News 2001年10月16日 11:19 PM 更新

メガネなし3D映像の秘密は“とんぼレンズ液晶”

スリーディー・コムは,メガネなしで立体映像が楽しめる裸眼立体視液晶モニターを発表した。とんぼの目のような8角形レンズを液晶に装備することで,自由な角度からの立体視を可能にしている。立体視ディスプレイでは破格の実売39万円という価格も魅力だ。

 スリーディー・コムは10月16日,メガネなしで立体映像が楽しめる裸眼立体視液晶モニター「3DTFT-15V」を発表した。“とんぼの目”のようにハニカム構造に並べられたレンズを液晶に装備することによって,自由な角度からの立体視が可能になった。実売想定価格が39万円と一般ユーザーにも手が届く価格となっている。11月1日より発売する。


メガネなしで立体映像が楽しめる裸眼立体視液晶モニター

 同社は,今年8月に2D映像を擬似的に3D化する3D変換アダプタを開発したメーカーだ。(8月10日の記事参照)。

 この3D変換アダプタは,人間の目の「視差」を利用して,2Dの映像を擬似的に3D化するものだ。視差処理をした2画面を,液晶シャッターメガネを使って映像を左右交互に高速に切り替えることで視差を生み出し,擬似的に3D立体映像が楽しめるという仕組みだった。


2D映像を擬似的に3D化する3D変換アダプタ

 このようにメガネを使った立体視システムは,以前から数多く開発されていたが,今回の裸眼立体視液晶モニターは,このようなメガネを必要としない点が特徴だ。

 メガネなしの3Dディスプレイは以前からさまざまなメーカーが取り組んでおり,日本では特に三洋電機が数年前から力を入れている。今年9月には,課題だった立体視可能範囲を従来比3倍にまで拡大した「メガネなし3Dディスプレイ」を発表し,先日開催されたCEATEC JAPAN 2001でも出展していた。

 ディスプレイを使って立体視を実現するには,左右で異なる像を表示する必要があるが,通常は左右の像の位置が固定されるため,ユーザーの目の位置も固定する必要がある。

 展示会などで3D映像を体験した人なら分かるだろうが,「この位置で見ると立体に見えます」という具合に,立ち位置を固定しないといけなかった。これでは,とても実用レベルとは言えない。

 三洋電機などはこの問題を解決するために,センサーで検知したユーザーの位置に応じて像を表示する技術を用いて立体視可能な範囲を広げる努力をしている。しかし,この方法では装置が複雑になるのに加え,多人数では立体視を楽しめない点が課題だった。

 今回の新製品では,液晶表面の特殊加工によって,あらゆる角度から見ても視差を発生させることに成功した。液晶2ピクセルに1個の割合で,半円型のレンズを取り付けたフィルターを液晶表面に装備している。「レンズの形は,厳密には8角形になっている。つまり,とんぼの目のようなハニカム構造になっている」(同社)。

 この“とんぼレンズ”によって,左右の目の視差がレンズ角度に対応し,自由な角度で立体視を可能にしているのだ。この方法なら,自由な位置で,しかも多人数で立体視が楽しめるというわけだ。


とんぼの目のようにハニカム構造で並べられたレンズによって,自由な角度からの立体視が実現した

 もう1つの注目点はその価格だ。医療現場などで実用化されている立体視ディスプレイは,現時点では価格が200万円以上する商品ばかりで,個人ユーザーには手が届かないものだった。しかし3DTFT-15Vは,実売で39万円と一般ユーザーが手に届く価格となっている。「裸眼立体視システムとしては,画期的な価格」(同社)。

 発表会では,PC用ゲームだけでなく,家庭用ゲーム機やDVDソフトの映像を立体視に変えるデモが行われていた。3DTFT-15Vはビデオ入力を装備しているため,PCゲームだけでなく,DVDやVTRの映像でも3D化できる。「3Dポリゴンを駆使した最近のゲームでは,ソフト開発段階から3D視差成分が含まれているケースが多いため,より立体視効果が強まる」(同社)という。

 実際に画面を見てみると,確かにゲーム画面の方が立体感がより表現されていた。ラリーゲームの画面では,前方からこちらに飛び出してくるような車の臨場感がリアルに表現されていた。メガネを装着した立体視システムでは,すでに実現されていた映像感覚だが,それを裸眼で見るので,その開放感はメガネを利用する方式の比ではない。シャッター方式のメガネは特有のちらつき感があるが,メガネを使わない今回の液晶ディスプレイでは,それも皆無だ。


ラリーゲームの画面。飛び出すような臨場感が写真では分からないのが残念

 一方,DVDの映画などは,画面に奥行き感が出てくるものの,ゲームのように飛び出してくる感じはない。実は,この辺りの処理は意図的に行われている。3Dというと,どうしても“飛び出す映像”を想像するが,「遊園地やテーマパークにあるような飛び出す映像は,異次元の世界。長い時間見るには不向き」(同社)との考えからだ。


DVD映像は,飛び出すというよりも奥行き感が増すという印象

 財団法人テレコム先端技術研究支援センターがまとめた「情報通信研究開発基本計画」によると,2005年には,立体視テレビ放送が実現すると予測している。

 SF映画やアニメ,小説といった世界の中でしか語られなかった3D映像が,当たり前に見ることができる日も近そうだ。

 裸眼立体視液晶モニターの主な仕様は以下の通り。

製品名 3DTFT-15V
液晶 15型アクティブマトリックス方式TFT液晶
解像度 最大1024×768ピクセル
色数 1600万色
サイズ 384(幅)×360(高さ)×170(奥行き)
推奨PCスペック Pentium III 500MHz以上
3Dサポート Direct3D,Winx3D,Wiked3Dなど
インタフェース アナログRGB×1,ビデオ入力(S端子)×2,コンポジット×2,RS-232C×1
重さ 4.8キロ
価格 オープン(実売39万円)
発売日 11月1日

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[西坂真人, ITmedia]

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