News 2003年1月8日 10:24 PM 更新

ソニーが目論む“やんちゃなブランド”「アイワ」の使い方(2/2)


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 この点について平内氏は「“ソニー”と“アイワ”の住み分けは、生活シーンで例えるならデパートとコンビニ、自動車とバイク、万年筆と色鉛筆といったイメージ。つまりアイワブランドは、書斎/寝室/バスルームなどプライベートな“off空間”で楽しめ、多機能ではないがシンプルで使いやすい商品と位置付けている。独自商品としては、家庭のPCを強く意識した商品作りを行い、Net MDやデジタルカメラなど、PCとつないで音楽や画像を手軽に楽しむことができる新規商品群を投入していく」と説明する。

 新規商品群のイメージはどんなものなのだろうか。平内氏はアイワブランドの具体的な商品イメージとして“USBメモリ”サイズのデジカメを紹介した。


平内氏はアイワブランドの具体的な商品イメージとして“USBメモリ”サイズのデジカメを紹介

 「例えば、こんな口紅サイズのデジカメとコンパクトサイズのビューワーがあったら、常にハンドバックに入れて気軽に撮影し、友人と一緒に楽しむといった新しい楽しみ方が創造できる。このような新しいスタイルをどんどん提案できる商品を作っていきたい」(平内氏)。

ソニーの中の“アイワ”は「やんちゃなブランド」

 “アイワ”と聞いて、どんなイメージを想像するだろうか。安いミニコンポやウォークマンタイプのポータブルオーディオ、テレビデオなどといったAV機器を思い浮かべるかもしれないし、パソコン通信歴が長いユーザーはモデムでお世話になったケースも多いだろう。

 前身である愛興電機産業を1951年に設立した当時から、ブランドとしてのアイワは存在した。1959年にアイワに社名を変更した時には、“マイクロフォンのアイワ”として国内はもとより世界に名を馳せるメーカーに成長。60年代には日本初のカセットテープレコーダーやラジカセといった新規商品を次々と市場に投入し、70−80年代に音響メーカーとしての地位を確立していった。

 パソコンユーザーにとっては、モデムメーカーとしての印象の方が強いかもしれない。パソコン通信用モデムの分野では80年代後半から90年代前半にかけ、アイワはオムロンとともに2強時代を築き上げていた。また、事業の多角化からパソコン事業にも取り組み、テレビとPCを一体型にした“テレビパソコン”を販売していた時期もあった。

 90年代には、オーディオの生産拠点を東南アジアを中心とした海外へ移管することで高価だったミニコンポの価格をラジカセ並みにするなど価格破壊を実施。テレビとビデオデッキを組み合わせたテレビデオの成功などもあり、AV分野でのシェアを大きく伸ばした。

 このように、アイワはこれまでも常に新しい市場を創出してきた。高篠氏は「かつてカセットテープが隆盛の時代、デッキを2台搭載してダビング需要を喚起した“ダブルラジカセ”にソニーがなかなか取り組めなかった時に、アイワはいち早く製品を市場に投入した。世の中のトレンドを先取りできるのがアイワブランド」と、AV製品分野でライバルだった当時を振り返る。

 また、平内氏は「アイワブランドでやれることはまだまだ沢山ある。アイワはソニーの中の“やんちゃ”なブランドであるべき。例えば、ソニーブランドなら10人のユーザーのうち4人ぐらいには受け入れられるような商品作りが求められるが、アイワブランドなら極端な話、10人中1人に受け入れられれば成功となる。ソニーグループの高い技術力やアイデアを使いながら、ソニーができなかったやんちゃな商品を創出していきたい」と語る。

 では、ソニーブランドでは取り組めない“やんちゃ”な商品にはどんなものがあるのか。平内氏の答えはこうだった。

 「例えばUSBにつなぐだけで5.1チャンネルのサラウンドシステムがPCで簡単に楽しめるような、クリエイティブメディアなどが取り組んでいる分野の商品はけっこう需要がある。このようなUSBにつなぐことで動作するという単機能な商品は、多機能が当たり前のソニーブランドでは製品化しづらい。だが、例えばCocoon(コクーン)の機能を切りだして、取扱説明書が2枚ぐらいで済むようなHDDレコーダなども、アイワブランドなら出せる」(平内氏)。


新ロゴを冠した2月発売のオーディオ製品の前で決意を語る平内氏

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[西坂真人, ITmedia]

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