News 2002年8月30日 11:33 PM 更新

“混沌”とする次世代光ディスク規格

東芝とNECが、スムーズに進んでいた次世代光ディスクの規格策定に「待った」をかけた。テラバイト級の“次々世代”光ディスク技術の足音も徐々に忍び寄っている。業界標準を目指すBlu-Ray Discの前途に暗雲が漂い始めた

 東芝とNECが、青紫色レーザーを使った次世代光ディスク規格をDVDフォーラムに提案した(8月29日の記事を参照)。青紫色レーザーを使った次世代光ディスク規格では、日欧韓のメーカーが提案している「Blu-ray Disc」が業界標準を目指していた矢先だけに、今回の2社の動きはフォーマット分裂につながるのでは、との懸念が強まっている。

 大容量の次世代光ディスクが求められてきた背景には、高画質なデジタル放送の台頭がある。

 CDやDVDと同じ大きさの直径12センチの光ディスクに、ハイビジョンの映画をデジタルで録画したい――つまり、デジタルハイビジョン映像を2時間以上ストリーム記録できることが、次世代の光ディスクに求められるスペックだった。高画質なハイビジョンはデータ転送レートが約24Mbpsとなり、4.7GバイトというDVDの容量では20数分のストリーム記録しかできない。映画のような2時間単位のコンテンツを録画するためには、20Gバイト以上の容量が必要だったのだ。Blu-Ray Discでは、青紫色レーザーとそれに伴う高密度化技術によって27Gバイトの大容量を確保し、長時間のデジタル記録を可能にした(Blu-Ray Discの技術解説は別記事を参照)。

 しかしBlu-Ray Discは、青紫色レーザーおよび高密度化技術の実用化というブレークスルーが必要で、実際の製品が登場するのが2004年にずれ込むのではとの見方が業界の定説となっている。

 東芝とNECが提案した光ディスク規格は、基本的にはBlu-Ray Discと似通っている。波長405ナノメートルの青紫色レーザーを使う点や、ハイビジョン放送をストリーム録画するための高速なデータ転送(36Mbps)も同じだ。異なるのは、Blu-Ray Discが全く新しい光学系を採用しているのに対して、東芝・NEC方式は現行のDVDと同じ光学系を採用したことだ。

 東芝・NEC方式は、対物レンズの開口数(NA)を現行DVDと同じ0.65にしたほか、0.6ミリのディスクを貼り合わせた構造を採用。これは、NA0.85でカバー層0.1ミリのBlu-Ray Discに比べて記録密度の面で劣るものの、現行のDVD技術や生産ラインを生かせるため、早期の商品化とコストダウンが図れるという。

 ただし同方式では、記録容量が片面1層15Gバイトとなり、ハイビジョン映像を2時間分記録するには容量が少し足りない。だがこれも、現行のDVDと同じ構造を採用したことで、ディスク記録層の2層化が可能となり、片面2層で30Gバイトを記録できるという。

 もう1つ、東芝・NEC方式の追い風になるのが、映像圧縮技術の進化だ。例えば、開発名Coronaと呼ばれてきた「Windows Media 9 Series」では、ハイビジョン並みの映像を4M―6Mbpsのビットレートで実現できるという。DVDフォーラムの分科会などでも、10Mbps以下のビットレートでハイビジョン映像を圧縮できる技術の検討を始めている。これらの映像圧縮技術の開発が進めば、Blu-Ray Discが目指す20Gバイト超のディスク容量は、もはや必要ないとの意見もある。

規格策定の主導権争いも

 このような技術的な背景に加えて、次世代光ディスク規格の策定で主導権争いも起こっている。

 Blu-ray Discは、ソニーや松下電器産業、蘭Philipsなど国内外の大手エレクトロニクスメーカー9社が、規格の策定を行っている。一方、これまで光ディスクの規格策定は、DVDフォーラムを中心に行われてきた。次世代の光ディスクであるBlu-ray Discも、これまで同様にDVDフォーラムで規格策定を行うべきというのが、東芝らの主張だ。

 だがBlu-ray Discは、光ディスク関係の学会の中で各メーカーの技術者同士が集まり、メーカーの枠を超えた話し合いの中で徐々に決まっていった規格だという。会員メーカーが増え、組織が強大化してしまったDVDフォーラムでは意見統一が難しく、新しい規格の策定が遅々として進まないケースが近年目立った。その意味では、Blu-ray Discの場合はDVDフォーラムから離れた別組織だったからこそ、規格策定もスムーズに行ったのではとの意見も多い。

 Blu-ray Discでは、さまざまなメディア規格の業界標準化で対立してきたソニーと松下が、珍しく手を組んでいる。また国内メーカー中心の規格ではなく、PhilipsやSamsungなど海外メーカーもメンバーに名を連ねるなど、業界標準化にむけて順調な滑り出しをみせていた。今回、東芝とNECが異を唱えたことにより、次世代光ディスクの行く末は混沌としてきた。

 業界ではすでに、次世代光ディスクに続くその先の技術の開発も急ピッチで行われている。例えば7月にオプトウエアが発表した超高速大容量光ディスクシステム「VRD(Volumetric Recording Disk)」は、ホログラフィック記録技術と光ディスク技術を融合することでテラバイト級の大容量と高速データ伝送を可能にするという。しかもこの“次々世代”光ディスク規格は、「2005年にはコンシューマ向けのドライブを市場に投入する」(同社)という実用化に近い技術で、遠い将来の夢物語ではないのだ。

 新規格の登場で、業界標準化に向けた前途に暗雲が漂い始めたBlu-ray Disc。不安を払拭するためには、製品を早期に市場投入し、本体およびメディアのコストダウンによって普及を促進させることが必要だろう。



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[西坂真人, ITmedia]

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