News | 2001年10月3日 11:55 PM 更新 |
今年のCEATECでは,有機ELが来場者の関心を集めている。特にホール9〜11のIndustryゾーンでは,シャープ以外の液晶メーカーのほとんどが,有機ELディスプレイを展示していた。(別記事参照)
コンシューマ向け製品が並ぶホール4〜5のHome&Personalゾーンでも,人気は有機ELを応用した開発商品。特に,13型のフルカラー有機ELディスプレイを参考出展しているソニーのブースは黒山の人だかりができていた。このディスプレイは,初日から話題になっていたが,2日目には噂を聞きつけた来場者がさらに押し寄せ,順番待ちをしなければ製品を見れないほどだった。
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人・ひと・ヒト……のソニー有機ELコーナー。閉場まで黒山の人だかりが絶えなかった |
このディスプレイがそれほどの評判を呼んだのは,有機ELとしては大画面となる13型を出展している点と,画面の明るさ(輝度の高さ)だろう。
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有機ELで13型という大画面で明るい画面 |
実は,この13型の有機ELは,今年2月7日に技術発表されている(2月7日の記事参照)。しかし,今回出品した製品は「部品から全て作り直した。2月発表の製品とは別モノ」(同社)だという。
画面の明るさは,パネルで示された仕様によると,輝度は300カンデラ/平方メートル“以上”。だが,実際に見た感じでは,500カンデラ以上は出ているのではと思うほど,非常に明るく鮮やかな画面が映し出されていた。
展示会用として輝度を高めているのでは,と担当者に尋ねると「これでも輝度は抑えている。まだ明るくできる」との答えが返ってきた。
有機ELは大画面化が難しいとされ,これまで携帯電話やPDAといったモバイル向けのディスプレイとの見方があった。今回CEATECに有機ELを出展しているメーカーも,2〜5型が中心となっている。
そこにソニーが13型を持ってきた。ここまでの画面サイズになると,ユーザーの関心は「家庭用TVとして使えるか」になる。当然,来場者の質問もそこに集中していた。
ただ13型という大きさは,有機ELディスプレイとして考えると画期的な大きさだが,家庭用TVとなると話は別だ。その点を尋ねると「技術的には30型まで対応できる」と頼もしい答が返ってきた。これなら,“ポストTV”として十分な大きさだ。ブースでは,激流を下るカヌーや打ち上げ花火といった動きの速い映像を来場者に見てもらい,TVとして使えることをアピールしていた。
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激流を下るカヌーなど動きの速い映像で,ポストTVをアピール |
残る問題はディスプレイの寿命と価格だろうか。素子を発光させる“自発光”方式の有機ELでは,バックライト方式の液晶と比べて寿命が短くなってしまうのが弱点だ。さらに自発光方式は素子の経年劣化による輝度低下も心配される。同じ自発光方式のプラズマTVでも,同様の問題が取り沙汰されている。
この点についてブース担当者は「現在,検証中で答えられない」と言葉を濁した。別メーカーの話によると,「有機ELの寿命は,現時点の技術では,もって5000時間ぐらい」だという。もし,ソニーのそれも,これとそう変わらないレベルだと仮定すると,利用時間の長いTVとしてはかなり致命的な欠点になる。いずれにせよ,寿命を伸ばすことは,「有機ELをTVに使う」ことにとって,重要な課題となりそうだ。
また,薄型TVという分野にはライバル技術も多い。ソニーでは有機ELディスプレイの実用化を2003年中としているが,その頃には薄型TVとして実用化されているプラズマTVが「1インチ1万円」となっている。
このプラズマTVもセルを発光させる自発光方式のため,輝度が高く視野角も広い。現在発売されているプラズマTVでは,600〜800カンデラ/平方メートルという高輝度で,170度以上の広視野角の製品がリリースされている。その上で,薄型・大画面なのだ。
その下の20型前後のサイズで“パーソナルTV”ゾーンを狙うという考えもある。ただ,そのクラスには,液晶TVも控えている。液晶自体も,高輝度/広視野角化が進められており,単純に「明るい,キレイ,薄い」だけでは,競争に勝てない。
黒山の人だかりが証明するように,有機ELに対するユーザーの関心は高く,期待も大きい。だが,ポストTV(ブラウン管)の主役に踊り出るには,まだまだ技術革新が必要――それが良くも悪くも有機ELの「現実」と言えそうだ。
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非常に薄くて視野角も広い有機ELだが,薄型TVのライバルは多い |
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