News | 2002年10月2日 02:23 PM 更新 |
CEATECの会場を華やかに演出するのが、最先端技術を駆使したディスプレイ関連の出展だ。特に近年は、薄型大画面TVの人気や、携帯電話などモバイル向けディスプレイのニーズの高まりから、メーカー各社もディスプレイの新技術・製品の開発に力を入れている。
中でも注目は、やはり次世代ディスプレイ「有機EL」だ。もっとも、数年前から“次世代”の称号を与えられながらも(一部携帯電話向けを除いて)なかなか製品化に結びつかない“最先端”技術ではあるが、今回のCEATECではより製品に近いものや、課題だった大画面化を可能にしたものなどが紹介された。
有機ELに注力する三洋電機のブースでは、先日発表した15型のカラー有機ELディスプレイを参考出品していた。米Eastman Kodakと共同開発した発光効率が高い白色有機EL素材を使用。「低分子系のアクティブタイプでは、世界最大のサイズとなる」(同社)。
また、有機ELディスプレイを使ったスライド型の携帯電話を参考展示したほか、5GHz帯無線でワイヤレス視聴を可能にした5.5型の有機ELテレビも、昨年に引き続き出展した。
また、同社ブースでは、3D技術を使った2つのモバイル型ディスプレイの紹介も行われた。1つが、同社独自のメガネなし3D技術を応用した「携帯電話用3Dディスプレイ」。新開発の「階段状バリア方式」を採用することで、シンプル構造ながら鮮明な3D映像を見ることができるという。
もう1つが、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)タイプの「3Dモバイルヘッドマウントディスプレイ」だ。対角9.6ミリと超小型サイズのVGA液晶を搭載し、装着時に周囲が見える光学系「シーアラウンド」を採用。「軽量・小型でサングラスのように装着できる。クロストークのない理想的な立体表示を行える」(同社)。
ヘッドマウントタイプでは、三菱電機が気軽な装着感にこだわったウエアラブルディスプレイ「SCOPO」を参考出品していた。
従来のHMDはユーザーが画面を見るときに目のピント合わせが必要だったが、SCOPOはディスプレイのある方向に視線を向けるだけで、自然に映像が見えてくる。「ピントが合わないのは、センサーの役目をする網膜に当たる光の焦点が広がってしまうため。SCOPOでは、光が広がらない独自の光学系を採用しているため、ピントがずれていても光がぼやけることがない。つまり、ピントに関係なく映像が見られる」(同社)。
片目だけで見る仕組みで、視野の邪魔にならない場所へディスプレイを配置することができ、周囲の様子とディスプレイとを同時に見ることができるという。「商品化は未定だが、コンシューマー向けより保守業務など特定用途で先に採用されていくかもしれない」(同社)。
これからのディスプレイは“曲がる”ことも重要
変わったところでは、東芝が世界初の「曲がる大型TFT液晶ディスプレイ」を参考出品していた。これは今年5月に同社が開発表明したものだ。
液晶パネルのサイズは8.4型の800×600ピクセル(SVGA)表示タイプ。通常のプロセス温度で低温ポリシリコンTFTを形成したガラス基板をフレキシブル基板と張り合わせる技術を同社が独自に開発。写真だと分かりづらいが、壁の凹部にはめ込まれたディスプレイの端の部分を見ると、湾曲具合が見てとれるだろう。
東芝の“曲がる”技術は、将来的には有機ELにも応用可能というが、それよりも一足先に有機ELを“曲げて”しまったのが、パイオニアの「フィルム型有機EL」だ。表示パネルの厚さはわずか0.1ミリながら、フルカラー(約1600万色)で160×120ピクセルの表示が行える。
課題は、有機ELの材料が水分に弱いためパネルの貼り合わせの際にしっかり封止しないといけない点と、量産技術の確立。「フィルム型有機ELは、より薄く、より軽くが求められる携帯電話向けに最適。曲がることで、デザインの自由度も高くなる。将来的にはコストダウンを図ってエプロンなどにも装着できるようにし、店の広告などに使えるようにしたい」(同社)。
[西坂真人, ITmedia]
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