News 2002年9月3日 03:37 PM 更新

次世代光ディスクの現状 第1回
東芝/NEC方式のメリットは何か?

東芝、NECがDVDフォーラムに青紫色レーザーを採用した次世代DVD規格を提案したことで、次世代光ディスク規格は事実上分裂した。規格化を終え先行するBlu-ray Discと比較して、東芝/NECが共同提案した次世代DVDは、いったいどのようなメリットがあるのだろうか

 「DVD-Videoは現在、開発費を回収し、作れば作るだけ利益が出るようになってきている。まさにこれからという時期だ。ここで、新しいもの(規格)を導入することになると、また、1から機材の導入などをやり直す必要がある。コンテンツメーカーにとって、果たしてそれをやるだけのメリットがあるのだろうか……」(某メーカー)。

 東芝とNECが共同提案した次世代DVD規格の最大のメリットは、まさに“ここ”にある。両者の次世代DVD規格は、波長「405nm(ナノメートル)」の青紫色レーザーを光源に使用し、開口数(NA)は「0.65」、保護層「0.6mm」の基盤の張り合わせ構造を採っている。つまり、650nmの赤色レーザーを採用したDVDと比較して、採用するレーザー以外は、ほぼ同じ物理構造をしているのだ。

 東芝デジタルメディア社首席技監・山田尚志氏は、同方式のメリットについて、「市販されているDVD(DVD-Videoタイトル)の多くが、現在、片面2層で設計されたものになってきている。次世代DVDでも、基本的には映画がメインのコンテンツとなることは間違いない。そのためには、0.6mmの基板を張り合わせた規格の方が作りやすい」と説明する。

 実際、この東芝/NEC方式が再生専用の2層メディアの製造を安価にすることは間違いない。片面2層のメディアは、0.6mmの基板を2枚準備し、それぞれに信号をスタンパで刻み、その2枚を張り合わせると「1.2mm」のディスクができあがるからだ。この方法は、現行のDVDで使用されている2層メディアの作成方法とまったく同じだ。

 DVD発売当初ならいざ知らず、現在では、2層メディアのDVD-Videoタイトルは急増中で、映画なら、ほとんどが2層メディアとなっている。製造技術はこなれてきており、東芝/NEC方式は、2層メディアの製造を安価にすることができるだけでなく、現在の設備を流用できる。

 対して、Blu-ray Discで再生専用の2層メディアを作成しようとするとどうなるか? 実は、これは、技術的なハードルが高い。Blu-ray Discは、保護層の厚みが「0.1mm」しかないからだ。再生専用の2層メディアを作成しようとすると、、まず1.1mmの基板に信号を刻み、透過膜を挟み、その上に再度信号を刻むという工程を踏む必要がある。0.6mmの基板の両方に信号を刻んで張り合わせる場合よりも難易度が高いというのは、これを見ても一目瞭然だろう。

東芝/NECが共同提案した次世代DVDのメディアで2層メディアを作成する場合の構造。0.6mmの基板を張り合わせることで、再生専用メディアを作ることができる。

Blu-ray Discで再生専用の2層メディアを作成する場合の構造。張り合わせができないので、製造工程は、高度な技術が必要になる。

 0.6mmの基板という点では、メリットはもう1つある。それは、レーザーピックアップから見た場合、信号が0.6mmの深さに記録されており、保護層の厚みがあることによってカートリッジを不要にすることができる点だ。

 書き換えられるメディアであれば、カートリッジを採用するのもよい。だが、再生専用やライトワンスディスクでは、カートリッジはないほうが便利であるばかりか、不要になることでコストダウンを図ることもできる。この点から考えても、カートリッジを採用しているBlu-ray Discは、不利であることは間違いない。

 また、東芝/NEC方式は、対物レンズの仕様が、現行のDVDで採用されている開口数と近く、互換性を取りやすいというメリットもある。開口数0.65の対物レンズのみを採用し、405nmと650nmの2種類のレーザーを使用するピックアップであれば、開発がしやすいからだ。

 実際、現在の記録型DVDドライブやDVD-ROM/CD-RWのコンボドライブは、CD用とDVD用の対物レンズを搭載しているわけではなく、対物レンズは、DVD用の開口数0.6のもののみが採用されている。東芝/NEC方式では、もともとの対物レンズの仕様が近いため、現行DVDとのコンパチの製品を設計しやすくなるのだ。

アプリケーションフォーマットでも互換性を

 「アプリケーションフォーマットは基本的に現行のDVDと同じものを使用したい。(山田氏)」。

 東芝が考える次世代DVDのアプリケーションフォーマットは、再生専用が「DVD-Video」、録画用が「DVD-Video Recording Format」。基本的な考え方は、記録容量が大きくなったDVDというわけである。もちろん、再生専用ではHD-TV、録画ではデジタル放送をターゲットにしている。このため、「MPEGのストリームはそれに適したものへと変更する必要はあるが、それ以外のところでは、なるべく同じものを使用したい」(山田氏)という。

 その理由は明確だ。「アプリケーションフォーマットにあまりに大きな変更を加えてしまうと、オーサリング環境にも大きな変更を加える必要があり、大変なことになってしまう。プレーヤを設計するほうも、バグが発生し、うまく再生できないなどの問題が起きる可能性がでてくる。」(同氏)からである。しかも、これによって、これまでのオーサリング機器(環境)に手直しを加えるだけで利用することができるというメリットも出てくる。

 また、同社では、「エラー訂正は、現在と同じ、リードソロモン積符号を使用し、コピーコントロール技術には、DVD-Audioで採用されているCPPMを拡張したものを使用したい」という。CPPMは、現状のDVD-Videoで採用されているものよりもはるかに強固な仕組みだ。同社ではこれに採用されている暗号鍵を長くし、例えば、56bitだったものを112bitにするなどして、より強固なコピーコントロール技術を導入しようというわけである。

 強力なコピーコントロール技術のサポートは、次世代光ディスク規格には、重要な要素である。映画会社などのコンテンツ提供メーカーは、現在のDVD-Videoで採用されているCSSがすでに破られてしまっていることに危機感を感じており、主たるコンテンツメーカーを説得するためにも、より強力なコピーコントロール技術を採用する必要がある。特にスタート時から再生専用と記録型の両方をターゲットにしている次世代DVDでは、これは至上命題といっても過言ではない。

課題は大所帯による規格の策定とコンテンツ

 東芝/NECの次世代DVDは、現行のDVDとの高い互換性が最大のメリットである。これによって、機器の製造コストを抑える同時に開発期間を短縮し、早期の普及を狙うというわけである。

 しかし、DVDフォーラムという大所帯での策定という点を危惧する声も多いのも事実だ。これは、DVDフォーラムとDVD+RWアライアンスの規格策定のスピードの違いをみても明らかだ。大所帯のDVDフォーラムで規格策定が遅れがちなのに対し、少ないメンバーで規格策定を行っているDVD+RWアライアンスは迅速だ。規格を策定しようとしたときは、数は少ないほうが意見の集約も早く、小回りが効く。その点では、次世代DVDの規格策定がどれだけ迅速に行えるかが、今後の焦点の1つになることは間違いないだろう。

 再生専用と記録型の両方を同時に規格化するということでは、最大のコンテンツ提供業者である“ハリウッド”を味方につけることができるかどうかということも、重要な要素だ。東芝は、DVDフォーラムの議長会社ということもあり、DVD規格策定時に実際にハリウッドのとの折衝を行っている。そのときの経験を生かし、うまく味方につけられるかどうかにも、注目しておく必要がある。



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[北川達也, ITmedia]

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