした「エンドユーザコース」 と,ネットワーク・サーバ管理者を対象とした「管理者コース」に分け,情報セキュリティ対策の意義やコンピュータウイルス被害の現状と対策管理,コンピュータ不正アクセスの現状と対策などを紹介する。参加費は無料で,1会場当たりの定員は100〜300人となっている。

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関連リンク
▼ 情報処理振興事業協会(IPA)セキュリティセンター

[西坂真人, ITmedia]

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