News 2002年12月24日 11:41 PM 更新

ハロ似の“球形PC”に息づく「職人魂」(1/2)

ありそうでなかった「球形PC」が、年の瀬のPC業界に話題を振りまいている。キレイな球形を低コストで実現するのに欠かせなかった日本伝統の加工技術や、直径25センチを可能にしたテクノロジー、そして“アレ”にそっくりなカラーリングの意図とは?

 まずはこのカタチを見てもらいたい。だれもがアッと驚くことだろう。

 「球形のPC」――今までありそうでなかったこの新カテゴリ商品が、年の瀬のPC業界に話題を振りまいている。球形PCの開発及び販売を行う「ルーポ」の山手剛社長に開発の経緯や製品概要、今後の展開などを聞いた。


驚愕のカタチで話題を振りまくルーポの球形PC

 球形PC「ZXL Artemis(アルテミス)」は、オリジナルPCやパーツの販売を行うルーポと、PC周辺機器の企画・設計・製作を行う「ジオン」とが共同で開発したもの。一般ユーザーにはあまり馴染みのない両社だが、ルーポ社長の山手氏は国産BTOの草分けであるフロンティア神代でBTO立ち上げ時の中心メンバーだったといえば、なるほどと思う読者も多いことだろう。

 またジオンも、“作りがいい”と自作ユーザーの間で評判の高かったテクノバードジャパンの手作りアルミケース「TB-2000」のスタッフがスピンアウトして設立した企業。この“こだわり”の2社によるコラボレートによって、「業界初」(ルーポ)の球形PCが生まれた。


“こだわり”2社のコラボレートによって、業界初の球形PCが生まれた

 ところで、なぜ今まで球形のPCは存在しなかったのだろうか。

 「もともとPCパーツは箱型のPCケースを基本としているため、球形のデザインには収めづらかった。また、1番大きなパーツであるマザーボードをベースに球形PCを作ると、MicroATX仕様でもCRTより大きなものになってしまう。そして何より、金属製のきょう体をキレイな球形に加工することの難しさが製品化のネックとなっていた」(山手氏)。

 今回開発された球形PCは、直径が25センチしかない。サッカーボール(5号球・約22センチ)よりもやや大きめ、ちょうどバスケットボール(7号球・約24.5センチ)と同じぐらいのサイズだ。直径が25センチということは、中に入るマザーボードの1辺の上限は「25÷√2=約17.6センチ」で、しかも正方形でなければらならない。


開発された球形PCは、ちょうどバスケットボールサイズ

 ZXL Artemisは、この問題を解決するためにVIAが提唱する小型フォームファクタ「Mini-ITX」を採用した。Mini-ITX仕様のマザーボードは、170(幅)×170(奥行き)ミリと非常にコンパクトなのが特徴。これなら直径25センチの球形にも収まるというわけだ。「プロトタイプでは、CPUにVIAのC3/933MHzを採用したCPUファン付きのEPIAマザーを使っているが、EPIAシリーズならユーザーの要望に応じた変更も可能。低クロックのCPUを選択して、ファンレス仕様にもできる」(山手氏)。


VIA提唱の「Mini-ITX」を採用したEPIAマザーボードで小型化を実現

 球形ボディの内部には通常の3.5インチHDDや、ノートPC用のスリムタイプ光学ドライブといった汎用パーツが搭載可能で、大容量HDDや記録型DVDドライブも選択できる。限られたスペースにこれらのパーツを収めているので拡張性はあまり期待できないが、EPIAマザーの最新モデルは、オンボードでDDRメモリ対応のチップセット、USB 2.0ポート、IEEE1394(FireWire)ポート、ハードウェアMPEG-2デコーダを標準装備しているので、拡張性の弱さを十分カバーしてくれそうだ(別記事を参照)。


豊富なオンボード機能で拡張性の弱さをカバー

 「ビデオエンコーディングなどマルチメディア作業をバリバリこなすには役不足だが、インターネット閲覧や文書作成といった用途には十分の性能。電源も200ワットタイプを搭載する予定」(山手氏)。

キレイな球形を低コストで実現するのに欠かせなかった“日本伝統の加工技術”

 球形PCを製品化するうえでネックとなっていたのが「金属製きょう体の球形加工」。これを可能にしたのは、日本の伝統的な金属加工技術「へら絞り」だった。「この日本ならではの職人技がなかったら、球形PCはありえなかった」(山手氏)。

[西坂真人, ITmedia]

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