News 2002年6月21日 11:32 PM 更新

期待の「ヒューマノイドリーグ」……はまだまだこれから

RoboCupは大会3日目を迎え、いよいよ本格的に盛り上がってきた。待ちに待った「ヒューマノイドリーグ」が開幕した

 “人間のサッカー”では、ブラジルがイングランドを破ったらしいが*1、「RoboCup-2002」も大会3日目を迎え、いよいよ本格的に盛り上がってきた。

ヒューマノイドリーグ開幕

 今日の一番のトピックはこれ。まず、「片足立ち」の試技。出場するロボットが一度にステージにあがり、簡単に紹介をした後、みんなで一斉に1分間片足立ちをした。なかなかユーモラスな風景。ところが、あの「morph 3」の姿が見えない。どうしたのだ。調整が間に合わなかったのかな。

 その後、80センチ級と、40センチ級(ヒューマノイドリーグは身長によって40/80/120センチのクラスにわかれている)のペナルティキック戦の試合が行われた。

 すみません。以前の記事で「キーパーはいない」って書いたんだけど、いました(ルールを聞いたときに勘違いしたらしい)。2チームのロボットがそれぞれキッカーとキーパーになって5回ペナルティッキックを行う。攻守が逆になって、また5回*2。成功した回数を「パフォーマンスファクター」で割ったのがポイントになる*3。パフォーマンスファクターっていうのは、「自律、電源内蔵、自作」の要件を満たしている場合で「1.0」(ゴール数がそのままポイント)。外部操縦だったり、電源が外づけだったり、買ってきたロボットがベースだったりすると、それぞれについてファクターが大きくなり、ポイントが減る。開発の大変さに対するハンディというわけだ。

 キッカーは、ゴールエリアのライン上に置かれたボールから、“自分の身長分”の距離だけ離れてスタート。キックの前にまずそれだけ歩かなきゃいけないわけ。そして、ホイッスルから2分以内にキックできないと、失敗。

 救済ルールとして、キッカーはキックを何度やってもかまわないというのがある。ただし、ゴールエリアに入ることは許されていないから、中途半端なところに転がっちゃったら本当は失敗(今回は、救済の救済で、このときはキッカーがゴールエリア内に入ってキックしたら「ノーカウント」にしてもらえるというのがついてた)。

 ルールはこんなふうにだいたい決まってたんだけど、なんていっても世界で初めてのイベントだ。やってみると思ったようにいかないことがいくつもある。ルールを作ったときに考えたほどには実際のロボットはうまく動けないとか、「それは想定していませんでした」とか。

 このようなときには協議の上、ルールを臨機応変に変更していく。たとえば、「身長分離れたところからスタート」は、その距離を歩いてキックが2分ではできないものがでてきたので、「10センチ離れたところからでもいいよ」なんてことにした。このあたりが「第1回」だ。わたしは、こういうのけっこうすきなんだけど、人によってはもっときちっとしていないといやだって思う人もいるだろうな。

 ただ、80センチクラスと40センチクラスで同じサイズのボール(AIBO用のボール。テニスボールサイズくらいのビニールボール)を使ったのは失敗だ。80センチクラスにはいいのだけど、40センチクラスだとボールの直径がひざより高くなったりする。南デンマーク大学の「VIKI」チームなんか、つま先で蹴るよりもさきに、反対の足のひざがあたってしまうのだ。それを避けるには少し離れたところから蹴らなきゃいけない。そうするとパワーが出ない。ボールがゴールまで届かないなんてことになるのだ。

 いや、ほんとうに、40センチクラスはゴールが決まらなかった。エントリーした3チームのうちゴールを決められたのはオークランド大学(ニュージーランド)の「TAO PAI PAI」だけだ。こいつは身長の割に足が長かったのが幸いした。完全自律で、自分でボールを見つけて蹴るのだから大したものだ。

 で、点数の入らない試合は、見ていてジリジリする。ボールのところまで歩いていけるかどうかで緊張して、キックの体勢に入ると、いま蹴るか、それとも転ぶのかってドキドキする。ボールが蹴られれば、たとえゴールしなくてもカタルシスがあるのだけど、2分たってタイムアウトとか、キックする前にちょっと転がしちゃったなんてなると、ジリジリした気持ちの持っていきようがない。幸い、40センチクラスは遅い時刻のスタートになって、あんまり普通のお客さんはいない状況(つまり、研究者とか、わたしみたいのとかしかいないのだ)*4だったので、なんかみんなでその雰囲気を楽しんでいる感じもしたけど(でも、司会進行役は大変そうだった)。

