News | 2002年9月12日 10:57 PM 更新 |
新しい標準技術確立のために活動しているIntel Technology Groupの作業進捗状況が、開発者向け会議「Intel Developer Forum Fall 2002」で説明された。Technology GroupはCTOのPat Gelsinger氏が率いる部隊で、今年2月のIDFでも同部門が関わるさまざまな技術に関する説明会が開催された。今回のプレス向けセッションでは、その最新状況の報告が行われた。
各技術の解説に先立って演説したPat Gelsinger氏は、標準化の確立が新しいイノベーションと事業機会の拡大を実現すると話し、業界全体で新技術に取り組み標準化を進める必要があるとした。もちろん、それは相互運用性や使い勝手など、エンドユーザーの体験を改善する取り組みでもある。どんな新技術であっても、互換性が低い独自技術では素早く市場を立ち上げることは難しい。
現在、Intel Technology Groupが取り組んでいるテーマは、UWB(Ultra Wide Band)、SeialATA、SerialATA II、PCI Express、UPnP、AGP 8x、802.11、USB 2.0など。それぞれが置かれているフェーズは異なるが、いずれはPCユーザーに届けられる技術である。
AGP 8x
AGP 8xは従来のAGP 4xとの互換性を保ちながら、帯域幅を2倍に向上させる技術。Intelによると、プロセッサとグラフィックコントローラの大幅な性能向上によって、全体的なグラフィックパフォーマンスがAGPの帯域に依存する場面が出てきているという。
AGP 8xはそうした状況に対して、新しいヘッドルーム(性能が伸びる余裕)を与えるものだ。AGP 8xはこのIDFで発表されたAGP 3.0に基づいており、533MHzのデータ転送レートで約2.1Gバイト/秒の帯域を持つ。
市場への投入は目前で、年内にはワークステーション向けチップセットの「Placer」および「Granite Bay」がAGP 8x対応で登場する。来年にはデスクトップPCにも降りてくる予定だ。
なお、AGP 8xはパラレルインタフェースを用いた最後のバージョンになるという。AGP 8xに続くグラフィック向けインタフェースは、PCI Expressをベースにしたシリアルインタフェースのソリューションとなる。
PCI Express
PCI Expressは最終仕様が7月にリリースされ、いよいよリファレンスデザインの設計など製品化に向けた動きが開始されたばかり。PCI ExpressはPCIとソフトウェアの互換性があるシリアルインタフェースで、高速なだけでなく「Hot Plug&Play」の機能も持つ。デスクトップPC、ノートPC、サーバなどはもちろん、通信機器のモジュラー化ソリューションでの応用も期待されている。
今回のIDFでは最終仕様の決定を受けて、開発ツールやリファレンスモデル開発など、実際の製品化に向けた開発成果が見え始めている。IDF会場で行われた展示会では、PCI Expressを実装した試作チップなどが展示された。おそらく次回のIDF(2月)には、製品に近いものが出てくるだろう。
なお、PCI-SIGが来週日本で技術カンファレンスを行う予定で、PCI Expressに関しても詳しい情報が出てくる予定になっている。
Advanced TCA
TCAはTelecom Computing Architectureの略で、通信業界向けの新しいイニシアティブ。
イーサネット、InfiniBand、PCI Express、StarFabricといった高速シリアルの相互接続技術をバックプレーンで採用した、テレコミュニケーション分野に最適化したフォームファクタの確立を目標にしている。プロトタイプとスペックは、今年第4四半期にリリースされる予定。これにより、高性能のモジュラ型通信デバイスを標準化できるようになる。
USB 2.0
USB 2.0に関して、新たな説明は不要だろう。従来のUSBと同じ使い勝手と互換性を維持しながら、40倍の速度に拡張された。PCチップセットの多くに実装されたことで、普及は急速に進んでおり、300以上のUSB 2.0デバイスが市場に出回っている。2003年に出荷されるPCの80%以上がUSB 2.0対応になると言われている。
Serial ATA
Serial ATAは、名前の通りPC内部のストレージ用に開発されたシリアルインタフェース。従来のATAデバイスとソフトウェア面での互換性がある。
Serial ATAは年内に登場する新しいI/Oハブでサポートされる予定で、来年には普及が進む見込み。8月中旬に開催された互換性検証のイベントには、50社以上が参加し大成功を納めたという。Intelによると、このIDF開催から1週間で20以上のSerial ATA製品の発表があるとか。
Serial ATA II
クライアントPC向けのローコストなインタフェース技術として開発されたSerial ATAだが、Serial ATA IIにはサーバ向けの高信頼性・高性能インタフェースとしての仕様が加えられる。つまり、次世代ではなくSerial ATAをベースに仕様を追加することで、異なる用途への応用を行ったものだ。今年2月のIDFでアナウンスされたが、すでに75の企業が仕様策定に参加している。
まだ具体的なスケジュールは見えていないが、1台のディスクあたり2本のSerial ATAを用い、リダンダントに動作させる機能もある。その場合、動作している方のケーブルを引き抜くと、もう片方のチャネルを通じてディスクアクセスが継続される。
またコマンドキューイングをサポートしているため、特に複数のI/Oが同時発生するような環境下(サーバなど)でのパフォーマンスが向上する。
UPnP
UPnP、すなわちUniversal Plug&Playは、IPネットワークでデバイス同士が互いに認識しあい、このコネクションを確立するための基本的なプロトコルだが、UPnP Forumでは最低限の接続を行うフェーズから、いくつかの代表的なアプリケーションを利用するためのプロトコルにまで踏み込んだ標準化が進んでいる。
一般にはUPnPルータが最も身近なUPnPデバイスだが、無線LANアクセスポイント向けのUPnP Gateway、メディアサーバ/メディアレンダラー(メディア再生ソフト/デバイス)を規定したUPnP A/V、プリンタやスキャナを利用するためのUPnP Imaging、照明制御などホームオートメーションシステムのためのUPnP Automation、認証とアクセス制御を行うためのUPnP Secutiryなどがある。
特にパーソナルユーザーが注目してほしいのは、UPnP A/Vだ。ネットワークを通じてオーディオやビデオなどのメディアデータを再生したり、PCのストレージをメディアサーバとして活用したりできる。UPnP A/V対応の端末があれば、リビングのテレビに接続してリモコンからPCのメディアにアクセスするなど、ソニーの「VAIO Media」と同じような使い方が、様々なベンダーのデバイス同士で行えるようになる。現在は商用コンテンツを行えるだけのスペックを持っていないが、UPnP A/Vバージョン2では、商用コンテンツのサポートやコンテンツのマルチキャスト、アクセス制御などのプロトコルが加わる予定だ。
またUPnP Remote I/OはUPnPベースのユニバーサルリモコンに関するプロトコル。他のUPnPをコントロールできるほか、ネットワーク上の他デバイスと通信し、相手側からリモコンにメッセージを表示させることが可能になる。例えばUPnP対応ネットワーク音楽プレーヤーがあったとすると、プレーヤーからタイトルやアーティストなどの情報を受け取ってリモコン側に表示させることができる。
これまで具体的なアプリケーションのプロトコルが少なく、接続性の高さはあっても用途がない状態だったUPnPだが、アプリケーションレベルの標準策定がこの調子で進めば、普及への道もそう遠くないだろう。
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