News 2001年12月31日 04:13 PM 更新

“自作派”に捧げる「CPU&チップセット」回顧と展望〜2002年展望編(4)

 既に述べたように,P4/Athlon用チップセットでは,現時点の基本的性能は非常に高いレベルで収束している。そのため,チップセット本体の機能ではもはや大きな差別化ができない。結局,ビデオ部分の性能が戦いの焦点となるわけだ。

 ターゲットOSがWindows XPとなった点も,ビデオ機能強化の流れを後押ししている。従来のWindowsではあくまでも“3Dでの特殊画面効果”の範疇にとどまっていたアルファブレンディング機能などが,Lunaによって普通のウィンドウ操作にも要求されるようになったからだ。

 つまり一部ではあるものの,「ビデオ部の性能がGUIの操作感覚に影響する」というWindows 3.1当時の“性能差”が再び戻ってきたわけだ(ただし,Win 3.1の頃よりは差はないし,そもそもこれが誉められたことかどうかは別にしてだが……)。

 こうした要求に加え,都合のいいことに(?),統合チップセットのビデオ性能の水準が大きく向上できるだけの技術的,コスト的な余地ができた。この点では,TSMCなど,半導体製造メーカーの製造プロセスの微細化,安定化が大きい。

 こうした結果,2002年の統合チップセットは,いわば最初の旬――最近の流行で言えば“お祭りワッショイモード”に入ることとなるだろう。

 中でもパワーユーザーにとって面白いのは,現在パーツショップで人気の高いNVIDIAのnForceシリーズ,およびその後継と噂される“Crush 17”(GeForce3 MX的な位置づけの次世代ビデオチップ“NV17”を統合する予定の製品)。それにATI Technologiesが投入を予定している(ただし現時点では時期未定),コードネーム“A3”だ。両者ともAthlon/Duronシリーズ対応製品なので,直接対決となる点も面白い。

 ビデオ機能としては,nForceがGeForce2 MXコア,対するA3はRADEONコアがベースとなっている。現在ではローコスト版として位置づけられるが,アーテキクチャー的には登場当時のハイエンドチップと同一となるものだ(つまり,最初から“低価格品”として作られたものとは一線を画する)。

 ただし,両者のアーキテクチャーには,細かい部分でそれぞれの性能に対する指向や,狙う市場の微妙な相違が盛り込まれている。

 ノースブリッジとサウスブリッジ間の接続などは最たるもので,nForceが理論値で800Mビット/秒もの転送速度を叩き出すHyperTransportを備えたのに対し,A3は汎用性やコストパフォーマンスに優れることから,PCIバスを採用している。

 問題は,現在では未定となっているA3の製品提供が適切なタイミングに行われるかどうかだ。ぜひともATIにはRADEON 8500/7500で見せたタイミングの良さを期待したい。

 一方,P4では当分の間,iSのSiS650SとIntelのコードネーム“Blookdale-G”が並立することとなる。ATIはPentium 4のバスライセンスも取得しており,A3のP4版も用意しているという。現時点ではこちらのチップセットの登場時期も未定だが,サンプル品の出回り方などを見ると,A3の後に登場するようだ。

 それまで比較的高性能なビデオ統合チップセットは,AMD陣営のみに存在することになる。よく言われている通り,現状では高性能なビデオ統合チップセットへの需要がどれほどのものなのかわからないが,筆者としてはこの差は意外と大きいと感じる。少なくとも,当面の間チップセットに関して面白いのはAMD勢だ。

ハプニングに期待したい

 総合的に見ると,2002年のCPUとチップセットは,比較的堅実なものとなるだろう。

 これで「面白いか?」と言われると,残念ながら首を横に振らざるを得ない。2001年のチップセット業界のような面白いバトルロイヤルは,主力メーカーがガチンコで戦い,さらに予想外の嬉しい乱入者が入ってこそ盛り上がるものだ。

 緻密なロードマップに裏付けられた“予定調和的CPU事情”や,ベーシックなチップセットに見られる“隠れた閉塞状態”をどううち破れるかどうか――2002年の“ギョーカイ”が面白くなるにはこの条件を満たせるかどうかにかかっている。

 確かによほどのことがない限りそんなことは難しいだろうし,メーカーにとっては迷惑な話かもしれない。しかし,基本的に“堅実指向”になっている“ギョーカイ”が面白くなるには,こうしたいい意味でのハプニングが欠かせないのも確かである。

 実際の売り上げやマクロレベルでの業界動向には影響はないかもしれない。しかし,“少数派ながら影響大,そして実際の購入額の大きい”自作派ユーザーを楽しませることは,不景気がささやかれている今だからこそ,業界全体にとっても重要なことだと思われるのだが……。

 なにはともあれ,各メーカーには頑張って欲しいものである。

 願わくば,2001年のSiSのような古豪メーカーの復活や,予測もしなかった新参入メーカーなどで,“ギョーカイ”が賑やかになりますように。そして,2002年の読者諸兄とパソコン業界とが,健康で幸せでありますように……。

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[橋本新義, ITmedia]