News | 2002年6月24日 06:27 PM 更新 |
6月22日。「RoboCup-2002」もいよいよ4日目。土曜日ということもあり、福岡ドームは多くの観客でにぎわっていた。本日より、ジュニアリーグのサッカーがスタート。周りに壁のあるフィールドの中で、赤外線を発するボールを相手のゴールに入れるという競技だ。ハードウェアには、レゴの「MindStroms」やイーケージャパンの「Soccer Robot 915」を使ったものがほとんどだった。でも、センサのつけ方や使い方は各自の個性だし、なによりソフトウェアは自分で書かなきゃいけない。
彼らも、大人の参加者と同じ「Participant」のバッチをつけているのがカッコいい。大人の研究者と接するチャンスもありそうだから、好奇心の強い子どもにはたまらないだろう。
ヒューマノイドリーグは、PK戦の残りと、「歩行」の競技が行われた。各ロボットの身長の5倍の距離の所に立っているポールをぐるっと回って返って来るまでのタイムトライアル。制限時間は15分。その間なら3回まで試技をおこなえる(最も速かったタイムが結果)。PK戦からもわかるとおもうけど、身長の5倍というのはまだまだなかなか大変だ。もちろん、そのくらいは簡単にこなすものもいるけど、かなり苦労するのもいる。でも、苦労しているやつに「がんばれ」って言ってしまうってのも、それはそれで楽しい。
中型リーグ、小型リーグでは、準々決勝4試合と、準決勝2試合が行われた。なんだけど、実は今日はわたしはすっかり中型リーグにはまってしまっていたのだ。Philipsチームを見てたあたりから、はまりかけてはいたんだけど、今日はしっかり見ちゃった。ドラマチックな日だったのだ。
Philipsチームは、金沢工業大学の「WinKIT」チームと対戦。2、3年生主体のとっても若いチームだ*1。そして、優勝候補と目されていたPhilipsが、あっさり負けてしまう。こないだからの不安材料だった無線通信系のトラブルが発生したらしくて、自チーム同士でボールの取り合いをしてしまう。スーパーシュートも発揮するチャンスがない。たまに打ってもあさっての方角だったりする*2。一方、WinKITは派手さはないけれど着実にゴールにボールを運ぶ。5対2で、WinKITの勝利。
予選では思わぬ苦戦をした大阪大学の「Osaka Univ. Trackies 2002」(以下Trackies)は、準々決勝ではイタリア・パドヴァ大学の「Artisti Veneti」と対決。ところが、Artisti Venetiはやはり通信関係のトラブルが発生した模様で、2機しかフィールドに出てこない。しかも、途中でさらに1機いなくなって、ゴールキーバーだけでたたかわなきゃいけない状況になる。キーパーは孤軍奮闘、必死にがんぱったのだけど、後半力尽きた。7対0でTrackiesの勝利。ヨーロッパ勢は通信関係が鬼門の日だったみたいだ。
ドイツ国立技術情報センターと九州工業大学の合同チーム(参加国はドイツになってる)の「GMD-Musashi」は、イランのシャリフ工科大学「Sharif CE」と対決。ごめんなさい。わたし、この試合はちゃんとみていないのだけど、「GMD-Musashi」が圧倒的な強さを見せて6対0で勝利だったそうだ。
あ、そうだ。こないだ「4足リーグ以外にも実況が欲しい」って書いたけど、今日はそれが実現されてた。実況のお姉さん&解説の先生というスタイル。解説の先生は実は既に敗退したチームの方だったりするんだけど、それだけに、状況がよくわかっているのでおもしろい。この解説のおかげで、いまフィールドで何が起こっているのかがわかりやすくなった*3。で、「GMD-Musashi」が強かったっていうのは、その解説で聞いたの。
予選から圧倒的な強さを見せつけている慶應義塾大学の「EIGEN(アイゲン)」は、地元九州大学&福岡大学合同チーム「Fusion」と対戦。観客のほとんどはFusionのサポーターになったんだけど、そのなかでもEIGENは落ち着いた試合をする。ここは、個々のマシンのスピードも速いのだけど、それ以上にマシン同士の連携がすごいのだ。ひとりがゴール前に放り込んでおいて、リバウンドを別のやつがゴールに押し込むなんていうプレイを平然とやる。5対1でEIGEN。
ここで、エキゼビションマッチ。既に敗退したチームの中から、混成チームを作ってのオールスターゲーム。日本代表対ドイツ代表という形で行われた。EIGENに限らず、チーム間ではお互いに通信しながら連携プレイをとっているのが普段のスタイルだ。でも、混成チームでは「ことばが通じない」。そのときにどんなことになるのか、ちょっとみてみたいじゃないかっていうのが、この試合の目的らしい。
