News:速攻レビュー 2001年11月30日 07:13 PM 更新

速攻レビュー:「MSI K7N420 Pro」――nForce世界初搭載マザーの実力は?(3)

 設定できるFSBクロックは,100/105/111/114/133/137/140/145/147/154/157MHzという11段階。さらに,それぞれのFSBクロックに対して,メモリクロックの設定が2倍と2.66倍の2種が用意され,合計22通りの設定が可能だ。


BIOSでのFSB設定(拡大画像

 またCPUコア電圧に関しても,標準設定に加え,-0.05V/-0.02V,+0.02V/+0.05V/+0.1Vと,計6通りの設定が可能となっている。

 ちなみに,同社のオリジナルオーバークロック用ユーティリティである「Fuzzy Logic III」は,現状では本機では動作しない。nForceはPLLチップを内蔵しており,他のPLLチップとは制御方法が異なるためだ。

 ただし,倍率変更機能は搭載されていないため,オーバークロッカー向けの主流の機能をすべて搭載している――という訳ではない。

 新チップセットを搭載したマザーボードで問題となることが多い電源管理機能に関しては,安全策が採られたためか,STR(Suspend To RAM)機能(=ACPI S3ステート)が搭載されていない。

 スタンバイ状態などを頻繁に使うユーザーにとっては残念な仕様となっている。ただしマニュアルではS3ステートへの切り替えが可能と書かれているため,BIOSアップデートで対応できるものと思われる。

 さらに,Windows XPでのUSB検出に関する不具合を避けるためか,USBキーボードのBIOSサポートが有効にできない(設定項目自体はある)。改善が可能であれば,ぜひとも改善を望みたい。


項目はあるものの,USBキーボードのBIOSサポートは有効にできなかった(拡大画像

PCシステムのコストパフォーマンスの概念を変える強烈なインパクト

 実際に動かしての感想は,nForceが“額面通りの性能を発揮して動く”ということへの驚きに尽きる。詳しいベンチマーク結果は省くが,ビデオ機能統合型チップセットにおいて鬼門とされていた「Quake III Arena」や「3DMark2001」といった3Dゲームやベンチマークが,難なく動作する。

 以前のビデオ統合型チップセットでは,速いか遅いかはともかく,画面表示の品質さえ問題のあることが多かったのだが,このマザーは性能も速度も,十分“GeForce 2 MX並”と表現することが可能なレベルとなっている。

 これは正直,期待した以上のものであった。「初物でも,実際に登場した製品は額面通りの性能を発揮する」という,NVIDIAブランドのパワーは,チップセットでも健在のようだ。

 オーバークロック性能に関しては,Athlon MP 1.2GHzを使用した筆者の環境では,CPUコア電圧を+0.1Vに設定し,内蔵ビデオを使うことでなんと最高(FSB157MHz/メモリ304MHz)まで達した。この状態で,3Dmark2001の動作やMPEG-4エンコーディングも可能であった。

 ただし,ビデオカードを装着した場合は途端に耐性が下落した。GeForce 2 MXやGeForce2 Proを搭載したカードなどいくつかで試したが,すべてFSB140MHz程度で安定動作の限界に達してしまった。このあたりは,海外のハードウェア検証サイトなどで噂されていた通りのようだ。

 また,搭載メモリの構成に関しても,マニュアル上ではいくつかの制限があるものの,筆者の環境では制限外の仕様でも動作した。しかも,その構成は非常に柔軟だ。


メモリソケット。筆者の環境ではメモリ構成は実に柔軟に対応した(拡大画像

 たとえば,マニュアル上では記載されていないDIMM1枚のみの構成でも,筆者の場合(256MB DIMM,両面実装品を使用)では問題なく動作し,あまつさえどのメモリスロットに装着してもOKだった。また,マニュアルでは不可とされている“すべてのメモリスロットに両面実装のメモリを装着する”構成も可能で,256MB×3=756MBの状態で問題なく動作した。しかもこの状態でも,上述したFSB157MHzで難なく動作してしまう。

 総じて,K7N420Proの評価としては,BIOSの機能の積み残しなどで出荷を急いだ節もあるものの,nForceという優秀な素材を活かすマザーボードに仕上がっている。最初の製品としては悪くない出来といえるだろう。ただし,マニュアルやBIOSなどの整備は是非とも望みたい。

 しかしこの製品を触って感じるのは,そうした細かな点よりも,「パワーユーザーが普通に使う環境でさえ,ついにマザーボードの機能でほとんど満足できるようになった」という衝撃だ。

 これはnForceの特徴からは十分予測できた点ではある。しかしそれでも,実際に動かしてみると,ビデオだけでなく,サウンドも(こちらは若干ノイズが目立つのが気になるが),ネットワークも,すべてにおいて十分な性能なのである。

 これだけの威力を持った製品が,安価なショップでは2万3000円程度で購入できるのだ。これがいわゆる“初物価格”である点を考えると,これからのPCのコストパフォーマンスというものを痛烈に考えさせられる。

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[橋本新義, ITmedia]