News | 2002年6月28日 10:35 PM 更新 |
東京・有明の国際展示場(東京ビッグサイト)で26日から催されている「組み込みシステム開発技術展」(ESEC)で、各社が新しいインタフェース規格「USB On-The-Go」(USB OTG)の展示を行った。
現在多くのPCに採用されているUSBは、ホスト(親)とペリフェラル(子)という“親子関係”を前提としており、従来のホストはPCに限られていた。USB On-the-Go(USB OTG)は、ホストとペリフェラルというUSBの“親子”関係を、接続し合った2台の周辺機器でそれぞれ設定でき、周辺機器同士をPCなしでダイレクト接続できるのが特徴。USB推進母体の「Universal Serial Bus Implementers Forum(USBIF)」が、昨年12月にUSB規格の追加仕様として正式仕様を発表した。
この正式仕様が策定される前に、すでにUSB OTGチップのプロトタイプを開発し、今年1月に同チップの出荷を業界で初めて行ったのが、欧州の半導体メーカーPhilips Semiconductor。日本フィリップスのブースでは、USB OTG対応チップ「ISP1362」を使ったデモンストレーションを行い、この新しいインタフェース規格を来場者にアピールしていた。
デモの内容は、ISP1362を載せたUSB OTG評価用ボードを2台のPCにそれぞれ組み込んで、ホスト/ペリフェラルを動的に切り替えるというもの。評価用ボードを組み込んだPCを、携帯電話やオーディオプレーヤーといったアプリケーションに見立てている。会場では、ホストになったPCから音楽データをUSB OTGケーブルを介してペリフェラル側のPCに転送し、ペリフェラル側PCにつながれたUSBスピーカーからリアルタイムで音楽が流すという実演を行っていた。
会期中は、デジカメやPDAといったモバイル機器のセットメーカー担当者も同社ブースを訪れていたという。「ただし、質問の多くは『OTGって何なの?』というもの。昨年決まったばかりの新しい規格のせいか、認知度の低さを感じた」(同社)。
USBIFの中心メンバーという立場を生かしていち早く対応チップを市場に投入した同社は、すでに数社と製品化に向けての商談が進んでいるという。「当社のUSB OTGチップを搭載した製品が、早ければ今年の秋頃に出てくる。どんな製品かは明かせないが、デジカメ/PDA/携帯電話のいずれかでということだけは確か」(同社)。
国内メーカーも、USB OTGへの取り組みが始まっている。5月末に対応チップを発表したセイコーエプソンのブースでは、USB OTG評価ボードにPCやプリンタを接続するデモンストレーションを実施していた。
USB OTG規格では基本的に、ケーブルの端子の違いによって、機器がホストかペリフェラルかを認識する。専用ケーブルには「A」と「B」が記されており、Aの端子を挿したらホスト、Bの端子を挿したらペリフェラルになるわけだ。同社の実演でも、プリンタにつないだ時はホストになって印刷を制御し、PCにつないだ時はペリフェラルになって外部ストレージとして認識されるというように、接続状況に応じてホスト/ペリフェラルをダイナミックに変更できるというUSB OTGのメリットを紹介していた。
新規格を目当てに同社ブースを訪れたユーザーの中には、デジカメや携帯電話のほかに、ディスプレイやカーナビのメーカー担当者もいたという。「ディスプレイの場合は、チップを載せることでPCを介さずにデジカメの画像などを表示できる。カーナビは、携帯電話とつなげてネットワークに接続したり、モバイルプリンタでナビ情報をプリントアウトしたりといった使い方が考えられる。ただ、携帯電話へのチップ搭載は、製品仕様をキャリアと相談しなければいけないことから、採用は遅くなりそうだ」(同社)。
USBコントローラで業界をリードするCypress Semiconductorの日本法人、日本サイプレスでも、USB OTG対応チップの展示が行われていた。Cypress Semiconductorは昨年5月に独自のホスト/スレーブチップ技術を持つScanLogic社を買収。今回展示したUSB OTG対応チップは、ScanLogicの技術が生かされているという。ブースでは、評価ボードにフォトプリンタを接続し、PCを介さずにダイレクトに画像を印刷するデモンストレーションを実施していた。
来場者の反応を聞いたところ「いまのところ様子見というユーザーが多い。話題だけが先行している」とのこと。
「対応チップの量産が本格化していないせいもあるが、チップがあってもソフトウェアの開発ができないと心配するメーカーもある。また、そもそもホストとペリフェラルをダイナミックに換えられる機能など、それほど必要ないのではという声もある。本格普及は来年以降となりそうだ」(同社)。
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[西坂真人, ITmedia]
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