結果、意外にもちゃんと試合になった。普段の4対4ではなく、3対3でのプレイだったためにフィールドが混雑しなかったからという解説もあったけど、それにしても、自チーム内のボールの取り合いなんていうのがほとんど起きない。そう考えると、Philipsのあれはなんだったんだろう。
そうだ。後半、そのオランダPhilipsチームがドイツチームに助っ人に入ったのだ。こういう個人プレイでいいっていうときには、Philipsは強い。最初はキーパーとして入ったはずなのに、すぐにフォアードにさせられ(実は、キーパーは苦手なのだ)、スーパーシュートをみせる。観客の歓声を呼ぶシーンだ。さらに、日本ゴールのすぐ前でスーパーシュート。これが、日本のキーパーにあたり、そのまま跳ね返ってドイツゴールに見事に入ってしまう。さらに歓声を呼んだ。ほんとにおいしいところ持っていくなぁ。
さて、準決勝。第1試合は「WinKIT」対「Trackies」。これがものすごい試合になったのだ。ちょっと詳しく書いちゃう。
前評判は、「Trackies」有利(優勝候補の一角だものね)の声が高かったのだけど、前半を終って2対0でWinKITが勝ってる。Trackiesっていうのは、個人主義的なチームなのだけど、今回はそれが裏目に出て、ゴールを奪えない。いい形で行ったかと思ったシュートもキーバーにはばまれる。WinKITのキーパーはほんとに大活躍だった。
後半、Trackiesがすぐに1点かえす。でも、そのあと点がとれない。WinKITはキーパーもなんだけど、ボールを持った敵プレイヤーに対するディフェンスのプレッシャーのかけ方が上手いのだ。敵とゴールの間にうまく入って回り込んで、敵にサイドラインを割らせてしまうというかたちがうまく機能する。これは、このまま逃げ切るかと思った瞬間、Trackiesが右サイドからボールを持ち込んでそのままゴール。大活躍のキーパーも虚を衝かれたのか全く動けない。直後に終了のホイッスル。2対2の同点だ。
延長戦なのかなとおもったら、すぐにPK戦になった。キッカーは、最初、センターサークルの中にいて、ゴールとセンターサークルの中央に置かれたボールを、キックする。いきなりシュートでもいいし、ドリブルで運んでいってゴールするのでもかまわない。中型リーグの場合、キーパーはゴールに対してわりと大きいので、人間のPK戦よりずっとキーパー有利になる。いまのところボールを空中に蹴る技はないしね*4。
人間のサッカーと同じように5本ずつ蹴るけど、変わりばんこじゃなく、一方が続けて5本蹴っちゃう。セッティングが大変だからだろう。
Trackiesの先攻。なんと、5本とも全部キーパーにはばまれる。いろいろシュートのパターンを変えては来たのだけど、WinKITのキーパーはほんとに大活躍だ。
後攻のWinKIT。1本めはキーパーにはばまれる。Trackiesは、1本ごとにキーパーのパラメータの調整を行っているようだ。ひとつでもゴールされたらおしまいだものね。2本目もキーパークリア。しかし、3本め、ボールはキーパーの右側をきれいにすり抜けゴールに入った。WinKITがPK戦での勝利。観客は、このPK戦のあいだ、固唾を呑んで手に汗握って戦況を見守ってた。このころサッカーのワールドカップでは「韓国対スペイン戦」も行われてたはずなのだけど、それに勝るとも劣らない熱戦だった。
第2試合は「GMD-Musasi」対「EIGEN」。半分地元の外国チームと、日本チームとのどっちを応援しようかって観客が悩んじゃう試合。着実性のGMD-Musasi、スピードのEIGENという構図。 開始早々、1分にならないうちに、EIGENがきれいにボールを運んでそのままゴール。観客の歓声があがる(でも、この瞬間にGMD-Musasiびいきになった人も多かったみたいだ)。その後双方得点を重ね、前半終って3-2でEIGENリード。ただ、どうも両方のゴールキーパーの動きに冴えが見られない。予想以上の点の取り合いになりそうな予感がする。
後半、また先手をとったのはEIGENだった。今回EIGENはパスまわしよりも個人技を優先するような手法をとっているようにみえる(みえるだけで、実際はそんなことないかもしれない)。相手のキーパーが隙を作った時に、そこにつけこむ速度も遅い。とはいえ、終ってみれば、6対3でEIGENの勝利。
決勝戦の組み合わせは、勢いのWinKIT対EIGENということになった。どういうことになるのか、楽しみだ。
[こばやしゆたか, ITmedia]
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