News | 2002年6月17日 06:21 PM 更新 |
6月19日に開幕する「RoboCup-2002」はロボット競技の世界大会。海外からも多くの大学や研究所が参加する。今回が初めての「ヒューマノイドリーグ」にも、海外チームがエントリーしている。デンマークのマークス・マッキニ―・モラー製造技術研究所が送り込んできた2足歩行ロボットは、全長28センチという小柄な「VIKI」である。
VIKIの特徴は、“既にメンバーが11人そろっている”こと。「日本はロボット先進国だが、まだ数体の開発にとどまっている。われわれは既に、サッカーのチームを作った」(マークス・マッキニー・モラー製造技術研究所のHenrik Hautop Lund教授)。デンマーク代表チームのユニフォームをまとったVIKIが11体。確かに並んでいる。「2050年にサッカーの世界チャンピオンと戦うという目標に近づいた」(同教授)。
11体も用意できたのは、当然ならがら、製造コストがかからないから。「開発費用はかそれなりにかかったが、制作費用は1000ドル程度。まず、11体つくることが前提にあったので、低コストであることは絶対条件だった。そのため、機能を2足歩行に必要な最低限に抑えることにした」(Lund教授)。
例えば、モーターを5個しか使わず稼働部分を少なくしているほか、システムも汎用製品をカスタマイズして組み込んでいる(CPUはAMDのもので、OSにはDOSを採用しているという)。また、ベルトの代わりに輪ゴムを使用したりと、“手作り感”満点なのである。
また、VIKIは、11体いるものの現状ではそれぞれが連係して動くこごはできない。ただLund教授によれば、「将来的には、Bluetoothで相互にやり取りしながら、チームプレーができるようにする」計画もあるという。
写真を見て気が付いたかもしれないが、VIKIには“頭”がないのだ。ユニフォームを脱ぐまでは確かに頭部があったはずだが……。
実は、これもコスト削減の一環。VIKIはカメラでボールを追い掛けるのではなく、赤外線センサーでボールを認識する。VIKI側には、赤外線検知センサーを装備し、“ボール側”に赤外線を発信してもらう。つまり、目がないので、赤外線を発信するボールが必要になるというわけだ。Lund教授によれば、半径2メートル以内であれば、「正確にボールの位置を割り出せる」という。
VIKIは「レゴマインドストーム」
では、“低コストロボット”VIKIの実力はどの程度なのだろうか。
実際に、RoboCupで行う予定の「PK」のデモンストレーションが披露されたのだが……数回失敗した上、最後までまともに蹴ることはできなかった。ボールに足は当たるのだが、文字通り、蹴ったというよりも“当たってしまった”という感じ。さらに、赤外線でボールの位置を割り出すはずなのに、“優しい”Lund教授がボールをVIKIの足元にセッティングしてあげるという一幕も。
ロボットのPKといえば、RoboCupには出場しないが、ソニーの「SDR」が“名手”として有名。ただ、VIKIはまだプロトタイプであり、SDRと比べてしまうのは、少々酷かもしれない。また、Lund教授は「VIKIは、根本的にソニーのSDRやホンダのASIMOとは別のアプローチを取っている」と強調。低コストロボットが必要な理由について解説した。
「VIKIを開発した狙いは、“エデュテインメント”にある。レゴマインドストームのように、教育と娯楽という両方の性質を持ち合わせたロボットだ。単価が安いので、子どもでも簡単に手に入れることができる。自分でプログラムを作ってVIKIを動かせば、ロボットの勉強にもなる。欧州は日本に比べて2足歩行ロボットがそれほど盛り上がっているとは言えないが、われわれの研究所がある南デンマークはロボット工学に関する研究所や企業が集積するロボットのメッカ。誰もが手にとれるロボットを作ることで、人間型ロボットのムーブメントを広げていきたい」(同教授)。
関連記事
[中村琢磨, ITmedia]
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.