News 2001年10月12日 07:15 PM 更新

冷蔵庫の中身をテレビに“コピペ”――家電インターフェースの未来はこうなる?(2)

 「PCのGUIを持ってくると言っても,なんでもかんでも試しているわけではないんですよ。例えば,冷蔵庫にポインタを当てて,ボタンを押したら中身がプルダウンメニューで全部出てきても,誰も喜ばないでしょう(笑)」(丸山氏)

 家電を使わない操作もある。壁面にダイレクトで光ポインターを当てると,「家のプロパティ」が表示される仕組みになっているのだ。家のプロパティとは一体? という声も聞こえてきそうだが,これは,家庭にホームセキュリティが導入された時のことを想定したものだという。


壁面を光ポインターで照射すると家の見取り図が表示される。戸締まりの確認も可能。「監視カメラの性能が向上すれば,この画面で家庭内の人の状態を確認することもできるようになる」(丸山氏)

 さらに,家のプロパティを表示している状態で,「TV」というアイコンを選ぶと,壁面に「画面枠を描いて下さい」という表示が現れ,光ポインタによって任意のサイズでTV画面を作ることができる。


壁にTV画面を描く──非常に不思議な体験だ(動画を見る【mpeg1形式/約580Kバイト】

なんでもかんでもドラッグ&ドロップ

 リモコンの数を減らすだけなら,次世代インタフェースと呼ぶのは大げさかもしれない。だが,コピー&ペーストを実現する「文脈操作」こそが,このシステムの神髄ともいえるものだ。

 コピー&ペーストでは,ようやくBボタンの出番がやってくる。「冷蔵庫の内容をテレビに表示する」の例で説明すると,まず,冷蔵庫に向かって光ポイントを当て,Bボタンを押す。ここで冷蔵庫の情報がコピーされる。続いて,テレビに向かってリモコンのAボタンを押すと,冷蔵庫の内容が表示される仕組みだ。


テレビ画面に冷蔵庫の中身が表示されている。

 では,テレビから冷蔵庫までに,電子レンジを経由するとどうなるか? 今度は,テレビ画面に冷蔵庫の中身を使って電子レンジで調理可能なレシピが表示される。さらに,丸山氏によれば,文脈操作を応用すれば,「エアコンを指定して,自分の周囲だけを涼しくするようにする」といった使い方も実現できるという。

 「ハードディスクレコーダがあれば,今見ているテレビをドラッグ&ドロップで録画するなんてことも可能だろう」(同氏)


冷蔵庫→電子レンジ→テレビの順(動画を見る【mpeg1形式/約700Kバイト】

 用途に可能性を感じさせるコピー&ペーストだが,丸山氏によれば,「これが一番,実用化が難しい」という。Next Era Human Interface for Home Networkの研究開発は3〜5年後の実用化に向けて進められているが,「単なるコピペではなく,真の意味で文脈操作を完成させるには,時間が必要」だという。

 例えば,「冷蔵庫→テレビ」だったら,なぜテレビに冷蔵庫の中身を表示することになるのか? という疑問。「表示する」と予め定義してあれば,それはプログラム通りの動きをしているだけで,利用者が文脈を作っていることにはならない。「AIを使って柔軟な対応をさせる方法もあるし,利用者ごとにカスタマイズする方法もある。とにかく,このシステムが最初に世に出るときは,コピペ機能は搭載されないだろう」(丸山氏)。

操作は激ムズ?

 モデルルームでこれら一連の動作を試してみたところ,あることに気が付いた。面白がって,いろいろと試しているうちに,腕が“つり”そうになったのだ。無意識なのだが,つい,テレビにリモコンを近づけてしまうことはないだろうか。それと同じで,エアコンの操作を行うのに,ずっと腕を伸ばしっぱなしになっていたのである。

 特に,エアコンの温度を上げ下げするのに,微妙な感じでリモコンを上げ下げしなければならず,これがまた高度なテクニック(?)を要求する。そのため,上腕筋の当たりに猛烈な負荷がかかり,危うくつりそうになったという情けない話だ。

 直感的なインタフェースは非常に興味深く,扱いやすかったのだが,上下の動きはむしろ,ダイヤル式のインタフェースが付いていたほうが扱いやすそうな印象を受けた。この件については丸山氏も「どこまで直感的なものを追求するか,バランスが重要ですよね」と話しており,ベストな方法を模索中といったところのようだ。

 そういえば,コピー&ペーストで気になったことが1つ。間違って,テレビから冷蔵庫にコピペしたらどうなるのだろうか? 

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[中村琢磨, ITmedia]