News | 2002年9月13日 11:12 PM 更新 |
本格的に常時接続時代を迎え、インターネットを使ってユーザーに情報を随時配信する「プッシュ型」サービスが再び注目を集めている。8月にはユーキャストコミュニケーションズが「mypop」サービスをスタート。ニュースや占いなどのコンテンツをすばやく届けるサービスで、既に約1万人の会員を集めた。かつて華々しく登場して消え去ったプッシュ型サービス。常時接続の普及を追い風にユーザーに根付くことができるか。
「武藤が猪木誘い無視」「きょうのラッキーカラー」──mypopのクライアントソフトをインストールすると5分に1回、小さな専用ウインドウがポップアップ。ユーザーが設定した分野のニュースや生活情報などを簡潔に表示する。さらに詳しく知りたい場合は、専用ウインドウのリンクをクリックすればWebブラウザでコンテンツ提供者のサイトにアクセスできる。コンテンツは現在、日刊スポーツ新聞社や共同通信社のニュース、「Dr.コパのデジタル諷す医術」など14チャンネル74種類。
ポップアップした専用ウインドウがアクティブウインドウにはならず、ポップアップ時に使用しているソフトの操作を邪魔される、といったことはない。ポップアップ後、しばらくすると自動的に消える。
目まぐるしいネットの世界では、プッシュ型は比較的“古い”技術になるだろう。1997年に「PointCast」が国内でサービスをスタートして以来、ベンチャー各社が相次いで参入。Web、メールに次ぐ第3の情報配信メディアとしてプッシュ型サービスへの期待が高まった。だがナローバンド環境下でのトラフィック増大などで企業ユーザーに嫌われた上、常時接続という言葉すら一般的ではなかった個人ユーザーには浸透せず、ほとんどの企業が撤退を余儀なくされた。
だが常時接続とブロードバンドは個人にとっても普通の時代になった。「ネットとPCの使い方が変わってきた。特定の情報を求めて特定のサイトしかアクセスしないユーザーと、PCの電源を切らないユーザーが増えた」。ユーキャストの森輝幸社長はこう分析する。ユーキャストはグローバルメディアオンライン(GMO)や電通などが出資する新会社。かつてのハイパーネットが持っていた「セカンドブラウザ」技術の特許をGMOが買い取り、同技術を利用したサービスに乗り出した。
各種報告によると、さまざまなサイトを渡り歩く「ネットサーフィン」は減り、興味のある分野のサイトにしかアクセスしないユーザーが増えてきている。こうしたユーザーに特定の情報だけを配信できるのがプッシュ型の強みだ。メールマガジンやオプトインメールなど、電子メールによる情報配信が盛んだが、受信するメールが増え過ぎ、読まないで捨ててしまうという開封率低下の問題も指摘されている。ユーザーのデスクトップに随時情報を配信するプッシュ型なら、メールに比べリーチ率を高められる。
ただ、プッシュ型がWebやメールを置き換えるサービスだとは考えていない。Webはコンテンツの見せ方で有利な上、メールは一度に大量の情報を配信できる。「それぞれのメリットを活かして併存していきたい」(森社長)。
ユーキャストの主な収入源は、配信する情報に随時織り込む広告の売り上げだ。ただ現在はテスト状態。現在の会員は1万人だが、「100万人規模にしないと話にならない」(森社長)。自社コンテンツのアクセスを増やしたいISPとの提携に力を入れており、9月10日にはソニーコミュニケーションネットワークの「So-net」への提供を始めた。
ただネット広告環境は厳しく、またポップアップする広告メディアに対するユーザーの嫌悪感も根強い。プッシュ型サービスがWebとメールに続く第3のネットメディアになれるか、真価が問われるのはネット環境の向上で普及の下地が整ったこれからだ。
[小林伸也, ITmedia]
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.