News 2002年6月25日 10:45 PM 更新

研究者と企業との交流を〜ROBOTREXレポート

RoboCupの会場には、ロボット関連技術の展示会として「ROBOTREX」が併設されている。競技に出場した研究者と、展示企業との交流促進も図ろうという試みだ

 今回の「RoboCup-2002」では、初の試みとして、ロボット関連技術の展示会「ROBOTREX」が併設され、44の企業や団体がブースを出していた。併設するといっても、会場が別になっているわけではない。RoboCupの競技フィールドと同じように福岡ドームのアリーナ(グラウンド部分)の一部(4分の1くらい)を使っているから、中を歩いているとひと続きに感じる。フィールドじゃなくてブースになっているからROBOTREXなんだなって思う感じ。

 既にロボット関係の展示会として、「ROBODEX」や「ロボフェスタ」と言ったもの開催されており、それぞれ成功をおさめている。でも、ROBOTREXはこれらとはちょっと性格が違う。ロボットそのものだけではなく、ロボットの素材技術(モーターとか、ギアとか、ソフトウェアとか)の展示も行われているのだ。その意味では「国際ロボット展」に似てるけど、それともちょっと違う。こっちは、「夢を共有する」という“ロボカップスピリット”に則って、競技に出場した研究者と、展示企業との交流促進も図ろうという狙いもあるのだ。

 例えば、これは株式会社エンプラスの小さな手だ。


ライセンス契約により動画は削除しました

 大きさの比較がなくて申し訳ないのだけど、とにかく小さいのだ。指1本の長さは3センチ程度。内側からワイヤーで引っ張っているのなら簡単なんだけど、そうじゃない。この3センチの中にモーターと減速ギアと指の動きを作るカムとがすべて入っているのだ。

 ただ、これをそのまま売るとかそう言うつもりはないのだそうだ。うちの技術ならこういうものが作れますよという、文字どおりのデモンストレーション。確かにインパクトがある。研究者っぽい人がかなり足を止めていた。


 ロボス株式会社の「KOZOH」。この会社は、ロボットの一部分になるユニットを販売している。そのユニットを組み合わせたり、あるいは自作のユニットを付け加えたりすれば、簡単にロボットが作れるというわけ。電子ブロックとまではいかないけど、パーツを組み合わせてパソコンを作るくらいの感覚かもしれない。

 そして、KOZOHはユニットを組み合わせて完全にロボットにしてしまったものというわけだ。ロボットを作るのが目的ではなく、そのロボットで何かを研究したいという場合には、このような素材が存在するのはありがたい。


 株式会社エヌシーネットワークのフルステンレスの「ザクに似て非なるもの」。ここは中小企業、もっというと「日本の誇る町工場」の連合体だ(もともとは、9つの会社が社内LANをインターネットで結んで、図面データの送受信をできるようにしたというところから始まったんだそうだ)。

 いま、大学の研究室などが金物加工などを外注しようとするとき、(めんどうだから)つい出入りの業者などに頼んでしまう。でもその業者は商社だったりするわけだから、実際の加工はまたどこかの製造業者にたのむことになる。そこからやっと下請けの町工場にたどりつくわけだ(どうかすると、もっと挟まるかもしれない)。これでは流通マージンが入っちゃって高くつく。それなら、直接わたしたちに頼んでくれれば、最初からファクトリープライスで製作できますよというわけ。

 このほか、「ASIMO」や「morph」などで使われている、リアルタイムOS「VxWorks」を開発しているウインドリバー株式会社も、ブースを出していた。これも、ロボット開発者に対するアプローチだ。

 一方、一般来場者や子どもたちを狙ったブースもある。

 「福岡県中学校ロボコン」にいるサーファー人形(動画はこちら)。台の上の走っているんだけど端までくるとくるっと向きを変えて、落ちない。センサーを使っているのかななんて思ったら負けだ。もっとずっと単純なメカニズム。わたしもひっかかったんだけど、けっこうみんな「おや」と思って足を止めていたようだ。


 株式会社ゼンリン+株式会社ジオ技術研究所の共同ブースの、天神から福岡ドームまでのドライブゲーム。走るにつれて見えてくる風景は両社による3Dマップのデータを使っている。そしてこの3Dマップのデータは、ロボカップ レスキューシミュレーションリーグでも使用されているのだ。



 RTK2プロジェクト(有限会社ロボトピア&株式会社トーキン&株式会社熊谷組&北九州市立大学)による、天井つり下げ型歩行支援システム「フローラ」。鉄製の天井に磁石で吸いついているユニット(上の水色のもの)から、つり下げるかたちで人間を支える。ユニットは天井に吸いつきながら自由な方向に動ける。重力が減ったのと同じような効果があるため、通常では歩行ができなくなった人でも、これを使えば歩くことができる。

 いままでレール式のものはあったけれど、移動範囲が限られちゃってた。でも、これなら鉄製の天井さえ用意すれば(それは工事することになる)、その範囲は自由な方向に歩けるのだ。

 やらせてもらったけど、きもちいい。設定がマイナス30キロ(体重が30キロ減)だったので、まだだいたい体重が半分になった感じ(半分にはなってないか)。ピョンピョンはねたりしちゃう。

 もうおなじみの面々もそろっている。ソニーのAIBOももちろん展示されている。AIBOを外部からリモコンで操縦してみようというようなものから、「OPEN-R」のデモまでレンジは広い。

 ATRの「ロボビー」もちゃんといた。やっぱりメインで動いているのはロボビー2のほう。せっかくのロボビー3はまだいるだけって感じだった。残念。

 おなじみ東京工業大学広瀬・米田研究室もブースを出していて、ヘビ型ロボットの「蒼龍」も展示してある。あれ、きみは瓦礫の中を進むのが目的のロボットではなかったのか。それだったら、なんでこんなところにいるんだ。レスキュー実機リーグにどうして出ないんだ(東京工業大学もでているけど、ここの研究室ではない)。そう思って聞いてみた。

 「やんなきゃいけないことがいっぱいあって、RoboCupに割ける時間がないんですよ。出るとなったら、かなり時間とられちゃいますし」    「あれ、いまのままではだめなんですか?」

 「いまの蒼龍は、速度が出ないんです。だから、あのフィールドを全部回ってこいっていうのなら、瓦礫のとこだってちゃんと全部回れますけど、時間制限があると辛い。次期バージョンは速度も出るはず(そういう風に作っている)ので、それなら特に準備しなくても出られると思うんですけど」

 そうか、来年に期待ってことですね。

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[こばやしゆたか, ITmedia]

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