News 2002年7月1日 11:55 PM 更新

本格生産は今秋、単体価格は6万円以下?――日立LGのDVD Multi対応ドライブ

日立エルジーデータストレージが、DVD Multi対応ドライブの出荷を開始した。他社に先駆けて市場投入できた背景や生産状況など今後の展開について、同社に聞いた

 待望のDVD Multi対応ドライブのPCメーカー向け出荷が、5月からいよいよ始まった(別記事参照)。その第1弾は、日立エルジーデータストレージが昨年末に発表した「GMA-4020B」。NECが5月に発表したVALUESTARシリーズの夏モデルに、このドライブが採用されている。


日立エルジーデータストレージが開発したDVD Multi対応ドライブ第1弾「GMA-4020B」

 GMA-4020Bは、DVDフォーラムが定めたDVD Multiの仕様に準拠し、同フォーラムが策定したDVDフォーマット(DVD-RAM、DVD-R、DVD-RWへの記録・再生およびDVD-ROMの再生)に対応したのに加え、CD-R、CD-RWへの記録・再生およびCD-ROMの再生を可能にした。つまり、DVD MultiにCD-R/RWを合わせた“スーパーマルチ”ドライブとなっているのが特徴だ。

 同社は、2000年11月に日立製作所と韓国LG Electronicsの合弁で設立した。同社財務本部次長で広報担当の門間淳也氏は、「DVD関連の開発に力を入れていた日立製作所と、CD-ROM/R/RWで確固たるシェアを築いていたLG Electronicsが、互いの強みを持ち寄って製品開発を進めていくのが設立の狙い。記録型DVDとCD-R/RWの機能を併せ持ったGMA-4020Bは、それが実を結んだもの」と語る。

 他社に先駆けて製品を投入できた背景には、このような合併による開発技術の集約が大きく貢献していると同氏。「また、光ピックアップやフォーマットを処理する信号処理LSI(DSP)、レーザーダイオード(LD)ドライバなどといったキーコンポーネントの開発にあたって、親会社の研究所が全面的にバックアップしてくれたことも、大きかった」(門間氏)。


 GMA-4020Bは、1つのピックアップ内にDVD系とCD系を持つ「2レーザー・2ディテクター方式」を採用。レンズも1つにして小型化をはかっている。これにより、光ピックアップ部の大きさを現在のDVD-RAMとほぼ同サイズに収めた。

 「光ピックアップのコンパクト化は、高性能・安定動作というメリットのほかに、現行ドライブのメカ機構が兼用できるという利点もある。これは量産に有利で、コストダウンにもつながる」(門間氏)

 コンパクト設計によってGMA-4020Bのドライブサイズは146(幅)×180(奥行き)×41.3(高さ)ミリとなり、通常の3.5インチベイ用ドライブとほぼ同等の大きさ。外観上で普通の光ディスクドライブと異なるのは、側面が黒に塗装されている点ぐらいだ。「GMA-4020Bは静音対策のためにファンレスにしたのだが、黒の塗装は放熱しやすくするためのもの。底面では熱を発するLSIチップの部分を凹ませて、より多く放熱させるような工夫も施している」(門間氏)。


側面を黒で塗装したり、熱を発するLSIチップの部分を凹ませるといった放熱処理を施している

 GMA-4020Bの単体ドライブでの販売予定はどうなっているのだろうか。

 「販売ルートを持たないため自社ブランドでは市場に出てこないものの、周辺機器メーカーなどからは、年内中には単体ドライブが発売されるだろう。親会社(日立製作所、LG Electronics)ブランドでの販売も十分考えられる」(門間氏)。

 GMA-4020Bは現在のところ、PCメーカー向けのOEM版が優先的に出荷されている。OEM価格は公表されてないが、門間氏によると「販売量にもよるが、単体ドライブは記録型DVDドライブ+α(CD-R/RWドライブの価格)程度の価格だ」という。先日、米国で開催されたTechXNY内で、松下電器産業が発表したDVD-Multi対応ドライブの価格が500ドル未満(6万円以下)といわれているので、GMA-4020Bの単体ドライブ版も同程度となりそうだ。

 ただし、キーコンポーネントの生産が追いつかないことから「当初の目標だった10万台/月のペースで生産できるのは、今年の秋頃になる予定」(門間氏)とのこと。周辺機器メーカーなどから発売される単体ドライブも、供給が潤沢となる今年の秋頃になる見込みだ。

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[西坂真人, ITmedia]

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