News 2003年1月14日 09:47 AM 更新

ソニー安藤社長、Microsoftとの「微妙な関係」を語る(1/2)

CESの基調講演を務めたソニー社長兼COOの安藤国威氏は、Microsoftとの微妙な関係や、デジタル家電のインフラ作りのための業界を挙げての協業の必要性などについて、記者向けの懇談会で大胆に語った

 「MicrosoftVSソニー」。今後のデジタル家電市場の中で、こうした対決構図を描きやすいからだろう。Internatiional CESで基調講演を務めたソニー社長兼COOの安藤国威氏との記者向けの懇談会が会場内で行われたが、記者たちの質問はMicrosoftとの対決構図に質問が集中した。

 この調子だと、おそらくこの対決構図を強調した(悪く言えばバイアスのかかった)記事が数多く出回るに違いない。Microsoftとソニーの対立構図は、最も読者受けするところだからだ。

 もっとも、一昨年11月のCOMDEX/Fallで行われた同様の懇談会でも、この話題はすでに出ていた。しかしPCの世界で“のみ”圧倒的な支配力を持つMicrosoft(家電業界ではまだまだチャレンジャーに過ぎない)と、AV家電で世界で最も高いプレゼンスを持ち、多種多様なビジネスを抱えるソニーの対決というのは、今ひとつかみ合わないというのが正直な感想だ。ソニーがMicrosoftと対立する部分はもちろんあるだろう。しかし、それをして企業対企業に置き換えるのはナンセンスである。

 今回、安藤氏は「ハードウェアとソフトウェアを融合させ、新しいアイディアで市場を作り出すのは、日本企業の得意分野。基調講演では、そうした日本の得意分野で勝負するための協力を呼びかけたかった」と、協調路線を前面に押し出す。

 とは言うものの、安藤氏の特徴でもある強気のコメントは、今回の懇談会でも健在だった。簡単に言えばAV家電の視点から見たPCは、まだまだ敵ではないと思っているためだろう。

同じ土俵なら、AV家電で負けることはない

 家電に近寄るPCとネットワーク化するデジタル家電。近付いている両者の関係について安藤氏は、「ITバブルが弾ける前までの間、ハードウェア業界を牽引したのはPCを中心とするIT業界だった。一方、家電分野でITをうまく活用できたのは、(以前からIT分野で独自の地位を築いていた)東芝を除けばソニーだけだったと思う」と切り出した。

 安藤氏は「バブルが弾けたからといってITの価値が下がったわけではない」とし、大きなポテンシャルを持つブロードバンド化の流れの中でPCが一方の主役として注目されるののは当然との見方を示した。

 「IT側からアプローチするならPCが軸になる。MicrosoftはPC市場でのプレゼンスしかないから、PC側からアプローチするしかない。しかし、重要なのはPCなのか家電なのかという議論ではない。さまざまなアプローチがある中で、ユーザーが何を望むかが重要」として、VAIOだけでなくAV家電での高いプレゼンスやゲーム機市場での支配的立場など、多業種をカバーするソニーに強みがあるという。

 「私も昨年まではパワーオフハードウェアと言い、優れたハードウェアにこそ高い付加価値があると話してきた。しかし、今はハードウェアだけでなく、ソフトウェアやネットワークなどの融合が必要であると考えを改めている」(安藤氏)。

 ソニーには昔のクローズドなイメージもあるが、安藤氏はあくまでもオープンスタンダードをベースにして、業界が協力して技術的なインフラ整備を行う必要を説く。「インターネットを通じたデバイスの接続性に関しては、Microsoftとも長い間、ずっと話をしてきている。あらゆるデバイスはネットワークで簡単につながる方がいいでしょう。われわれが利益を得られるのはハードウェアの部分。しかしそのためのインフラ作りは、協力しなければならない。今回の基調講演はその呼びかけですよ。今やSCEの久夛良木さん(久夛良木健社長)でさえ、オープンで行こうと言っている。そういう時代だ」。

 安藤氏がインフラ構築で、業界協力を強く呼びかける背景には、製品アイディアや品質、ユーザーの感性に訴えかける製品作りでは他社に負けないという自負があるからでもあろう。「われわれは後追いでハードウェアだけを提供するような会社になることは絶対にない。ソニーはあくまでもクリエイティブな集団だ。AV事業は15年ほどの間、市場規模がほとんど成長していないが、市場が安定しているため単に商売を続けるだけであれば、十分に経営を維持できる。しかしコンシューマにとって重要なのは、何よりも“楽しいこと”だ」。

Windowsだけでは消費者に楽しさを与えることなどできない

 Microsoftは「Windows XP Media Center Edition」の例を挙げるまでもなく、あらゆるアプローチから家電へと近付こうとしている。安藤氏はそんなMicrosoftをどのように見ているのだろうか。

[本田雅一, ITmedia]

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