News 2001年9月20日 03:11 PM 更新

次期Crusoeの動向は?――Transmeta最高技術責任者にインタビュー(2)

 しかしこの点については,Transmetaの決算報告を控え,一切コメントすることはできないとした。「景気動向,出荷数,シェアなどの見積もり,株価などに関連する一切のコメントは,この時期に行うことができない」(Ditzel氏)。

TM5800を2方向のベクトルに分化

 TM5800採用製品がこれから登場しようとしているタイミングだが,すでにTransmetaは2002年の後半にリリース予定の256ビットVLIWアーキテクチャをアナウンス済みだ。

 命令長を2倍にすることでパイプラインが増加し,最適化次第でパフォーマンスは大幅に改善する。

 Transmetaでは2〜3倍の性能になると話しているが,これは実行時,動的にソフトウェアで繰り返し最適化を行うことで速度が向上するCMSならではの見積もりだ。通常,ハードウェアでパイプラインへの振り分けを行う場合,これほどの性能向上を見込むことはできない。

 Ditzel氏は「256ビットの次世代Crusoeは,来年後半に量産出荷を行う」と話す。同席した関係者は補足として,2002年中に最終製品へと搭載するには半年以上前にはサンプル出荷を行う必要がある,として,2002年前半のサンプル出荷開始を示唆した。256ビット次世代Crusoeコアのトランジスタ数は,現行Crusoeのおよそ2倍,モバイルPentium IIIの半分になる。

 そしてもうひとつ,256ビットとは異なる別のCrusoeを用意する。それは現行Crusoeと同じ128ビットアーキテクチャを採用する製品で,TM5800/800MHz〜1GHzと同等の性能を維持しながら,より消費電力を下げた製品となる。

 つまり,PC向けのCrusoeは来年前半に投入する高クロック版のTM5800をベースとして,性能をそのままに消費電力を下げていく製品と,消費電力を維持しながら性能を向上させる製品,2方向へと分化していくことになる。

トランジスタ数の少ないCrusoeは,微細化が進むほど有利

 Transmetaは1年前から現在まで,一貫してモバイルPentium IIIに対して,パフォーマンスあたりの消費電力が低いことをアピールしてきた。しかし,きょう体サイズに強い影響を与える熱設計電力(TDP)は低いものの,平均消費電力では大きな差を付けられずにいる。加えてIntelが2003年の前半に,省電力に特化した新しいプロセッサコアのBaniasを出荷すると発表した。

 これまでクロック周波数一辺倒だったIntelが,省電力というベクトルに対して本気で取り組む姿勢を見せたことは,Transmetaにとって脅威ではないのだろうか?

 「我々はBaniasがPentium IIIベースのプロセッサだと考えている。おそらくPentium IIIよりもトランジスタは増えるだろう。それに対して,我々が来年後半に投入する256ビットCrusoeはPentium IIIの半分のトランジスタしか必要としない。したがって,リーク電流の点で有利であり,Intelに対して優位に立てる」(Ditzel氏)。

 リーク電流とは,半導体の微細化が進むことで電子が漏れ,流れてしまう電流のことだ。実際,モバイルPentium III-Mではリーク電流の増加により省電力モード時の消費電力増加に対応するため,より低い電圧でスリープさせるDeeperSleepというステートが追加された。トランジスタ数が多いと,チップ全体のリーク電流の量が多くなるため,Crusoeが有利になるというわけだ。

 あくまで仮定の話だが,256ビットCrusoeが本当にTM5800の2〜3倍の性能をたたき出せるのであれば,モバイルPentium IIIはもちろん,1.4GHz程度と言われるBaniasと性能面で戦いながら,回路規模の小ささを活かしてより低い消費電力を実現できる。

 (もっとも,現在のところは机上の空論でしかない。各部のクロックをストップさせると同時に電源を落とすなどのテクニックでリーク電流に対応できるかも知れないし,IntelとTransmetaが同じレベルの製造技術を使えるかどうかも予想できないからだ。省電力性能は複合的な要因によって決まるものだ)。

 「モバイルPentium 4は省電力の点で全く競合しない上,モバイルPentium IIIやBaniasでさえ256ビットCrusoeの2倍のトランジスタを要する。省電力の観点から見れば,これらは全く脅威ではない」(Ditzel氏)。

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[本田雅一, ITmedia]