 ほんとうは、その2分じりじりでタイムアウトってのを見せたいのだけど、それはムービーで見ても、あの場の雰囲気はわかんないだろうからやめる(データサイズでかくなるしね)。


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予選リーグ終了

 小型、中型、4足、シミュレーションの各リーグは、今日で予選リーグが終了。明日からはじまる決勝リーグ出場者が決定した。なんだけど、わたしは今日、ヒューマノイドリーグを見るのに時間をとられちゃって、あんまりしっかり見られてない。

 あ、でも、昨日の流れで、Philipsチームの試合はちゃんと見た。チームの人に話を聞いたりしているうちに、だんだん感情移入してきちゃったのだ。いや、大学の若いチームが多い中で、ここはいかにもメカニックって感じのおっさんが多くておもしろいのだ。

 第1試合は地元・九州工業大学の「KIRC」チーム戦。ちょうど小中学生の観客が集まって、地元チームに大声援。すっかりアウェー状態。

 そのせいか、なかなか点が入らない。0対0で膠着状態。昨日もみられたconfusingがなんか発生しているような気がする。それでも、前半6分、もみ合いの中で押し込むようなゴール。2日ぶりの得点である。

 そして後半1分。目の覚めるようなシュートがきまる。PHILIPSの本領である。


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 一方KIRCも、後半7分に見事な個人技でゴールを決める。地元サポーターはおおよろこび。


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 しかし、ここまで。PHILIPSが2対1で勝利    第2戦はベルリン自由大学(ドイツ)の「FU FIGHTERS」戦。双方決定力不足で、1対1のドロー。なんとか4位で決勝進出を決めた。

 なお、このBグループの1位は、慶應義塾大学のあの「EIGEN」だ。予選リーグ全勝である。ここは、頭のいいサッカーをする。ゴール前に放り込んでおいて他のプレイヤーがカバーなんていう怒濤の攻めがうまい(つまり、チームプレイができているのだ)。守りも堅い。

 一方、Aグループの1位は金沢工業大学の「WinKIT」。3年生(まだ学部学生だ)中心の非常に若いチーム。こちらのグループの大本命と目されていた大阪大学の「Osaka Univ. Trackies 2002」(浅田稔先生の研究室だ)を打ち破って、1位に輝いた。金沢工業大学の浅野先生によれば「守備に不安がある」そうなのだけど、わたしが見ている範囲では、ちゃんと守備も機能していたようにみえる。とにかく、勢いのあるチームだ。このチームがBグループ4位のPhilipsと初戦であたる。熱戦を期待してしまう。

日本人って、こういうのすきだ

 シミュレーションリーグは、大きな画面で「●」や「○」がサッカーをしているわけだ。これが、小学生たちにうけているの。試合がちゃんとサッカーになっているっていうのも大きいんだけど、それにしても、ちゃんとつぼにはいったところで、「いけいけ」とか、「パス出せよ!」とか声援が入る。わたしの世代は、昔のゲームを知っているから、たとえ、キャラが「@」や「*」だって感情移入できる自信がある。でも、いまの派手なゲームしか知らない世代はどうだろうとか思ってたんだけど、全く問題ない。ちゃんと感情移入しているのだ。改めて再認識。

 そういえば、Philipsの人も「自分たちの試合を普通の人たちが見て、ちゃんと熱くなってくれてる。日本人っていうのはテクニカルやロボットが好きなんだね」って言ってた。うん、そうだと思う。


*1わたしも、人並みにワールドカップをずっと見てたのに、今日はすっかり「イングランド-ブラジル」のことを忘れていた。目の前でやっているロボットのサッカーに夢中だったのだ。
*2 人間のPK戦みたいに攻守を一度ごとに交替にしないのは、セッティングに手間がかかるからだろう。
*3こういうふうに説明されたけど、「ファクター」っていうのは掛けないとなんだかきもちわるい気がする。逆数を掛ければ同じことなんだけど。*4じつはわたしは瀬名秀明さんのとなりにすわって、話をしながら観戦するという状況だったのだ。こっちは、根がミーハーだから、うれしかった。

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