News | 2002年11月1日 08:35 PM 更新 |
デジカメ(交換レンズ方式の一眼レフタイプを除く)では最高倍率となる光学12倍ズームで話題を集めている松下電器産業のLUMIX DMC-FZ1。前回のファーストインプレッションに続き、今回は高倍率ズームの特徴を中心にした実機による撮影レポートをお届けする。なお、今回の実機は発売前の試作機ということで、画質面などで量産品と異なる可能性があることを断っておく。
撮影テストは、晴天のお台場で実施。お台場エリアの建造物の中でもひときわ特徴的なフジテレビ社屋を撮ってみた。光学12倍ズームでどれだけ寄れるかを見極めるため、ビルから500メートルほど離れたかなり引いた風景の場所で撮影。今回はあえて三脚を使わず、手持ち撮影を試みた。
手持ち撮影にしたのは、FZ1の「光学式手ブレ補正機構」を確認するため。通常、焦点距離が長くなるほど、つまり高倍率なるほど画角は狭くなり、ちょっとの振動で手ブレが発生してしまう。銀塩カメラの世界では、一般に手ブレが発生する危険シャッタースピードは「1/焦点距離」秒といわれている。つまり、FZ1の最高倍率では、1/420秒より速いシャッタースピードでないと、手ブレの危険性が高いというわけだ。ちなみに、さきほど紹介した光学12倍ズーム時(420ミリ相当)の撮影データは以下の通り。
- | DMC-FZ1撮影データ |
撮影日時 | 2002/10/27 14:14 |
焦点距離 | 55.2ミリ(420ミリ相当) |
シャッタースピード | 1/400秒 |
ISO感度 | 50 |
絞り数値 | F4.8 |
記録画素数 | 1600×1200ピクセル |
撮影モード | 通常撮影 |
手ブレ補正 | 光学手ブレ補正機構ON |
花形レンズフード | 有り |
FZ1は、絞りやシャッタースピードをユーザーが設定できないため、これらの設定はカメラ任せとなる。撮影データをみると、絞り値に余裕がある(開放値F2.8)にもかかわらず、手ブレの危険ゾーンである1/400秒というシャッタースピードになっている。それでも、ご覧の通り、しっかりピントが合った写真が撮れた。これは、2段分以上のシャッタースピードを補正してくれる光学式手ブレ補正機構のおかげだろう。
このように光学12倍ズームだけでも、十分に高倍率の世界を楽しめるのだが、FZ1にはさらに3倍のデジタルズームを備えている。最高倍率でデジタルズーム使えば、なんと1260ミリ相当の“超”望遠が実現するのだ。
ただし、デジタルズームを使うと、FZ1の弱点でもある解像度の低さも目立ってくる。FZ1の撮像素子は1/3.2インチ211万画素原色CCD(有効200万画素)。300万-500万画素のデジカメが増えている中では、少々見劣りするスペックだ。だがFZ1には、新開発の画像処理LSI「VENUS(ヴィーナス)エンジン」を搭載し、斜め方向の解像度で従来比1.5倍の解像度向上を実現しているという。筆者は、デジカメは200万画素あれば十分と思っている。高解像度が欲しいと感じるときは、撮影した画像をトリミングするときぐらいだ。つまり、トリミングしなくても、被写体にグッと近寄ることができるFZ1なら、200万画素でもさほど不満は感じない。
FZ1はオート専用機だが「かんたん/通常撮影/マクロ/ポートレート/スポーツ/流し撮り/夜景ポートレート/動画」といった8種類の撮影モードが用意され、初心者でも光学12倍ズームを生かした写真が簡単に撮影できる。特に背景を流して被写体のスピード感を引き出す「流し撮り」モードはお勧めだ。
月のクレーターも判別可能
ここまで高倍率だと、眠っていた天体小僧(と言っても、小学生の時)の血がうずいてくる。というわけで、天体写真にもチャレンジ。被写体は、無難に“月”を選んだ。撮影日時(10月29日午前2時)の月はいわゆる「下弦の月」だ。
200万画素という点と、シーイングの悪い東京のど真ん中で撮影したこともあって、天体写真としては不満だらけだが、それでも“コペルニクスクレーター”やアポロが着陸した“あらしの大洋”などは判別できる。さすがに夜間の高倍率撮影になると、色収差や周辺部のにじみも目立ってくるが、なによりも望遠鏡などを使わずに、デジカメ本体でこれだけの写真が撮れるのには驚きだ。シャッタースピード/露出の設定やマニュアルフォーカスなどデジカメ上位機種にあるような細かな設定ができないため、本格的な天体写真には不向きだが、光学12倍ズームがデジカメの世界を大きく広げているのは確かだ。
[西坂真人, ITmedia]
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