News 2002年12月13日 01:07 AM 更新

非PCの次の標準?――「T-Engine」の最新動向

「TRON」の最新技術・成果が集まった展示会「TRONSHOW2003」が12日から開催されている。開発期間とコストを大幅に短縮できるという「T-Engine」に注目が集まっている

 全世界で最も使われているOS――「TRON」の最新技術・成果が集まった展示会「TRONSHOW2003」が、12月12日から東京・六本木のラフォーレミュージアム六本木で開催されている。今回のTRONSHOWの“目玉”は、実用段階に入った新しい開発プラットフォーム「T-Engine」。ユビキタスコンピューティング時代のオープンな開発環境を提供し、開発期間とコストを大幅に短縮できるというT-Engineの最新動向が紹介されている。


「TRON」の最新技術・成果が集まった展示会「TRONSHOW2003」

 PCだけでなく、携帯電話やPDA、各種家電製品などコンピュータを内蔵したエレクトロニクス機器には、必ず制御するためのOSが組み込まれている。TRONは、こういった組込み用OSでシェアNo.1で、特に家電機器などではITRON(Industrial TRON)がデファクトスタンダードとなっている。

 T-EngineはこのITRONをベースにしたカーネル(T-Kernel)を持つ開発プラットフォームで、昨年12月に発表された。

 T-EngineはCPUフリーで、SH/ARM/MIPS/M32Rといった代表的な組込みCPUアーキテクチャをサポートしている。T-Engineの発表以降、開発評価を行うT-Engineボードの発売が待たれていたが、第1弾として今年8月に日立製作所のSH7727を搭載したT-Engineボードが発売。9月にはM32版(三菱電機)も発売され、11月にはMIPS版(NEC)とARM版(セイコーエプソン)が発表されるなど、既にコマーシャルベースで10種類近くのT-Engineボードがリリースされている。

 パーソナルメディアのブースでは、これらT-EngineボードにT-Kernelなどの各種ソフトウェアをセットにした開発評価キットが多数展示されていた。


T-Engineボードを使った開発評価キット

 「ミドルウェア開発者や家電メーカーが、T-Engineに高い関心を示している。また、新製品が次々と登場して多品種少量生産となっている携帯電話の開発にも、T-Engineを利用することによって大幅な効率向上がはかれる」(パーソナルメディア)。

T-Engineを使って開発した製品が早くも登場

 T-Engineの最大の特徴は、開発期間を大幅に短縮できることだ。実際に、開発評価ボードの第1弾が発売されて4カ月しか経過していないにもかかわらず、早くもT-Engineを使って開発した製品が登場している。三菱電機のブースで展示されているIP携帯電話「モバイルIP Talk」の試作機がそれだ。


IP携帯電話「モバイルIP Talk」の試作機は、T-Engineを使って開発期間を大幅に短縮

 IP携帯電話の試作機は、ユーザーインタフェースの少ない機器向けの「μT-Engine」(同社製M32104)を使って開発。この試作機は、1000台の限定生産で発売されたが、その心臓部にもμT-Engine開発ボードと同じCPU(M32104)を採用している。

 「T-Engineを採用することで、従来に比べて開発期間を1/2−1/3に抑えることができた。IP携帯電話のような新しいカテゴリ製品の場合、ハードとソフトを並行して開発することは、開発期間の短縮だけでなく作り込みの上でも重要」(三菱電機)。

 また、松下電器産業グループでソリューションビジネスを展開するピンチェンジは、T-Engineベースの低価格な教育用コンピュータ「TEA端末」のプロトタイプを、わずか2カ月という短期間で開発した。


T-Engineベースの低価格な教育用コンピュータ「TEA端末」

 短期間で開発できたということは、開発コストの削減やリスクの低減につながる。そのため、2003年に発売予定のTEA端末は、6万円以下という低価格が予定されている。「プロトタイプにT-EngineボードやT-Kernelをそのまま使用することで、短期間での開発が可能になった」(ピンチェンジ)。

 TEA端末のほかにもピンチェンジのブースでは、クレードルに本体を置くとバッテリ充電と同時に情報も“充電”される「BB-Toaster&Bread」や、RF-IDタグや無線LAN経由でさまざまな情報を取り込んで知らせる「Scouter」などといったコンセプトモデルが、T-Engineプラットフォームによって実際に動くプロトタイプで紹介されていた。


クレードルに本体を置くとバッテリ充電と同時に情報も“充電”される「BB-Toaster&Bread」。実動機(左)とモックアップ(右)


RF-IDタグや無線LAN経由でさまざまな情報を取り込んで知らせる「Scouter」。モックアップ(左)と実動機(右)

 「T-Engineプラットフォームのメリットは、コンセプトモデルから実際に動くプロトタイプの開発までが短期間にできる点。また、限られたリソースの中で最も良いものを作るためには、オープンアーキテクチャが欠かせない。仕様内でセキュリティ面がしっかり考えられているのも魅力」(ピンチェンジ)。

携帯電話市場もT-Engineには注目

 そのほかにも会場では、昨日T-Engineへの対応を発表したエイチアイの組み込み機器向け3Dポリゴンエンジン「Mascot Capsule Engine Micro3D Edition」や、KDDIがT-Engine対応のSVG Mobileエンジンを参考出展するなど、携帯電話市場もT-Engineには注目している。


エイチアイのT-Engine対応3Dポリゴンエンジン「Mascot Capsule Engine Micro3D Edition」。写真の試作機は加速度センサー内蔵で、本体を傾けると画像も一緒に動く


KDDIはT-Engine対応のSVG Mobileエンジンを参考出展。地図/画像の拡大・縮小・回転が自由に行えるデモを行っていた

 新機種への移行が早く、短期間で開発しなければいけなくなっている最近の携帯電話は、ハードウェアと制御用ソフトウェアとを同時並行して開発しなければならず、また、他社との競争に勝つためにはいち早く市場に製品を投入する必要がある。そのため十分な検証が行えないまま市場に出てしまうため、不具合につながるケースが最近増えているのだ。

 「携帯電話に限らず、あらゆる製品で開発期間の短縮化は求められている。オープンな開発環境を提供し、開発期間とコストを大幅に短縮できるT-Engineには、あらゆる方面から大きな期待が寄せられている」(パーソナルメディア)。

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関連リンク
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[西坂真人, ITmedia]

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