News:速攻レビュー 2002年3月12日 10:25 AM 更新

速攻レビュー:リコーのDVD+R対応スーパーコンボドライブ「MP5125A」

「DVD+R Basic Format Specifications Ver1.00」が1月21日にリリースされてから約2カ月。DVD+RWアライアンスの中核メンバーであるリコーから,DVD+RW/+Rの両規格に対応した「MP5125A」が発表された。その試作機を入手したので,早速その実力をお伝えしよう。

 リコーが3月11日に発表した「MP5125A」(3月11日の記事参照)は,従来からあるDVD+RW規格だけでなくDVD+R規格にも対応したDVD+RW/+R両対応の製品。もちろん,前作のMP5120A同様,CD-R/RWドライブとしての機能も搭載したスーパーコンボドライブである。


リコーのスーパーコンボドライブ「MP5125A

 リコーでは,今後は,MP5120/5125Aに代表される“スーパーコンボドライブ”を中心とした戦略が立てられており,DVD-ROM+CD-R/RWドライブというコンボドライブ発売の予定は今のところは計画されていない。このため,この製品は,同社の新しいライナップの第一弾とも呼べるべき製品でもある。

 MP5125Aの気になるスペックだが,基本的には,前作MP5120AにDVD+R対応を施したものという感じだ。新たにサポートされたDVD+Rメディアに対しては,「CLV方式」を用いて「2.4倍速」のスピードで書き込みを行える。もちろん,従来からサポートされていたDVD+RWメディアに対しても同様のスピードで書き込みが可能。DVDの読み出しは,最大8倍速である。

 CD-R/RWドライブとしての機能は,MP5120Aとまったく同等で,CD-Rメディアに対して最大12倍速,CD-RWメディアに対して10倍速,読み出しは,最大32倍速となっている。もちろん,バッファーアンダーラン対策機能「JustLink」も搭載され,DVD+RW/+Rで使用されるロスレスリンキングも搭載されている。このため,CD/DVDのいずれもバッファーアンダーランエラーがおきることなく書き込みを行うことが可能だ。

 添付ソフトが豊富なのも前作譲りである。まず,CD/DVD両対応のライティングソフトとして,BHA社のB's Recorder GOLDとイージーシステムズジャパンのDrag'n Drop CD2の2本が付属し,ランダムアクセスライトソフトとしてDVD+RWの機能にフル対応したB's CLiPが付属する。

 また,DVD-Video作成用のオーサリングソフトには,メディオストリーム社の「neoDVD Standerd」,ビデオ編集ソフトには,インタービデオ社の「WinProducer」,ソフトDVDプレーヤにも同じくインタービデオ社の「WinDVD」が添付される。これに,音楽再生だけでなくCDへの書き込みも行えるイージーシステムズジャパンの「earjam Internet Music Player」をあわせ,計7本である。


新たに添付されたneoDVDのソース選択画面。DVビデオカメラからHDDに映像を保存しながらダイレクトにDVD-Videoの作成が行えるだけでなく,バックアップ機能なども搭載されている

neoDVDに搭載されている映像編集画面。チャプターポイントを作成することもできる

高い再生互換性を持つDVD+R

 MP5125Aの最大の特長は,ライトワンス規格DVD+Rのサポートに尽きるといっても過言ではない。

 前製品であるMP5120AでサポートされていたDVD+RW規格は,DVD-ROM互換を保ったままデータを追記したり,バックグラウンドフォーマットなどをサポートしたりしており,確かに便利であった。また,書き込みスピードも記録型DVDの中では最速だった。使い勝手という面では,DVDフォーラム規格に対応した製品よりも,優れていた面も多かったといえる。

 だが,リライタブルメディアであったため,再生互換性という面では前評判の割には低く,DVD-R for General(以下,DVD-R)に対応した他社の製品に比べ,見落としてしまう点があったというのも事実である。

 この点,MP5125Aでは,より再生互換性に優れたライトワンス規格DVD+Rをサポートしたことにより,この欠点を補完している。DVD+R規格は,機械特性的には,DVD-R規格とほぼ同等のライトワンス規格であり,書き込み後の状態は,市販されているDVD-ROM/Videoとの高い互換性を得ることができる。

 実際に筆者の所有しているDVD-ROMドライブやDVDレコーダ/プレーヤや,PS2(SCPH-30000)を使用して読み出しテストを行ってみたが,そのほとんどで読み出しを行う事ができた。もちろん,その中には,DVD+RWメディアの読み出しを行えなかったものも数多くあり,DVD+Rの再生互換性の高さを証明した格好である。

表:再生互換性

メーカー名 型番 +R -R +RW -RW
DVD-ROMドライブ
パイオニア DVD-106
同上 DVD-500M × ×
日立 GD7000
松下 SR‐8587 × ×
ソニー DDU1211 × ×
NEC DV5800A × ×
記録型DVDドライブ
松下 LF-D310 × ×
パイオニア DVR-103/A03
リコー MP5120A
DVDプレーヤ/DVDレコーダ
パイオニア DVR-2000 ×
同上 DVD-535
ソニー PS2(SCPH-30000) × ×
※DVD-RWのバージョンはVer.1.1

