News 2002年3月27日 11:54 PM 更新

「ロボットはApple IIを超えた」――ソニー土井上席常務

28日開幕の「ROBODEX2002」の内覧会には,昨年の2倍の報道関係者が訪れた。記者会見は,ソニーの土井常務がロボット産業に対する思いを語った。

 3月27日,みなとみらい・パシフィコ横浜でパートナーロボット博覧会「ROBODEX2002」が報道関係者に公開された。運営事務局によれば,取材に訪れた報道陣の数は前回の2倍。出展社数は,昨年を上回る28社がエントリーしている。展示会場の一角で行われた記者会見では,本田技術研究所の平井和雄常務取締役が,「社会的関心の高揚が技術を進化させる」と述べ,前回同様,今回も多くの来場者が訪れることに期待を寄せた。


この通り,内覧会には多くの報道関係者が訪れた

パートナーロボットはビジネスとして成立するか?

 記者会見では,ある経済誌の記者から,「今,ロボット業界はどんな場所にいるのか。パートナーロボットはビジネスとして成立するのか?」という質問が出た。ROBODEXに夢を見ない,らしいといえばらしい質問である。

 平井常務,ならびにソニーの土井利忠上席常務の返答は次のようなものだった。


左から2番目が本田技術研究所の平井常務。その隣がソニーの土井上席常務

 「技術先行でやっている段階。ビジネスとして現時点では成立しない。唯一,ペットロボット市場ができているくらいだろうか。ASIMOについてはレンタル事業をやっているが,実際,事業と呼べるほどのものではないかもしれない。市場を作っていくために,いろいろな“トビラ”が考えられる。だが,まだどのトビラを叩けばいいのかは分からない。ただ,長い時間をかけないでやっていければいいと思う」(本田技術研究所・平井常務)。

 「パーソナルコンピュータに例えれば,(エンターテインメント)ロボットは既にApple II(の段階)は超えている。当時,Apple IIが数万台出荷されると世間では新しい産業として認識した。何の役にも立たないエンターテインメントロボットを,高級車1台分の値段で発売しても本当に売れるのかという疑問はある。だが,そこにわれわれは積極的にチャレンジしていく。機能を追求したら,2本足や4本足で歩く必要はないのは分かっている。われわれは,非常な特殊な分野に賭けている。これは賭けだ」(ソニー・土井上席常務)。

 エンターテインメントロボットへの取り組みを“賭け”と断言する土井氏には驚きを隠せないが,その意義について,土井氏は,ROBODEXで講演予定の立花隆氏の言葉を引用しながらこう説明する。

 「立花さんは,ロボット業界について先カンブリア時代的爆発的進化が開始されようとしていると表現しているが,ソニーはそのきっかけを作りたい。ロボット業界は非常に初期の段階であり,多くの企業が参加することが必要だ。その過程で,さまざまなロボットが登場し,多くのロボットが淘汰されていくだろう」。

 世界初のパートナーロボット博覧会としてROBODEX2000が開催されてから1年4カ月。その時,「早ければ10年後にはPC業界を超える」と話していた土井氏。この期間のロボット業界の歩みは同氏にとって,どのようなものだったのだろうか?

 「20世紀後半から,技術の進歩は緩やかになっている。だが,ロボットに関しては物凄い勢いで技術が進化している。そのことは,ROBODEX2001からの1年4カ月の間に如実にあらわれている。世の中は停滞しているが,ロボット産業には勢いがある」(同氏)。

 21世紀はロボットの世紀になる――はっきりとは口にしなかったが,土井常務はそう確信しているに違いない。

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▼ ROBODEX2002公式サイト

[中村琢磨,ITmedia]

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