News 2001年12月31日 04:13 PM 更新

“自作派”に捧げる「CPU&チップセット」回顧と展望〜2002年展望編(3)

 これは,必ずしも悪い意味で言っているのではない。正確に言えば「基本設計レベルでの完成度があまりにも高い」ため,この第一世代では「メモリの差以外で性能を向上させる余地があまりない」のだ。

 しかし,過去の例を見ると,日本のショップでマザーボード売場が盛り上がるのは,「ベーシックなチップセットの新製品が登場し,それが従来にないほどの性能を持った場合」に起こる。

 たとえば最近では,AthlonではDDR SDRAM+AMD-760チップセット,Pentium IIIではPC133 SDRAM+i815チップセットの登場時がそうだった。重要なのは,双方ともメインストリームでありながら,プラットフォームごとの最高性能の(または最高性能ではないがそれに近く,性能差として妥当な価格低下を実現した)製品であったという点だ。

 新技術を搭載していても性能が劣っているのでは,市場はまったく盛り上がらない。これは過去の事例が証明済みだ。

 その点から見て,P4は非常に異例の存在となる。Intel純正チップセットでさえ,CPUと同時に登場した第一世代の製品で,しかも1年も前の製品がいまだに最速を誇っているからだ。そう,i850である。

 それも,現時点で最高速を続けているだけなら,まだいい。ところが,現在判明している情報を見る限りでは,2002年を通しても,i850(およびマイナーチェンジ版と予測される製品)を超える製品が登場しない可能性もありそうなのだ。最悪の場合,i850を使用しているユーザーはCPUが登場して2年になるにも関わらず,それを超えるチップセットが出てこないという事態になってしまう。

 現在のところチップセットの高速化の大きなトピックは,使用するメインメモリの帯域となっている。最新はPC2700 DIMM(DDR333メモリ)だが,これは既にSiS645が対応を済ませている。

 これは,DDR333以上に高速なメモリ(現時点ではDDR400と噂される)が登場しない限り,Direct Rambus DRAMか,NVIDIAのnForceシリーズチップセットのように,DDR SDRAMをデュアルチャンネルで使わなければ,大きな性能向上はほとんど見込めないことを意味している。

 チップセットの処理速度でもうひとつ重要なのは,CPU側のインターフェイスの速度だ。この部分で新技術が開発されたのであれば,Intelがi850を世代交代させてもおかしくはない。

 現実問題として,i845+DDR SDRAMという組み合わせは,i850にはかなわないながら,かなり肉薄している。もし,Intelがi850系列をハイエンドとして位置づけさせ続けるならば,チップセットのみで可能な高速化技術があるのであれば,早くそれを搭載する必要があるだろう。実際,過去のIntelは,こうした場面では改良を行なうことが多かった。

 しかしIntelは,まったくと言っていいほどi850には手を着けていない。こうした点から,筆者は,P4のCPUインターフェイスには,現時点でほとんど手を入れる箇所がない(ないしコストなどの問題から入れられない)のではないかと思える。

 このままで行くと,パワーユーザー向けP4チップセットの2002年のトピックは,現状で噂されているP4のFSB533MHz化や,ICH(サウスブリッジチップ)のハイスピードUSB[USB 2.0]対応などしかないことになる。

 もちろんこれらは,マザーボードレベルでは新製品を出すのに十分な変化だ。しかし,純粋なチップセットのパフォーマンスとは関係が薄い。――こう考えると,i850独走体制は,基本的には2002年も変わらないのではと思えてしまうのだ。

 「最初に登場したチップセットがずっと最高性能で,それ以上性能が上がらない」という状況は,ある意味非常に健全で,ユーザーの投資を保護する面では誉められるべき状況である(登場当初高価であったi850搭載マザーでは,なおさらそうだろう)。だが,マザーボードメーカーやショップ,そして一部のユーザーなどにとっては,あまり面白い状況とはいえないだろう。

 とはいえ,P4チップセットは,まだ第一/第二世代でしかない。そうした意味では,本来はまだまだ硬直化などとは無縁のはずだし,そうあるべきである。願わくば,実力を付けたサードパーティが,2002年はIntelのこうした“隠れ独走状況”を打ち破ってくれるのを期待したいものだ。

AMD用チップセットの動きも小さい?

 AMD用チップセットの2002年も,基本的にはP4のそれと似たようなものになりそうだ。

 技術的に期待できるのは,PC2700 DIMM(DDR333メモリ)に対応した製品の登場だが,2002年1月にSiS740を投入するSiSはともかく,主導メーカーであるVIA Technologiesの動きはあまりない。2002年3月頃に登場すると言われているApollo KT333の登場までは,沈黙を保つようだ。

 また,2000年末ではDDRの立ち上げに大きな役割を果たしたAMDも,PC2700に関してはHammerシリーズまではまったく対応の予定をしていない。

 ただしこれは,ノースブリッジの話だ。サウスブリッジについては,ハイスピードUSBやUltra ATA/133などへの対応,一部製品でのIEEE 1394の搭載といったトピックが多く予定されている。

 そのため,AMD勢マザーボードのトピックは,新サウスブリッジの搭載やチップセット以外の付加機能といったものが主力となるだろう。

旬を迎えるビデオ機能統合チップセット

 しかし,2002年のチップセットがすべて静かなわけではない。しっかりと面白くなりそうなジャンルがあるのだ。それは,ビデオ機能統合チップセットだ。

前のページ1 2 3 4次のページ