 ただし,筆者の調べによると,唯一,パイオニア製DVD-ROMドライブ「DVD-500M」では,DVD-RやDVD-RWメディアを読み出すことができるにもかかわらず,DVD+Rメディアの読み出しを行うことができなかった。もちろん,このドライブでは,DVD+RWメディアもDVD+Rメディア同様に読み出せない。

 この詳しい原因はよくわからない。テストに使用したドライブが試作機であったため,書き込まれた信号の品質が,ドライブから見た場合,良くないという可能性も否定できない。だが,同じメディアが他のドライブでは読み出しが行えることや,DVD+RWメディアをこのドライブに挿入した場合,ドライブに搭載されているLEDがわずか「5秒」ほどで消灯し,読み出す努力をほとんどすることなく認識しないこと(DVD+Rメディアの場合は,読み出す努力をしているが,認識しない),DVD-R及びDVD-RWメディアは何の問題なく読み出せること,の3点から考えると,メディアの書き込み品質やドライブの固体差ということが原因とは,ちょっと考えずらい。

 あくまで筆者の憶測ではあるが,もしかしたら,去年から噂されていたDVD+RWアライアンスチェックによってメディアをはねているのかもしれない。実際にDVD+RWやDVD+Rという規格は,DVDフォーラムとは異なる団体が標準化した規格であり,DVD-ROMドライブメーカーがサポートする“義務”は本来はない。読み出せるようにするかどうかというのは,メーカー側の考え方次第なのである。(あくまでも仮定の話ではあるが)これを逆手にとったDVD+RWアライアンスチェックなどを導入していないことを望むのみ,としか,この点について個人的には言いようがない。(注:この件について,パイオニアより「こちらではDVD+RWアライアンスチェックなど行ってない。たまたま,読めないだけではないか」というコメントを受けています)

4.3GBのデータ書き込みは27分

 次にMP5125Aの書き込みスピードについてだが,2.4倍速という書き込みスピードは,現在のライトワンス規格の中でもっとも高速だ。理論上は,メディア全体に書き込みを行なった場合,約23分ほどで書き込みを終えることができる計算である。

 実際に約4.3GBのデータを書き込んでみたが,書き込みを開始してからすべての処理が終了するまでにかかった時間は,「約27分」ほどであった。内訳は,ソフトに書き込み開始の指示を出してから,レーザーの出力調整などに45秒ほどかかり,実際の書き込み処理が終了するまで(リードアウトを書き終えるまで)に要した時間が,26分強である。

 2倍速ちょうどのスピードで4.3GBのデータを書き込んだ場合の理論値が,約26分であることを考えると,現状でもっとも高速に書き込みを行える製品であることは間違いないだろう。

 ただし,残念な点もいくつかあった。まず,MP5125Aは,DVD+R規格の特長の1つであるマルチセッションを使用したデータの追記には,現状では未対応となっている点である。これは,ドライブ的には,マルチセッションに対応しているが,対応したソフトが付属していないことが原因である。

 同社に確認したところ,マルチセッションによるデータの追記は,現在検証中であり,サポートは,まだ先になるということである。マルチセッションを使用したデータの追記は,すでに読み出しが行えないドライブが存在していることが明らかになっていることからも,その検証に時間がかかっているのだろう。

 MP5125Aそのものは,マルチセッションをサポートしているので,おそらく近い将来付属ソフトのバージョンアップによってサポートされることになるはずだ。

 もう1点,この製品でも,DVD+RW Video Recording Formatを使用した映像の追記及び編集機能のサポートが見送られている点も残念だ。こちらについては,夏ごろを目指し,鋭意開発中ということである。MP5125Aには,DVD-Video用のオーサリングソフトとしてneoDVDが付属しているが,このソフトが対応を予定しているとのこと。MP5125A購入ユーザーには,無償バージョンアップが予定されている。

 MP5125Aは,使い勝手の面などから考えると前作MP5120Aをブラッシュアップしたマイナーバージョンアップ的な存在の製品といえる。しかし,DVD+R規格をサポートすることで,より再生互換性を高め,自由度が広がった製品といえるだろう。再生互換性が重要視される配布用途や重要なデータの保存には,DVD+Rを使用し,使い勝手を重視したい面では,DVD+RWを使用するといった使い方が考えられる。

 記録型DVDドライブは,DVDフォーラムとDVD+RWアライアンスの両者がデファクトスタンダードをめぐり,現在熾烈な戦いを繰り広げている。これまでは,再生互換性の高いライトワンス規格がサポートされていないため,機能的には,不利な面もあったDVD+RWアライアンス陣営だが,MP5125Aの登場によって,機能的に見ても対等の立場で戦えるようになった。この製品が,市場で成功を収めることができるかどうかが,今後を占う上で,1つの鍵になることは間違いない。

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[北川達也, ITmedia]

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